【ツアー報告】固有種と渡りの鳥たち 春の奄美大島(追加設定) 2021年4月9日~11日
(写真:オオトラツグミ 撮影:仙波文裕様)
9日、4月奄美ツアー第2弾。前回が雨に降られたため天候状態が最も気になるところ。先ずは全員定刻通り奄美空港に到着できた。現地は曇り空、たまにポツリとくるが何とかなりそうな天候。早速第一番目の探鳥地に向かう。芝生が広がる景色が見えてまもなく、目前でハクセキレイとムネアカタヒバリの小群が採餌している。バスを下げ飛ばさないように車外へ出て観察開始。中には亜種ホオジロハクセキレイの姿も見える。しばらくすると低空にカモメ類の飛ぶ姿が目に入った。奄美ではカモメ類自体が珍しい。双眼鏡に入れると巨大な赤い嘴が。オニアジサシ成鳥しかも綺麗な夏羽だ。悠々と港を往復し姿を消した。他にはこれといったものもおらず、隣接する海岸に向かった。駐車場で降車して直ぐにたくさんのシギ・チドリの声が聞こえてきて安堵する。岩礁と砂の入り混じった干潟に多くのシギ・チドリやサギ類が散らばっている。ざっと目を通す。ムナグロ、メダイチドリの数が目立つ。キョウジョシギ、オバシギ、トウネンなどもいる。夏羽になりかけたエリマキシギ雌やホウロクシギも。やや遠くに頭が濃いオレンジ色の鷺が見える。完全な夏羽に変わったクロツラヘラサギ成鳥だ。常時見慣れている九州出身の私でもここまで色の濃い個体は見た記憶がない。沖の灯台にはハヤブサが止まっている。オニアジサシは干潟の縁に降りたままじっと動かない。16時半、次第に周囲が薄暗くなり始め風も出て肌寒くなってきたためホテルに向かって出発した。1日目は順調なスタートを切ることができた。
10日、朝から雨模様。今日は南部への長距離移動を予定している。先ず最初のグラウンドを覗くと芝生上には何も居ない。お客様が杭の先にハチジョウツグミを発見する。側の電線にはコムクドリ数羽が止まっている。雨が降り続いているが前進する。川にかかる橋ではリュウキュウツバメ飛び回る。川の縁にはセイタカシギ成鳥が佇み山側ではズアカアオバトが飛んでいる。最終的にここでは最後まで雨が止むことがなかった。先を急ぎグラウンドへはここからバスでさらに50分。2日目は長距離移動が続く。昼過ぎに現地到着。早速グラウンドへ。何もいない!ここでは初めてのケースで気持ちが焦る。結局大した成果もなく終了。昼食後、景観が素晴らしい場所に行く。湿地ではシロハラクイナが飛ぶ。雨はほぼ上がり曇天。林の中はやや暗い。と突然、大きなドラミングが鳴り響く。近い!オーストンオオアカゲラだ。直ぐにその姿を見つけることができた。美しい雄成鳥。本土のものと全く違った南国的色彩。思わず見惚れてしまう。後で雌と交尾しているところを観察したお客様もいた。さらにゆっくりと林の中を進む。シロハラの個体数が増えてくる。どうもシロハラとは違う大型ツグミの地鳴きが聞こえるなと感じていると前方の地面にオオトラツグミの姿を発見し思わず叫んでしまった。しかも2羽いるようだ。全員で観察と撮影会が始まった。落ち葉をひっくり返しながら採餌している。大柄でがっしりとした体格、太い嘴や脚を確認する。腹の地色が白い亜種トラツグミと違い亜種オオトラツグミは黄色い地色をしている。上尾筒の数枚の羽軸が黒く碇模様に見えるところも確認できた。こんな興奮状態が十数分間続いただろうか?自然と2羽の姿が見えなくなり、オオトラ祭りも終了した。その後は愛想の良い番と思われるルリカケスが愛嬌を振りまいてくれた。鬱陶しい雨で始まった2日目の探鳥だったが、最後に立ち寄った場所が午前中の不振を全て吹き飛ばしてくれ、無事に終了することができた。
11日、いよいよ最終日、早朝は晴天だが、風が強い。朝食前の探鳥では森でアカヒゲリベンジだ!手前の林道で道路中央部に居たアマミヤマシギが飛び出すも、幸運にも見られたのはバスのほぼ先頭の座席にいる人だけだ。現地に到着。前日見つけたポイントで粘ることにする。本当に直ぐ目の前で囀っているが、姿をどうしても捉えることができない。1時間半頑張ったが夢は叶わなかった。ただ爽やかな緊張感を皆で共有したのも確か。アカヒゲだけは次回来島の目標に残すことにした。出現を待つ間、上空をカラスバト、ズアカアオバト、リュウキュウサンショウクイなどが飛び交っている。ホテルに戻り朝食を取る。朝食後は今回ツアー最終の地の水田に向かう。入り口付近では赤味の少ないムネアカタヒバリが出迎えてくれる。しばらく歩くと水田の畔に数羽の子がもがいてその中に一羽だけシマアジが混じっている。少し歩くと遠く前方を軽々と飛ぶツバメチドリが見えた。今回はタイミングが合わないのか、渡りの野鳥が少ない。その後、畔に降りたツバメチドリやクサシギ、チュウサギなどを観察して観察を終了し昼食会場へ向かった。ご参加の皆さまお疲れさまでした。
波多野邦彦