【ツアー報告】春の利尻島 最北の航路と渡りの鳥たち 2021年5月8日~11日

(写真:マミジロキビタキ 撮影:井ノ口博司様)

バードウォッチャーにとっては憧れの地である北海道。ツアーとしては寒さが最も厳しい厳冬期の道東や道南、そして咲き乱れる花々が美しく、それらと野鳥のコラボレーションが楽しめる初夏のツアーが特に人気があり毎年大好評をいただいておりますが、今回訪れる春の利尻島も負けてはいません。北海道では珍しい渡り途中の野鳥が見られること、そしてクマゲラに毎回のように出会っていること、さらには稚内から利尻島に向かう途中の航路で見られる海鳥たちも魅力的です。また行程の都合から初日に訪れる道北の各所、また最終日に訪れる森は、毎回ヤマゲラに出会うなど北海道で小鳥類を見るには最も良い場所ではないかと思ってしまうほどの場所です。ただ、今回は全体的に天気予報が芳しくなく、寒さの厳しい4日間になりそうでした。

8日、予定通り羽田空港にご集合が完了したため連絡事項をお伝えしてから搭乗し、ひとまず稚内空港に向けて出発しました。かなり寒いのではないかと心配でしたが、到着した稚内空港は曇ってはいたものの気温は15℃。それほど寒さを感じることなく観察機材準備の後、探鳥に出かけました。やや風があったためかバスを降りるとやはり肌寒く感じましたが、周辺からはヒガラ、アオジのさえずりが聞こえ、早くもオオジシギが盛んにディスプレイフライトを繰り返していました。木道を歩いてみましたが寒さのせいか鳥の気配は少なく、それでもベニマシコのつがい、さらには愛想が良いノビタキが間近にその姿を見せてくれました。駐車場付近でも複数のノビタキが飛び回り、ニュウナイスズメはコゲラの古巣を使って繁殖の準備をしていました。またどこから飛んできたのか渡り途中のマガンが飛んでいました。狙っていたツメナガセキレイが見られなかったことから少々場所を変えてみると、幸いにも木に止まってさえずっているツメナガセキレイが美しい黄色い姿を楽しませてくれました。その後はさらに南に移動し、途中、巣作り中のアカエリカイツブリの夏羽を観察し、周辺を飛び回るつがいと思われる2羽のオジロワシも見事でした。次に訪れた場所も寒さのせいか小鳥たちの気配は少なく、わずかにノビタキ、カワラヒワ、アオジが見られたのみでした。ここからはホテルに向かって移動しましたが、途中に港があることから立ち寄りながら移動することにしました。まずはキアシシギの群れに出会い、その中には1羽のミユビシギの姿がありました。港内にはコガモ、スズガモが浮いていました。やや時間が押してしまいましたが次の港に立ちよると漁港内にはシノリガモの姿があり、ウミアイサの比較的大きな群れが次々に飛び立っていきました。またユリカモメ、ウミネコ、オオセグロカモメは見事な夏羽に換羽していて、テトラポットで休むゴマフアザラシが楽しませてくれました。そして最後は道端に群れるエゾシカを見ながら岬まで移動し、かなりの寒さの中、海上に群れるアカエリヒレアシシギ、飛翔するウトウの群れを観察してこの日の探鳥を終えました。

9日、この日も今にも雨が落ちてきそうなどんよりとした空の下でした。利尻島に向かうフェリー乗船後はデッキに出て海鳥観察を行いました。この航路の目玉は夏羽に換羽したシロエリオオハム、群れで飛び回るアカエリヒレアシシギ、北上中のハシボソミズナギドリですが、まずはウトウの群れが次々に飛び、期待通りに白黒模様のシロエリオオハム、真っ赤なアカエリヒレアシシギの夏羽が楽しませてくれ、途中からは水平線上に無数のハシボソミズナギドリが出現し、時間と共に船に近づいてきたかと思うと、しばらくの間、圧巻の群翔を楽しませてくれました。そして船は予定通りに利尻島に到着。現地在住ガイドと合流し、早速クマゲラを待つことにしました。森に入るといきなりクマゲラの声が聞こえ期待感が高まりました。現地ではひとまずクマゲラがやってくるのを待つことにしました。待っている間にもコマドリがうるさいくらいにさえずり、渡り途中なのかチュウヒが飛び、ウソの枯れ木に止まりました。またアカゲラがひたすらドラミングをしたり、梢でさえずるシロハラゴジュウカラを見ることもできました。そして2時間ほど経った頃、クマゲラがやってきてくれ、いきなり目的のクマゲラに出会うことができました。お昼が近づいたことから一旦観察を終了し昼食の時間としました。ここではかなりの数のウミネコが水浴びを繰り返し、カルガモ、スズガモ、キンクロハジロの姿もあり、ここでようやく利尻山が美しいその姿を見せてくれました。昼食後は島の各所をめぐり、ツグミ、ビンズイ、アオジ、その後は海上に群れ飛ぶアカエリヒレアシシギの大群を陸上から見る機会に恵まれ、公園では繁殖中のオオセグロカモメや岩礁にいるヒメウが見られ、人気のあるノゴマが愛想よくさえずってくれました。別の公園内ではアオジ、ノビタキ、ノゴマの姿があり、さらに進むと木々に群れるマヒワの姿がありました。観察しているとイスカの群れがやってきてカラマツに止まり、真っ赤な美しい姿を見せてくれ、その後はモズ、カシラダカを見てから林を歩きました。名物のオオバナノエンレイソウの花を見た後、たまたまクマゲラの食痕を見ることができ、その底知れないパワーに驚かされました。ヒガラ、ハシブトガラ、マヒワ、シメ、ウソ、アカハラなどを見ながら歩いていると、ここでもクマゲラの声が聞こえ、最後は枯れ木に止まって羽繕いをするクマゲラを見る幸運がありました。ここからは残念ながら小雨が降ってきてしまいましたが別の場所では海上に群れているトドを見ることができ、芝生広場ではノビタキ、ヒバリが見られました。その後、さらに島の北側に進むと雨が強まったことからこの日の探鳥を終えることにしました。

