【ツアー報告】絶景の立山!ライチョウの親子に会いたい! 2021年7月17日~19日
(写真:ライチョウの親子 撮影:中谷博之様)
国の特別天然記念物であるライチョウの親子に出会う確率が高い時期に合わせて立山室堂を訪れる夏恒例のツアー。今年はちょうど梅雨明けに合わせるように出発できることになりました。ライチョウはこの立山室堂のほか、乗鞍高原の畳平でもツアー企画していますが、畳平は晴天時にはなかなか出会うことができないというライチョウ特有のマイナス要素があるものの、ここ室堂のライチョウは天候に左右されない印象が強くあります。立山室堂は観光地としても有名なため、シーズン中には多くの観光客が訪れますが、個人で行くには乗り換えが多く何かと面倒です。ただツアーでは専用バス利用のため富山駅から直接室堂まで行くことができ、また天候の急変などの場合でもバスを好きな時間に使えるため何かと便利です。
17日、朝からむっとするような東京駅にやってきましたが、この日は北陸新幹線が路線点検の関係から運行がストップしていて東京駅は大混乱。ひとまず手分けしてお客様に連絡を入れ待機していただき、結局、東京駅を大きく遅れて出発しました。列車はなんとか富山駅に到着し、現地集合のお客様と合流後は、宿泊地の弥陀ヶ原に向けて出発しました。富山駅周辺もむっとするような暑さは東京とさほど変わらず、途中に立ち寄った道の駅でもその暑さは厳しいものでした。その後はいよいよ弥陀ヶ原に向けて進み、途中、やや雲がかかったものの車窓からは見事な風景を見ることができました。美女平を過ぎた頃からは霧がかかったり晴れたりを繰り返しながら進み、独特の雰囲気が漂う称名滝も見学してから宿泊地の弥陀ヶ原に滑り込みました。夕食までやや時間があることから急いで外に出てわずかながら探鳥をしてみました。今年はウグイスの声が絶えず聞こえ、梢ではアカハラもさえずり始めました。ほかにもクロジやルリビタキ、メボソムシクイなどの声を聞きながら歩き、最後はやや霧がかかる中、どこからともなく飛んできたホシガラスが枯れ木に止まってくれました。夕食後は富山県自然観察員の方々の講演を聞き、さらに知識を深めることができました。
18日、この日は午後から雨の予報が出ていましたが早朝は快晴。賑やかなウグイスのさえずりが響き渡っている中、早朝探鳥を行いました。早速、周囲からは亜高山を代表する鳥たちの声が聞かれ、やはり弥陀ヶ原ではなんとか出会いたいクロジを探すために声がするほうに歩いていくことにしました。途中、枯れ木に止まってさえずるアカハラが見られ、その後は数個体のクロジを見ることができました。例年、さえずりは聞こえるものの、その姿を見ることがなかなか難しいのですが、この日はさえずっている姿を何度も観察することができました。またそれほど目立った場所ではさえずらないメボソムシクイが針葉樹の枝先で歌っていたため望遠鏡を使ってしばらくの間、観察することができました。一旦朝食をいただき快晴の中、ようやく室堂に向かうことになりました。イワツバメが飛び回る室堂バスターミナルに到着後は、早速ターミナル内を通って室堂平に出ました。この日は雄山もはっきり眺めることができまさに絶景。日焼けを注意しなくてはならないような快晴の中、まずはみくりが池に向けて歩きました。遊歩道脇にはイワカガミやヨツバシオガマ、チングルマが咲き、まずはまだまだ雪が残るみくりが池周辺を眺めてみました。ただここでは残念ながらライチョウの姿はありませんでしたが、その後、幸いにも歩き回るライチョウの姿があり、良く見ると可愛らしいヒナを連れていました。最初は4羽のヒナが見えましたが、観察しているうちに1羽増え、1羽増えで結局6羽ものヒナを連れていました。この親子連れは観察しているとどんどん離れていってしまいましたが、このルートの場合、待っているとだいたい戻ってくることが多いので待ってみると、予想通りどんどん戻ってきたため、最後は間近の斜面を登っていくところまで観察することができ、2時間ほど観察したことから一旦この親子から離れることにしました。その後は別の個体を探して歩きましたが残念ながらライチョウの姿はなく、雄大な風景と足元に咲くイワイチョウ、イワカガミの花を見てから来た道を引き返しました。戻る途中でも再び同じライチョウの親子に出会うことができ、今度は雪渓に沿うように歩きまわる姿を観察してから一旦昼食の時間としました。