【ツアー報告】東シナ海の秘島・秋の平島 2015年9月25日(金)~10月2日(金)

9月25日 21:00 鹿児島港南埠頭から十島村営の「フェリーとしま」に乗る。台風21号の影響で波が高く、宝島折り返し運航に変更、さらに着岸できない島は飛ばしていくという条件付きで23:00 に出港。さてさてどうなることやら。
9月26日 覚悟をしていた揺れはそれほどでもなく06:10 に甲板に出ると、中之島が近くに見え、数百羽のオオミズナギドリが乱舞し、カツオドリもかなりの数が混じっている。諏訪之瀬島から平島へと向かうとカツオドリ数羽がフェリーに付いてきてトビウオを捕ろうとするが失敗の連続である。
08:45平島に無事に上陸。民宿に荷物を置き、直ぐに鳥見を開始。渡り途中のツバメが何十羽も飛び、イワツバメが混じり、そのさらに上空をサシバが数羽旋回する。島のあちこちにコサメビタキとエゾビタキがたくさんいて愛嬌をふりまく。マツにとまっているブッポウソウを発見し、フライングキャッチをして何度もトンボを食べる姿をみなさんで観察、撮影する。
午後は、体色の濃いアマミヒヨドリや胸から腹が灰色で脇の褐色がないリュウキュウメジロなどを見て楽しむ。遅い午後からコサメビタキとエゾビタキがたくさん入ってきて数がどんどん増えていく。特に、エゾビタキが山ほど入って来て、それらをよくみると胸の暗灰褐色の斑が多くて胸が黒くみえる個体から斑がほとんどなくてサメビタキのようにみえる個体、なかにはムナフヒタキにそっくりな個体までいてドキドキするのである。夕方、民宿の近くでクロハラアジサシを見て、本日は終了。みんなで「あかひげ温泉」へ行く。
9月27日 朝、06:15 民宿近くの樹林からアカハラダカが次々と飛び立つ。昨夜、島内へかなりの数のアカハラダカが入ったようで、何百羽という個体が島のあちこちから次々に飛び出し、旋回上昇して島内に鷹柱がいくつも出来ている。さらにそれらの上空には他の島から渡ってきたと思われる数百羽が旋回しながら流れていくのである。それから約30分程で1,000羽以上のアカハラダカが渡って行くという感動のシーンが眼の前で繰り広げられたのだ。その後、見晴らしのいい運動場へ行くと、まだ、渡っていないアカハラダカの成鳥雌雄や幼鳥があちこちにとまっているので、みなさんでじっくりと観察、撮影する。なかなかとまっているアカハラダカを見る機会は少ないのだ。
朝食後に空を見上げると、まだ、アカハラダカの鷹柱がいくつもあり、サシバも渡っている。いったい、どれほどの数のアカハラダカが渡ったのだろう。昨夜、他の鳥たちもたくさん入ってきたようで、メボソムシクイがいたるところにいる。メボソムシクイはコムシクイ、オオムシクイ、メボソムシクイの3種に別れ、外見での識別は野外では困難とされている(上記の順に黄色みが強い)が声による識別は有効であり、地鳴きや黄色みからメボソムシクイと判断した。ウグイス、サンショウクイも数が増え、コサメビタキ、エゾビタキもさらに増えている。アカヒゲの地鳴きもあちこちでする。奄美諸島より以北のアカヒゲは夏鳥として渡来し、繁殖が終わると南方へ渡るので、この時期に増える感じがするのは、平島よりも北で繁殖を終えた個体が入ってきているのだろう。奥山線を歩くと、小中学校のガジュマルにとまっているハイイロオウチュウを発見し、みなさんでじっくりと堪能する。個人的なことで恐縮ですが、私は平島でオウチュウ類ととても相性がよく8回の渡島でオウチュウに4回(合計14羽以上)、ハイイロオウチュウに3回、カンムリオウチュウに1回出会っているのである。
平島での探鳥は、一度、全員で島内を廻ってポイントの名称を確認し合い、後は自由行動として、ひたすら歩きまわる私と一緒に歩く人、じっくりと写真撮影の人、のんびり見たい人などに別れ、何か出たら携帯電話で連絡をするというスタイルである。1人が千年ガジュマルでサンコウチョウの声やマミジロを見てきたので、みんなに羨ましがられる。
今夜は十五夜。平島ではサトウキビとお餅をお供えし、島民で綱引きをする風習がある。
