【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森(追加設定)2022年6月2日~3日
(写真:チゴモズ 撮影:明官恵子様)
梅雨入り間近の時期ですが5月末のこの時期は恒例となっている北信越のブナ林をめぐりながら主にブッポウソウとチゴモズを探すツアーの時期です。今回訪れる場所は私的には20年以上通っていますが、のどかな山村風景はまるで日本むかし話に出てくるような独特の風情があり、豪雪地帯らしい家屋の作りも印象的です。思い返すとこういった風景が全く変わらない点は驚きで、それだけに現地の環境にも配慮し、小型バスを使ったかなり小さなツアーにしています。タイトルにもなっているブッポウソウ、チゴモズといった希少な野鳥が生息しているほか、ブナ林を好む野鳥たちが数多く生息し、この時期は北信越を代表するタニウツギやキリの花も見事な時期です。今回は前回同様、初日の天気予報は晴れと出ていましたが、翌日は不安定な天気で雨の予報が出る中での出発となりました。
2日、快晴の東京駅前を予定通りに出発して、ひとまず関越自動車道を走りました。午前中はほぼ移動のため、車内では今回のツアーで見られる可能性が高い種について解説しながら進み、途中、サービスエリアに立ち寄り、その後、再度サービスエリアに立ち寄りましたがこの日はとにかくずっと快晴で、やや蒸し暑い印象がありました。その後は一気に松之山方面を目指し、この日のうちにブッポウソウとチゴモズを狙えるよう、前回同様にますはブナ林に向かうことにしました。途中、二つの峠を越えなくてはならないのですが、北信越を代表するタニウツギのピンク色の花と紫色のキリの花がちょうど満開といった感じでした。到着時にはちょうどお昼前だったことから一旦、昼食の時間とし、同時に観察機材の準備をしていただきました。ここではたまたま工事中だったことから騒音が激しく、わずかにキビタキのさえずりが聞こえるだけでした。昼食後は早速、チゴモズを探すことにしました。まずは昨年、その姿があった場所に行くことにしました。バスを降りてしばらく反応を見てみましたがこれといった気配はなく、遠くからホトトギスやクロツグミ、サンコウチョウのさえずりが聞こえるだけでした。そのため周辺を歩いてみると電線に止まってさえずるノジコの姿があり、時間をおいて今度はホオジロがさえずり始めました。さらに進むと繁殖中と思われるモズのつがい、そして叫ぶように鳴くオオヨシキリ、針葉樹のてっぺんに止まるサンショウクイの姿があり、戻る途中では盛んにさえずっているサンコウチョウの声を聞くことができましたが残念ながらチゴモズの気配はありませんでした。そのため一旦、場所を変えて探してみることにして移動しました。次のポイントでもバスを降りてすぐはチゴモズの気配はありませんでしたが、驚いたことに間近の枝にチゴモズがじっと止まっていました。観察していると周囲にある木を渡り歩くように移動していましたが、それなりに視界に入っている状態が続いたことから比較的じっくりと観察することができ、いつの間にかつがいと思われる2羽になっていました。またどこから飛んできたのかサシバが上空を旋回していました。時間が経ったことから一旦、トイレ休憩を挟んで、その後は移動することにしました。ここでは夕方の順光に合わせてブッポウソウを狙いました。ただこの日はブッポウソウの姿がないため周囲を探してみるとフライキャッチで餌を捕るブッポウソウの姿があり、しばらく観察していましたが近くにやってくることはなく、ひたすら眼下のエリアで餌を捕っているようでした。周辺ではサンショウクイやホオジロが見られ、同じ電線にたまたまクロツグミのオスも止まってくれました。時間が来たため道を戻ると、ここでも再びブッポウソウが飛び回っていたことからしばらく見ていると、我々の周辺をブッポウソウが飛び交ってくれたことから、良い光線の中で飛翔するブッポウソウを観察することができ、その後は宿に向かいました。18:30から夕食をいただいた後は昨年、ヨタカが見られていたことから外に出てみました。なかなかヨタカの気配はありませんでしたが、しばらくするとヨタカの声が響き始め、鉄塔の上に止まって鳴いている姿も見ることができ、ちょっとしたナイトウォッチングも楽しむことができました。
3日、深夜に雨が降ったようで地面は濡れていましたが早朝に外に出ると雨は上がっていました。想像以上に肌寒い中、ひとまず早朝探鳥に出かけました。最初のポイントでは狙っていたアカショウビンの気配はなく、クロツグミ、ヤブサメがさえずっているだけでした。ただ遠くからアカショウビンの声が響き渡り、姿を見ることはできなかったものの雰囲気を楽しむことができ、木に止まってさえずるイカル、ホオジロなどを見ることができました。朝食後は昨日、ブッポウソウを観察した場所を歩き、さえずっているノジコ、餌を探しているアカゲラ、そしてこの日もブッポウソウに出会うことができました。その後は再びチゴモズを求めて移動しましたが、途中、オオヨシキリがよく鳴いている場所で観察していると、何やら雲行きが怪しくなってきたことから一旦、昼食の時間にすることにしました。駐車場にバスを止めると、いきなり激しい雨と雷鳴に包まれる中での昼食となりました。昼食後はあまり時間がなくなってしまってはいましたが、再びチゴモズを観察することにしました。ただこの日はなかなかチゴモズの姿がなく、しばらくの間は針葉樹に隠れて鳴いているホトトギスを探したり、飛びながら鳴いているホトトギスを観察したりしながら過ごしました。ただ、しばらくするといつの間にか針葉樹のてっぺんにチゴモズが止まっていました。一旦、見失いましたが、しばらくするとけたたましく鳴きながら再びチゴモズが現れ、再び針葉樹のてっぺんに止まり、ようやく独特のその声を聞くことができ、この日も時間がかかったもののその姿を見ることができ、最後は荷物整理をしている最中に2羽のサンショウクイが間近に止まったり、上空を飛び回る様子を観察してツアーを締めくくりました。
今回は前回同様に2日目の天気予報が芳しくなかったですが、強い雨に打たれることなく探鳥を終えることができました。主な目的だったブッポウソウとチゴモズをなんとか観察することができましたが、チゴモズは各所でその気配が全くなく心配になりました。ブッポウソウはひとまず数個体を観察することができ、初日は比較的良い光線状態の中で見ることができたことから、その光沢ある姿、そして翼にあるコバルトブルーの斑が輝いて見えました。ほかにも当地を代表するサシバ、サンショウクイ、クロツグミ、ノジコなどを見ることができ、声だけでしたがアカショウビンやサンコウチョウのさえずりも聞かれました。今回見られた鳥たちの多くが絶滅危惧種です。今後も当地の環境が変わることなく、そして鳥たちが細々とではあっても行き続けられるようご配慮いただけましたら幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。またご一緒できましたら幸いです。
石田光史