この頃からは天気予報通り雲行きが怪しくなってきたことから弥陀ヶ原にあるホテルまで戻ることにしましたが、途中、営巣中のイワヒバリが見られ、安全な距離を保って30分ほど観察してから移動しました。ちょうど14:30頃、弥陀ヶ原に戻りましたが天気予報がピタリと当たり、周囲は深い霧に包まれ雨も落ちてきました。その後は現地自然ガイドの方と弥陀ヶ原を歩く予定のため準備をして待ちましたが雨の勢いが強く、雷鳴もとどろいてきたことから中止とし、この日の探鳥を終えることにしました。雨はかなりの勢いで降り続きましたが16:30頃には上がり、空が見る見る青くなってきたことから外に出てみました。残念ながら花は閉じたままでしたが、ウグイスやクロジ、アカハラ、ホトトギスのさえずりが聞こえていました。そしてこの日の夜も富山県自然観察員の方々の講演を聞き、貴重なライチョウの映像を見せていただきました。
19日、この日も午後は雨の予報が出てはいましたが早朝は快晴。さわやかな雰囲気の中、周辺を歩いてみました。相変わらずウグイスがソングポストでさえずり、クロジ、ホトトギスは複数個体が鳴いていました。この日もクロジのさえずりが聞こえるほうに歩いていくと、枯れ木に止まってさえずっているクロジの姿を見ることができ、珍しく針葉樹のてっぺんに止まってさえずっているホトトギスが見られ、良く見てみると2個体の姿がありました。また一瞬でしたがヒガラが枝先に止まり、ウソのつがいが飛んでいきました。戻る途中では今度はメボソムシクイとクロジが同時にさえずり始めたことから両種を同時に観察するという珍しいシーンを堪能し、最後はホテル前をヒラヒラ飛んで行くホシガラスを見てから一旦朝食をいただいてから出発して室堂に向かいました。この日はやや霧がかかってはいましたがひとまず雨の心配はなさそうで、途中ではソーメン滝を見てから室堂を歩き始めました。この日も前日同様にまずはみくりが池を目指し、その後はみくりが池の北側の遊歩道を歩きました。今年はどうにも小鳥類の姿が少なく残念ではありましたが、幸いにも花びらがピンク色のタテヤマチングルマを見つけることができ、戻る途中では遊歩道を歩き回るカヤクグリを間近に見ることができました。また室堂平のお花畑では咲き乱れる花々を楽しむことができ、お馴染みのチングルマやイワカガミ、ハクサンイチゲ、可憐なアオノツガザクラ、ツガザクラ、ミネズオウも見られました。また帰り間際には相変わらず子育て中のイワヒバリを見ることができ、せっせと餌を運ぶ様子、そしてこの日は今にも巣から出てくるのではないかと思われるくらいに成長したヒナの姿を見ることができました。その後は霧が濃くなる中、逃げるように弥陀ヶ原まで戻り、昨日、歩くことができなかった弥陀ヶ原をわずかな時間ながら歩いてみました。目的のタテヤマリンドウは幸いにも咲き乱れるような状況で楽しむことができ、ほかにもイワイチョウ、ワレモコウ、テガタチドリ、アカモノ、そして形が特徴的なホソバノキソチドリを教えていただきました。観察後はホテルまで戻って昼食をいただき、変わりつつある空模様を見ながら富山駅に向かいました。
今年の夏の立山ツアーは出発日にいきなりのJRトラブルに見舞われ、偶発的な事案とはいえ大変ご苦労をおかけしました。ただ、幸いにも翌日には数回に渡って6羽のヒナを連れたライチョウの親子をじっくりと観察する機会に恵まれました。ライチョウは季節によってその姿を変えます。秋の乗鞍や春の立山室堂など、また違った姿のライチョウを見にぜひお出かけください。一方、今年はホシガラス、イワヒバリ、カヤクグリの高山鳥3種の出現が鈍く、ようやく見られたといった程度でした。ただイワヒバリに関しては子育ての様子を観察する機会に恵まれ、貴重なシーンを観察することができました。また弥陀ヶ原では今年はクロジの姿が多く、何度も何度もその姿を観察でき、美しいさえずりを存分に聞けたことは大きな成果でした。そしてこのツアーの隠れた主役である高山植物も楽しむことができ、チングルマやイワカガミ、ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマ、タテヤマリンドウといった代表種が見られたほか、幸いにもタテヤマチングルマにも出会えました。今後もコロナウイルス感染対策を万全にしてツアー催行して参りますのでぜひご協力ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史