9月28日 朝、06:15 あれだけたくさんいたコサメビタキとエゾビタキが抜けていなくなり、昨日までまったく確認されなかったキマユムシクイがあちこちで鳴いているから、渡りの時期の島はおもしろいのだ。亜種サンショウクイの30羽以上の群れが海側から入ってきた。今日も上空を数十羽のアカハラダカが渡っていき、ハヤブサ2羽をチゴハヤブサが攻撃する。昨日は見なれなかったミサゴも2羽舞っている。
南之浜に行くと、港でツメナガセキレイが鳴きながら飛び、セイタカシギ、イソシギ、イソヒヨドリなどを見る。10数頭のトカラ山羊の群れが斜面を走っていく。すると、島内放送が流れ、悪天候のため今夜出港予定の“フェリーとしま”は明日以降に延期、というのだ。渡りの時期の島ではよくあることとはいえ、皆様に申し訳ない気持ちで伝え、せめて、1日遅れでの出港を祈るのである。
千年ガジュマルの近くでササゴイ、タカブシギ、カワセミを見る。アカヒゲの地鳴きもあちこちでするが、なかなか姿が見えない。夕方、凄い数のツバメが次々と入ってきた。
夜、横殴りの風雨と雷にほくそ笑む。鳥たちには申し訳ないのだが、島でのバードウォッチングは満天の星空が天敵なのである。
9月29日 朝まで雨が残り、07:00ごろに小降りとなったので外に出ると、民宿の前にオオルリの綺麗な成鳥雄とコムクドリ5羽がとまっていた。奥山線を歩くと、昨夜、ヒヨドリがたくさん入ったようで小群をいくつも見る。遠くでアオバトの声がする。トカラ列島はアオバトとズアカアオバトが同時に見られる不思議な場所なのだ。マツにとまっているハイイロオウチュウを発見。一昨日、見た個体よりも目の周囲や胸が白いので別の個体の可能性が高い。今日も上空を十数羽のアカハラダカが渡っていく。すると、島内放送が流れ、“フェリーとしま”は今夜23:00に出港予定、という。「出港予定」という言葉に引っかかったが、まずは1日遅れで帰れそうなので、いろいろな変更をする。
さらに歩くとカラスバトが近くの樹林で鳴き出したので探すが、見付けることができない。亜種リュウキュウサンショウクイが15羽とまっている。昨日まで見たのは全て亜種サンショウクイだったので2亜種が渡って来ているのだ。さらにさらに今まで見たメボソムシクイとは違う、大きな声で「ジッ・ジッ」と鳴くムシクイを発見して、オオムシクイと判断する。昼近くにキマユムシクイが入ってきたようであちこちで声がする。
午後から横殴りの暴風雨となり宿待機。みなさんで話をしたり、ごろごろしたりして小降りになるのを待つが風雨が強いまま日没となったのである。
9月30日 朝、あれだけいた鳥たちがまったくいなくなり島が静かになった。こんな小さな島でいないのだからどうすることもできないのである。しかし、キマユムシクイ、アカハラダカ、ツミ、ハイイロオウチュウ、サンショウクイ、アカヒゲ、コサメビタキ、エゾビタキ、キセキレイなどを絞り出す。ブッポウソウを見ていると、もう1羽のブッポウソウを追い出す。昨夜、幼鳥のブッポウソウが入ったようで、ブッポウソウが2羽となる。本日はルリビタキとオジロビタキが新たに増えて終了。
10月1日、朝、06:10 やはり鳥は少ないが、上空をツバメが次々に流れていき、サンショウクイ、ウグイスが入ったらしく昨日よりは少し賑やかになった。診療所の庭からタシギが1羽飛び立つ。そして、上空では、今日もアカハラダカがわらわらと渡って行くのである。
09:30 「フェリーとしま」は東之浜港を出港。平島を出ると直ぐにカツオドリ2羽がフェリーに付いてくる。諏訪之瀬島から中之島へ向かう途中、数百羽のオオミズナギドリの中からアナドリ2羽を見つける。カツオドリ5羽がフェリーに付いてきて付かず離れずしているのを観察、撮影していると、突然、アオツラカツオドリが現れた。もちろん、みなさんでじっくりと観察、撮影する。そして、その後もオオミズナギドリ、カツオドリやミナミハンドウイルカの大群などを楽しみながら19:20に鹿児島港南埠頭に着岸したのである。
とにかく、よく歩いた6日間でした。皆様お疲れ様でした。

宮島 仁

2016年9月23日~29日(鹿児島着は28日) 東シナ海の秘島・秋の平島

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