10日、前日には雪予報が出ていたことから心配でしたが早朝は小雨模様。この日は林道を歩いてみました。早朝ということもありコマドリの声が絶えず聞こえましたが、なかなか良い形で観察することはできませんでした。その後は美しい夏羽のアトリの小群に出会うことができ、一旦朝食をいただき再出発後は過去に珍しい鳥に出会っている場所に行ってみました。沢が流れているため覗いてみると1羽の小鳥が飛び立ったため見てみるとオジロビタキのオスで驚きました。喉が橙色の美しい個体で、すばしこく動き回っていましたがなんとかその姿を見ることができました。オジロビタキを探して森に入ると川上からマミジロキビタキのオスが飛んできたことからまたまた大騒ぎになり、時間がかかったものの最後はいきなり我々の足元の木に止まり、極めて貴重な出会いを体験することができました。気が付くと付近にはキビタキ、サンショウクイ、カワセミの姿もあり、ちらっとではありましたが人気のシマエナガにも出会えました。その後は小雨の中、昨日訪れることができなかった場所に向かい、ここでもクマゲラの声が聞こえたかと思うと枯れ木に止まったクマゲラを見ることができ、このツアーで3度目の出会いとなりました。また駐車場付近ではコマドリがさえずっていたことから探してみると、目線ほどの高さの木で鳴いている姿をじっくりと観察することができました。その後は公園を歩きました。相変わらず芝生にはツグミが群れ、アカハラの姿もありました。さらに行くとミヤマカケスが騒ぎ、夏羽に換羽したシメの小群、さらには2羽のシマエナガが間近にその姿を楽しませてくれました。昼食をいただいた後は、宿前の木に止まる3羽のヒレンジャクを見てから鴛泊のフェリーターミナルに移動して乗船しました。ただ帰りは海況模様が悪く、大きく揺れるデッキからの観察となりました。相変わらず帯状に飛翔するハシボソミズナギドリの大群は見事で、わずかながらシロエリオオハム、ウトウ、アカエリヒレアシシギ、ミツユビカモメなども見られ、やや遅れて稚内港に到着後はこの日の宿泊地に向かいました。

11日、この日は探鳥時間を確保するため早朝にホテルを出て探鳥地に向かいました。残念ながらこの日も小雨模様の中での出発となってしまいましたが、現地が近づいてくるいつれて空は明るくなりはじめ、到着時は幸いにも雨は上がっていました。まずは朝食の時間をとってから徒歩探鳥に出発しました。雰囲気は本州とは一か月遅れといった感じでまだまだ所々に積雪がありました。駐車場付近ではニュウナイスズメが元気よく鳴き、樹洞を使って巣作りをしていました。ふきのとうが出ている湿地ではアオジ、アカゲラが、芝生ではアカハラが地上採食していました。さらに進むと残雪の上でマヒワの群れが餌を探し、マミチャジナイとクロツグミが一緒に地上採食している様子も見られました。針葉樹のてっぺんでは真っ赤なベニマシコが鳴き、肌寒いせいか全く声を出していないキビタキのオスも見られました。目的のヤマゲラはちらっと見られただけでしたが、ここで一旦場所を変えてみることにしました。まだまだ雪が残るグランドではベニマシコのつがいが見られ、クロツグミのオスも歩きながら餌を探していました。30分ほどしてから戻ってみると、アカハラとマミチャジナイが群れて餌を探している芝生広場でようやくヤマゲラの姿を見ることができ、その後は枯れ木に止まったり、木から地上に降りて餌を探したりとさまざまな姿を観察することができました。

さて、今年の利尻島ツアーは緊急事態宣言が発出される中での出発となり、極めて難しいタイミングでの催行となりました。ただ幸いにも利尻島では現地在住ガイドのおかげで、なんと3か所でクマゲラに出会うという大きな成果を挙げることができたほか、密度の高いコマドリ、ノゴマがさえずる姿も観察できました。また渡りの島らしく、マヒワ、アトリ、カシラダカ、ツグミ、シメといったおなじみの冬鳥に加え、キビタキ、オオルリ、コサメビタキといった夏鳥たち、そしてマミジロキビタキ、オジロビタキ、イスカ、ヒレンジャクといった珍しい野鳥に出会う幸運もありました。また往復の航路ではハシボソミズナギドリ、アカエリヒレアシシギの大群も圧巻でした。そして道内の原生花園ではツメナガセキレイ、オオジシギ、ノビタキ、森では主な目的だったヤマゲラに出会うことができ、渡り途中のマミチャジナイの群れや、ニュウナイスズメ、ベニマシコ、アカゲラなどにも出会え4日間で87種の野鳥たちに出会うことができました。想定外の寒さの中での探鳥お疲れ様でした。今後もコロナウイルス感染予防に徹しながらツアー運行してまいりますのでぜひまたご参加ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

オジロビタキ 撮影:井ノ口博司様

 

コマドリ 撮影:井ノ口博司様

 

クマゲラ K様

 

マミチャジナイ K様

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