【ツアー報告】東シナ海第四の秘島 秋の粟国島 2021年10月4日~7日
(写真:ベニバト 撮影:宅間保隆様)
4日、那覇空港に全員集合して出発。まずは日本で数回しか記録のない鳥の情報があったので向かうが干潮で人工島にはコサギ、ダイサギ、アオサギしかいない。お昼を食べながら北上し耕作地へ行く。ジシギ類があちこちにいる。殆どがタシギだが、中にはハリオチックな個体やチュウジ風な個体もいて識別を楽しませてくれる。これぞハリオシギという個体を見付けてみなさんでじっくりと観察、撮影する。シマキンパラの群れがあちこちにいて、ツメナガセキレイもかなりの数がいる。クロハラアジサシが飛び回り、アマサギの群れも田芋畑で休息する。水路を見るとリュウキュウヨシゴイの雌がとまっている。この春、一度も見なかったので、ここでは絶滅したのかと思っていた。さらに、その後、雄も飛んでいて、細々とペアが暮らしていることに安堵したのである。水を張った耕作地の一画にエリマキシギ2羽、ウズラシギ2羽、コアオアシシギ2羽、アオアシシギ1羽、タカブシギ4羽、ヒバリシギ8羽、タシギ5羽、バン2羽、クロハラアジサシ1羽などが所狭しと密集していて、みなさんでじっくりと観察、撮影する。その後、潮がいい時間となってきたので再び向かう。先日、ここでヨーロッパムナグロが発見されたのである。人工島を端から探すと、チュウシャクシギやアオアシシギと一緒にムナグロの群れがいる。とにかくダイゼン程の大きさがあるのでムナグロの群れの中にいても直ぐに分かる、とそのはずだったのだが、風が強くてみんな石や木の陰に隠れていて身体の一部しか見えない。するとお客様から「この子、大きいよ」と声が掛かる。みると、明らかに周りのムナグロよりも一回り大きい。ヨーロッパムナグロだ。実は日本で初めて発見したのが私なので11年ぶりの出会いなのだ。ところが風が強くて直ぐに岩陰に隠れてしまいなかなか全身をじっくりと見ることが出来ない。17:30に観察終了。ホテルへ行くが宿泊者は我々だけのようで、プールのある綺麗なリゾートホテルが閑散としている。新型コロナウイルスによる沖縄の観光業への影響はかなり大きいのだろう。
5日、早朝、ホテルを出発。再びヨーロッパムナグロを探すが風が強くて石や木の陰に隠れて出て来ない。海岸へ行く前に耕作地の農道をゆっくりと走ると、道路でミフウズラの雌がディスプレイをしている。勝手に「三歩進んで二歩さがるディスプレイ」と呼んでいるが“ぜんまい仕掛けのおもちゃ”のような動きなのだ。しかし、どうしてこんな時期にディスプレイをしているのだろう。さらに、この後も2羽のミフウズラをみるという幸運に恵まれたのである。海岸ではヒドリガモ、シロチドリ、メダイチドリ、白色型のクロサギなどを観察、撮影していると、近くのトウネンと一緒にヨーロッパトウネンがいる。慌てて、みなさんでじっくりと観察、撮影する。その後は乗船手続き等を行い出港。「ニューフェリーあぐに」は粟国村が運航している全長65m、451トン、定員270名の立派なフェリーなのだ。粟国島は那覇市の北西約60kmに位置し、面積約7.6k㎡、周囲12.8km、産業は主に農業と漁業だが、近年では製塩業も有名である。周囲に島がないことから渡り鳥が立ち寄る離島として一部のバーダーの間では有名で勝手に「沖縄の舳倉島」と呼んでいる。泊港から粟国島まで約2時間。どうも南の島の航路というとカツオドリやネッタイチョウがばんばん飛ぶというイメージを持っている人が多いが、まったくそんなことはなく、今回も2時間でオオミズナギドリ1羽を見て粟国島に着岸。昼食中はヒヨドリとシロガシラが大騒ぎをしている。道路脇でエゾビタキが餌を採っているのでみなさんでじっくりと観察、撮影する。さらに樹林沿いを歩くとブッポウソウやサンショウクイが飛び出し、樹林内をサンコウチョウが飛び回る。耕作地に行くと、ここにもブッポウソウの若鳥が電線にとまっていて、みなさんでじっくりと観察、撮影する。耕作地にはクロハラアジサシ、ツメナガセキレイがたくさんいる。耕作地に行くと、ここにもブッポウソウの若鳥がいてかなりの数が島に渡ってきているようだ。耕作地の農道をゆっくり走るとここにもツメナガセキレイやクロハラアジサシをたくさんいる。コホオアカが農道の脇の草地にいて、ミフウズラも走って逃げる。夕方、コムクドリとサシバを観察して終了。17:30 ホテルにチェックイン。小さな離島には珍しくプチホテルがあり、全員個室でウォッシュレット完備というのが素晴らしい。
