【ツアー報告】タカ渡る白樺峠と渡りの小鳥たち 2015年9月19日(祝)~20日(祝)
秋恒例となったタカの渡りの季節がやってきました。今年はシルバーウィークと呼ばれる5連休がたまたまタカの渡りの最盛期に当たったため、この5連休を二つに分けてツアーを企画しました。まずは2日間の日程で白樺峠を渡って行くタカたちと乗鞍高原周辺で見られる小鳥たちの渡りを観察するツアーです。タカの渡り観察はとにかくお天気に左右されることから、数日前から天気予報をこまめにチェックしていましたが、今年は運良くツアーに合わせるように天候が回復し、タカの渡りを観察するにはちょうど良いタイミングとなりました。
19日、新宿駅発のスーパーあずさは定通り10:38に松本駅に到着しました。改札口前も大変な混み具合でしたが現地集合のお客様と合流して早速白樺峠に向かいました。途中にある道の駅までの車内で白樺峠での探鳥の注意点や現地の状況、タカ出現状況の特徴やサシバ、ハチクマの識別ポイントなどの解説を行ないました。道の駅から先は山道をくねくねと登り、12:45に白樺峠駐車場付近までやってきましたがさすがは連休の初日です。好天ということもあって車が駐車場からはみ出しているような状況だったため、ひとまずバスから降りた後、バスは乗鞍高原方面に逃げて待機してもらうことにしました。そこからは細い道を20分ほど登り、到着後はトラベルイヤホンの電源を入れて観察開始となりました。観察場所の「タカ見の広場」は立ち位置に困るような状況でしたが、混むことは想定内だったためある程度広範囲に広がってしまいましたが、トラベルイヤホンを使って皆様にリアルタイムでタカの出現状況や識別ポイントをお伝えすることができました。到着と同時にサシバが複数飛び、その中に珍しい黒色型を見ることができました。また少数ながらハチクマの姿もあり、13:50には全体にずんぐりした印象のノスリが舞いました。14:00を過ぎると風は肌寒く感じられ、稜線の頂には雲がかかってきました。この時間帯はハチクマが多く見られ、尾や翼に太い帯状斑がないメス個体が多い印象でした。またこの時期としては珍しくツミの姿が多く見られ、シラカバのてっぺんに止まったゴジュウカラの姿に盛り上がりました。その後も「キーッ、キッキッキッ」と独特の声で鳴きながらツミが飛びましたが14:30を過ぎるとタカの出現は一旦止まってしまいました。15:00頃からは再びハチクマが飛びましたが稜線低く飛翔しながら右側の谷間に真っ直ぐ飛び去る個体が多く見応えは今ひとつでした。16:00にはさらに雲が低く垂れ込める中、探鳥を終了しました。この日は総数738羽というまずまずの結果でした。そしてこの日の夕食後は恒例となった「タカ識別講座」を行い、見分けのコツやポイントを写真パネルや資料などを使いながら解説いたしました。難解なタカ識別のお役に立ったでしょうか?
20日、前日の予報では晴れマーク一色でしたが05:30に外に出ると曇り空で霧雨が落ちる場面もありました。宿前ではキセキレイの姿があったのみでしたが、一の瀬園地方面に歩いて行くとカラマツに止まるコサメビタキ、ヤドリギの実に群れるヒガラ、コガラ、シジュウカラが賑やかで、その中からメボソムシクイのさえずりが聞こえました。また20羽ほどのエナガの群れも圧巻で、アカゲラの姿をじっくり見る機会もありました。そして最後は電線に止まるモズの姿をじっくり見て早朝探鳥を終了しました。朝食後は再び白樺峠へ向かいましたが到着時は曇りで心配されましたが、09:30には晴れ間が見え始めました。いきなり5羽のアオバトが猛スピードで飛び、ハチクマ、ツミが現れ、09:50にはハリオアマツバメの群れが出現しました。10:10にはダム湖があることからミサゴが現れ、2羽のノスリが行ったり来たりしていました。風は涼しく感じられましたが、気温が上がってきたことから11:10にようやくサシバ、ハチクマにノスリが混じった「タカ柱」が見られ、ようやくタカの渡りといった感じになりました。11:30には5個体のハチクマは低く飛び、12:25にはさらに低くハチクマのオスが飛翔してタカ見の広場がどっと湧きました。12:40には10羽ほどのハリオアマツバメが間近を飛翔し、13:20には谷から低く舞い上がったイヌワシが旋回しながら右側の谷へ流れていきました。14:00以降は突然現れるハリオアマツバメに湧き、14:40には10羽ほどのサシバが旋回しながら右側の尾根へと飛び去りました。さらに14:45には目線より下の谷間からサシバが次々に舞い上がり、再び見事なタカ柱を見ることができました。この日は総数940羽となかなかの好成績でした。
天候に大きく左右されるタカの渡り観察ですが、今回は雨の後の好天に当たることができ、この時期の代表種であるサシバとハチクマ、そして例年よりも多くツミの姿を見ることができました。また山間部の峠であることからイヌワシの姿を見る幸運もありました。秋はやはりタカの渡りを見ないと終われないと思えた2日間でした。また来秋もさらに感動的な出会いを求めてご参加ください。お疲れ様でした。
石田 光史