【ツアー報告】晩秋の十勝平野 ハクガンの群れとナキウサギ(追加設定) 2021年11月2日~4日
(写真:ハクガン 撮影:鈴木真様)
昨年、ついに1000羽を超える数が記録されたハクガン。彼らの秋の渡りの中継地である十勝平野を訪れるとともに可愛らしいナキウサギとの出会いも楽しみな晩秋の北海道ツアー。なるべくムダな移動時間をなくしてコンパクトなツアーにするため往復共に帯広空港を利用し、宿泊も温泉宿に連泊にすることで2日目、3日目の行動予定をハクガン、ナキウサギの出現状況に応じて行動できるようにしました。これによりハクガン、ナキウサギとの出会いの確率をより高くできるようにし、さらには観察、撮影時間も確保しています。またガン類は警戒心が強いため、バス車内からの観察、撮影も考慮して参加人数を減らし、バス席をお一人様2席利用にしています。今回訪れる十勝平野には毎年10月下旬にハクガンの大群が忽然と姿を現すのですが、この秋は渡来するのがかなり早く、なんと一部がすでに越冬地に向けて飛去したようだと現地から連絡が入り慌ててしまうほどでした。前日に終了した同ツアーの追加設定ではありましたが、今回は前回とは全く異なり3日間共に雨マークが並んでしまいました。
2日、帯広市内は昨夜からの雨が止むことなく朝を迎え、12:45に到着した帯広空港も同様に小雨が降り続いていました。羽田空港からの飛行機は予定よりもやや早く到着し、集合後は空港内にて観察機材の準備をしていただいてから降りしきる雨の中、ひとまずバスにて出発し、この日は早速ハクガンの群れがいた場所に向かうことにしました。なかなか雨が止まず、それに伴い周辺が暗くなるのが早いため焦りました。もちろんすでに飛去している可能性もあったわけですが、現地に近づくとガンたちが飛んでいる様子が見えたことから安堵しました。到着後は雨が降る中でしたがバスを降りて群れに近づいてみました。オオハクチョウがかなりの数を占め、それを大きく上回る数のヒシクイの姿を見ることはできましたが、群れはやや警戒しているのか一斉に首を上げています。そのため一旦、近づくことはやめて、林をブラインド代わりにしてしばらく観察することにしました。群れはオオハクチョウ、ヒシクイ、シジュウカラガン、ハクガン、マガンで構成され、見ているとどこからともなく次々にガンたちが飛んできてはこの群れに合流していました。30分ほど経った頃からはガンたちが我々を認知してくれたのか、警戒する様子がなくなったようで今度は次第に距離を詰めながら観察することにしました。目的のハクガンは時間と共にどこからともなく飛んできてその数を増やしていきました。またこの日は風向きのせいか飛翔しているハクガンがどんどん間近に降り立ってくれたため、かなり良い距離感で観察することができました。また最後はシジュウカラガンの群れもどんどん歩いて近づいてきたため、こちらもかなり良い距離感で観察することができ16:00に一旦この場所を離れ、その後は田園風景に群れるタンチョウの姿を見ながら進み、かなり薄暗くなった16:45にこの日の探鳥を終えることにしました。
3日、この日も残念ながら雨が止むことはなく、小雨が降る中、ホテル周辺を歩くことにしました。雨のせいか小鳥たちの動きは今一つといった感じでしたが、相変わらず愛想が良いエゾリスが現れて餌を食べていました。またハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シジュウカラ、ヤマガラ、アカゲラといった顔ぶれが出そろい、アカゲラは松ぼっくりをつついているようでした。探鳥後は一旦ホテルに戻って朝食をいただき、その後はナキウサギ観察に向かいました。相変わらず雨は止むことはなく、現地に近づくと山々が白くなっているのに驚かされました。どうやら今朝の雨が雪に変わったようで次第に道路にも積雪が見え始めました。ひとまずトイレに寄り、準備を整えてからナキウサギのポイントに向かいました。到着後はうっすらと雪が積もっている中、傘をさしてナキウサギの登場を待つ形になりました。ただ、この日は積雪のためか、雨のためか、なかなかナキウサギの姿はなく時折やってくるハシブトガラを見ながら時間が過ぎていきました。しばらくするとようやくナキウサギが岩と岩の間を走ったりする姿は見られたものの、なかなか良いシーンがありません。結局、午前中はキクイタダキや飛翔するオジロワシは見られたもののナキウサギをじっくり見る機会はなく、一旦昼食の時間としました。本来であれば午後からは帯広市内まで戻って探鳥予定でしたが当然のごとく、この日は午後からも場所を変えてナキウサギの登場を待つことにしました。ただ同様になかなかこの日はナキウサギに出会うことができず、午後からも2回ほど現れてはくれましたが、これといってしっかり見られたといった印象はなく、雨が小雪になってきた16:00に現地を離れることにしました。
4日、前日にナキウサギがしっかり見られなかったことから、この日は急遽、ナキウサギ観察に行くことにし、時間を稼ぐため前日よりも30分早い06:00に合わせて探鳥を開始しました。幸いにもこの日は雨が降っておらず空もなんとなく明るい感じがしました。雨が止んだこともあって前日よりも小鳥たちの動きは良いようで、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シジュウカラ、アカゲラといった顔ぶれは元気で、相変わらずエゾリスが可愛らしい姿を見せてくれました。林まで行くとようやく期待のシマエナガの群れがやってきて、珍しく目線ほどの高さで餌を探したりして思いのほか長い時間その姿を見せてくれました。またキバシリも見ることができ、最後はカシラダカも見られ、朝食をいただいた後は再びナキウサギ観察に向かいました。この日は一部で青空が見えることもあり、前日よりも天気は良さそうでした。現地では霧雨はありましたが気になるほどではなく、残り時間をとにかくナキウサギとの出会いのために使うことにしました。ポイントまでくると昨日までの積雪はなく、雨も気になるほどではありませんでした。ただこの日もなかなかナキウサギの気配を感じることはなく心配になっていました。しかし1時間ほどして突然岩と岩の隙間からナキウサギが登場し、ここからは流れが変わったかのようにナキウサギが何回も何回も姿を見せてくれるようになり、岩に止まったり意外な場所から登場したりとナキウサギらしいさまざまな姿を見せてくれ、終わってみれば前日が何だったんだろうと思ってしまうような観察ができました。
前日に引き続いてのツアーではありましたが、前回のツア―とは全く異なり雨ばかりの3日間となってしまいご苦労おかけしました。また2日目には積雪もあるなど驚かされました。前回の結果からハクガンの群れにはあっさり出会うことができましたが最大数でなかったことは残念でした。ただ、ヒシクイ、シジュウカラガンの群れは見事で、雨の中ではありましたが意外なほど良い距離感だったことは幸いでした。一方、もう一つの目玉であるナキウサギ観察がなかなかうまく行かなかったため行程を組み替えるなど、ゆとりを持ったツアー運行ができませんでした。結局、1日半もの時間を使ってしまい、なんとか十分な観察にこぎつけました。こういったケースを想定して宿泊地を連泊にしてはいたものの、意外な苦戦となってしまいました。結果としてハクガン、ナキウサギ観察以外の時間があまりとれませんでしたが、タンチョウをはじめ、シマエナガ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、アカゲラ、キバシリ、キクイタダキ、オジロワシ、そしてエゾリスにも出会うことができました。北海道はとても魅力的な探鳥地のため、季節ごとにさまざまなツアーを企画しております。ぜひまた北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史