6日、早朝に歩いてホテル周辺で鳥を見る。風が強いせいなのか鳥の声がしない。小さな離島では、朝一番の鳥の声で群れが入ったのか分かるのだ。メジロの声があちこちでする。秋はメジロの群れにチョウセンメジロが混じっていることがあるので一羽一羽確認する。インドハッカをみなさんで観察、撮影する。殆どの人がライファーだけど、盛り上がりがいま一つの鳥なのだ。色の濃いリュウキュウキジバトやリュウキュウヒヨドリ、シマキンパラなどを観察してホテルで朝食。すると、島内放送で「本日のフェリーの出港は15時に変更します」と言う。風が強いので天候による変更かな?もし、明日も15時だと帰りのフライトに間に合わなくなるので今日中に島を出ないといけない、などといろいろと考えながら、ホテルの女将さん聞くと「今日は“浜グーシー”だからね~」という。“浜グーシー”って何だ?と調べたら「 旧暦9月1日に、門中の人が字浜の照喜名原(俗称ウーグ浜)に、各家庭から重箱を持ってお供えして首里の先祖を遥拝し、その後、本家に集まって神仏を拝み、去年旧9月1日から今年旧9月1日までに生まれた子供の家庭から酒一升とご馳走一膳を持ち寄って拝み、一門中に披露して祝う」行事だという。とにかく、明日は予定通りにフェリーが出るというので安心したが、急に決まった行事じゃないんだからフェリーの出港表の時間を直しとけばいいのにと思ってしまう。 浜の防風林沿いの道路を歩く。ブッポウソウが電線にとまり、エゾビタキが道路脇で餌を採る。停まっている車から声を掛けられて「そこの上にみんながいるから行ってごらん」という。防風林を登るとゴザが敷いてブルーシートの屋根があり数人が食事をしている。08:30だが既にアルコール臭が周囲にプンプン漂っている。私の経験上、ここで捕まったら絶対に「食べて飲んでいきなさい」という話になり、なかなか返してもらえなくなるので挨拶だけして退散する(誤解しないでください、島の人は部外者にもとても親切なんです)。その後、車で浜の耕作地をゆっくり走る。キセキレイがたくさん渡って来たようであちこちにいる。すると、電線にとまっているベニバトの綺麗な雄を発見。写真を撮ろうとすると、直ぐに飛んでしまい見失う。慌てて周辺の耕作地を探すが見付からない。昼食後、東の耕作地を探すと電線にとまっているベニバトを発見。みなさんでじっくりと観察、撮影する。さらに、サシバもとまっていて、こちらもじっくりと観察、撮影する。その後、エゾビタキやブッポウソウを見る。ここはツマベニチョウ、シロオビアゲハ、ベニモンアゲハなどの蝶もたくさんいて盛り上がる。上空でサシバが数羽鳴いている。コサメビタキがいたが直ぐに飛ばれてしまう。西の耕作地に行くが、ブッポウソウ、ツメナガセキレイ、クロハラアジサシなどと新しい種は見当たらない。近くに洞寺(てら)と呼ばれている鍾乳洞があるので見学に行く。「今から約200年前に問答に負けて流刑にあった僧侶が住み着き、生涯を閉じた場所と言い伝えられていることから、洞寺(テラ)と呼ばれるようになり、古くから信仰心の強い島の人達はここを聖地と崇め、立木などの伐採を一切禁じ、島内外の信仰者の拝所になっている」という。中に入ると自動にライトが点灯し、なかなか立派な鍾乳洞なのだ。その後、牧場へ行くとここにもベニバトの雌タイプがいて、ベニバトも複数個体が島に入っているようだ。車の前をホオジロハクセキレイが横切り飛んでいく。その後、チョウゲンボウ、セイタカシギなどを見て終了。17:30にホテルに戻る。粟国島は星が綺麗なことでも有名で、夜、肉眼でも天の川がしっかりと見えるのである。
7日、早朝にホテル周辺を歩く。昨日より鳥の声があちこちでして、ツバメが無数に飛んでいる。アカモズの亜種のシマアカモズがたくさん渡ってきてあちこちで鳴いている。07:30から朝食、08:20 出発。歩くとコサメビタキも渡ってきた。上空をアカハラダカ3羽がゆっくりと旋回上昇して西へ流れて行く。西の耕作地に行くとコホオアカ2羽が餌をついばむが遠い。電線にシマアカモズがとまっていてみなさんでじっくりと観察、撮影する。その後、耕作地から牧場へ行くと電線に怪しいムクドリ1羽がとまっている。結果はコムクドリの雌だったがかなりドキドキする個体だったのだ。その後、浜の耕作地の農道をゆっくり走り、コホオアカ、ツメナガセキレイ、クロハラアジサシなどを見る。餌をついばんでいたミフウズラ2羽が慌てて草地へ逃げ込み、さらに同じ畑にミフウズラが3羽いてみなさんで観察、撮影する。昼食後、フェリー乗り場へ行き、出港。有志数名で何もいない海上を頑張って見張り、オオミズナギドリ1羽を確認して港に着岸。16:40に那覇空港へ到着したのである。渡り鳥の中継地・粟国島。みなさま、お疲れ様でした。
宮島 仁