【ツアー報告】冬の信州でイスカに会いたい! 2022年2月4日~5日
(写真:イスカ 撮影:中村裕一様)
人気のある赤い鳥の中でも特徴的な嘴を持っているイスカは日本国内では冬鳥とされていますが夏季にも見ることがあり、少々謎がある鳥でもあります。また毎冬毎冬飛来するわけではないためなかなか出会いのチャンスがないのも事実で、出会うことはなかなか難しいのが現実です。イスカは特にマツの種子を好んで食べるため針葉樹の林を探すことが重要で、松かさをこじ開けやすいよう嘴が互い違いになっていることが最大の特徴です。この嘴を使ってマツなどの針葉樹の種子をついばんで食べるためこういった採食シーンが見られればとも思いツアーを企画しています。またツアーではここ数年、皆様からのリクエストが増えているシングル部屋を利用したプランにしています。今回は長野県北部では雪の予報が出ていたものの大きな天候悪化はないとの予報の中で出発することになりました。
4日、このツアーは遠方からのご参加が可能になるよう、集合時間を通常よりもやや遅めの東京駅前09:00にしています。やや風が冷たいものの快晴の東京駅前を予定通りに出発して、ひとまず中央自動車道を走りました。バス車内ではいつものようにこのツアーで見られそうな鳥の解説やイスカの話などをしながら進め、途中、サービスエリアで休憩し、その後は車窓から雪化粧した八ヶ岳を遠くに眺めながら進み、現地では一旦バスを止めて時間をとって各自昼食、そして観察機材準備をしていただきました。その後は高速道路を降り現地に向かいました。途中、再度トイレ休憩を挟んでから到着後はバスを降り、まだまだ雪が残る道を歩きました。ここは周囲はほぼ松林で道端には萩が自生していて、ほかにも小鳥たちが好む草の実が多数自生しています。早速、エナガ、シジュウカラ、ヤマガラの混群がやってきてくれ、さらに進むとジョウビタキのメスが現れました。過去によくイスカを見ている場所では立ち止まって雰囲気を確認しましたが、これといった感触がなかったことからさらに歩いてみました。ただこの日は群れで飛び交う冬の小鳥たちの姿はなく、ハイタカが通過していく姿が見られたほか、真っ赤なベニマシコのオスが草の実をついばむ様子を見るのみでした。ただ戻る途中ではようやくオオマシコの群れに出会うことができ、幸いなことに真っ赤なオス個体が1羽混じっていたことからしばらく待って観察することができました。その後は一旦、トイレ休憩を挟んでから再び同じルートを半分程度歩いてみました。やや風が冷たくなる中でしたが、この時間はシジュウカラ、ヤマガラのほか、コガラ、ヒガラも現れ、コガラはさえずりも披露してくれ、枝先で餌を探す姿も見せてくれました。この時間も過去にイスカの姿をよく見ている場所を中心に足を止めてみましたが、残念ながら声を聞くこともなく引き返しました。ただ戻る途中では青いルリビタキのオスが見られたほか、ここでも真っ赤なベニマシコが草の実をついばむ様子が見られ、枯れ木にはツグミの姿もありました。たあ、この日はかなり歩き回りましたがイスカの声を聞くこともなく残念な結果となってしまいました。
5日、怪しげな雪雲がかかってはいましたが青空が見える中、予定通り出発して現地を目指しました。この日は常に黒い雲があり、いつ雪が降ってきてもおかしくないような雰囲気でした。トイレ休憩後はひとまず昨日と同じルートを歩いてみることにしました。この日は昨日見たものと同じと思われるオオマシコの群れが早速現れましたが、萩の草むらの中にいたため視界があまりよくはありませんでした。ただふとみるとニホンカモシカが佇んでいたため観察することにしました。少しずつ接近しましたが、これといって警戒する様子もなく草を食べていて、いつしか草むらに消えていきました。さらに進むとこの日も真っ赤なベニマシコに出会うことができましたが草に止まることはなく、斜面に消えていきました。たださらに歩いていると幸いなことに、どこからともなくオオマシコの群れが飛んできて我々を追い越すように飛んでいったため、少々戻ってみると白樺に止まっているオオマシコの姿があり、しばらく見ていると次々にやってきては道端の萩の実に取り付きました。その後は少々距離を詰めて観察し、雪の斜面を歩き回る様子や白樺に止まる様子、また大好物の萩の実を食べる様子など、さまざまなシーンをじっくりと見せてくれました。時間も押してきたことから来た道を戻り始めると、ここでようやくイスカの声が上から聞こえたため見てみると2羽が飛んできました。普通なら飛び去ってしまうような雰囲気でしたが、今回は少々ツキがあったのか道端の白樺に止まってくれました。光の方向は良くありませんでしたが、双眼鏡でもその特徴がしっかりわかるような距離感だったためここでようやくイスカの姿を観察する機会に恵まれました。一旦飛び去ってしまいましたが、幸いにも再びその姿を見つけることができ、今度は距離はややありましたが良い光線状態の中で見ることができ、松ぼっくりに取り付いて種子を食べる様子を見ることができました。その後は再びトイレ休憩を挟んで別のポイントにも行ってみました。いつの間にか小雪が舞う中でしたが、ここでは群れで飛ぶイカル、アトリなどを見てから湖畔まで移動して昼食の時間としました。その後はさすがに湖畔といった冷たい風の中での探鳥でしたが、青空が湖面に映りこむ見事な風景の中、凍った湖面の中に点々とある水面にはカモ類が集まっていました。特に真っ白いミコアイサのオスが群れている様子は見事で、30羽ほどのカワアイサが群れている姿や一斉に飛ぶ様子が雪景色に映えていました。そして最後は公園内で3羽のアトリの姿を見て探鳥を終了しました。
今回はそもそも冬鳥の飛来状況が芳しくない状況での探鳥でしたが、一念が通じたのかなんとかつがいと思われるイスカに出会うことがで、オオマシコに関しては数回に渡って観察する機会があり、美しい真っ赤なオス個体にも出会うことができました。ほかにも真っ赤なベニマシコに数回出会うことができ、青いルリビタキ、アトリ、エナガ、コガラ、イカルなどにも出会え、一部凍った湖面ではミコアイサ、カワアイサ、河口ではホオジロガモの姿もありました。ただ全体的には鳥も個体数が少ない印象で、この冬を象徴しているかのようでした。今後も今回のようなバス席お一人様2席&シングル部屋を利用したツアーを増やす方向で企画をすすめたいと思います。この度はご参加いただきましてありがとうございました。またの機会にご一緒できましたら幸いです。
石田光史