【ツアー報告】秋のシギチドリ巡り 東京湾と霞ヶ浦 2015年9月30日(水)
秋恒例の日帰りバスツアーは一日で海水域と淡水域を巡り、渡り真っ只中のシギやチドリの仲間を集中的に観察します。ちょうどこの時期は渡りの時期ということもあり、毎回何かしら目玉になる種が見られているのですが、今年は国内では数回の記録しかないアシナガシギが飛来しているという情報がツアー前にありました。個人的にはアシナガシギは茨城県内で9年前に観察していましたが、国内観察となると非常に貴重なできごとであることに違いはありません。
30日、穏やかな晴天の中、予定通りに08:00にバスを出発させることができ、まずは船橋海浜公園に向かいました。ツアーを企画するにあたっては潮位を見て日程を決めていますが、この日はシギ観察にはちょうどいい潮位から徐々に潮位が下がって行く時間帯での観察でした。到着までのバス車内では海水域で見られるシギチドリ類の解説を行ない、到着後は各自で観察機材の準備をしていただき、トイレに寄ってから干潟に向かいました。まずは全体が眺められる場所から見てみましたが、シギたちが東側に寄っていたことから、まずは東側まで歩き順光側から観察することにしました。大型のオオソリハシシギはとても目立ち、長い嘴を巧みに使って餌をとっていました。あまり警戒しないので間近でじっくり観察できるのがこの鳥の特徴でしょう。さらにやや小型のダイゼンはチドリ類らしく大きな瞳が可愛らしく見えます。さらに小型のシギ類の群れはハマシギでせかせかと餌を探し歩き、よく見るとその中によりずんぐりとして白っぽいミユビシギが混じっていました。ほかには4羽で行動しているオバシギ、やや遠かったもののコオバシギが1羽見られました。堤防を歩いてみると遠くに数百羽のミヤコドリの群れが見られ驚きました。さらに杭の上で魚を食べるミサゴの姿がありました。観察後は足洗場まで行き、汚れた靴や三脚の足を洗ってバスに乗車し、高速道路上にあるサービスエリアで各自昼食としました。昼食後は再び高速道路を30分ほど走り淡水域でのシギ観察に入りました。アシナガシギ情報があったことから午前中はかなりの人が訪れていたそうですが、午後に入るとやや落ち着いてきているとのことでした。淡水域でのシギ観察ではバスの駐車位置など気をつけなくてはならない点が多いのですが、今回は駐車場があったためそこにバスを止めて観察をすることができました。20名ほどのバードウォッチャーがすでに観察をしていましたが、この日は一箇所の水田にほぼ全ての種が集中していました。個体数が最も多いのは華奢な印象があり最もスマートなコアオアシシギで30個体ほどが群れていました。その中に黄色みのあるエリマキシギ、やや大型のオグロシギ、嘴下部の赤色が目立つツルシギ、橙色の足が目立つアカアシシギ、ほかにもオオハシシギ、アオアシシギ、クサシギ、ハマシギの姿もあり、目的のアシナガシギはそれらの群れに混在する形で採食していました。水深があるせいで長い足が見られないことから思ったよりも小さく見え、特徴であるやや下に曲がった嘴もそれほど印象的ではなく、一度目を離すと見失いそうになるほどでした。それでも比較的じっくり観察することができたことから、それぞれにその姿をじっくり観察することができました。また上空に目をやると例年よりもたくさんのショウドウツバメが乱舞していました。しばらく観察しているとどこからともなくハヤブサが現れ、シギの群れが一斉に飛び立ちました。結局、ハヤブサはシギを捕らえることはできず、どんどん上昇した後、去っていきました。今年はどういうわけかほかのポイントにシギ類がいないという情報をいただいていましたが、僅かながらオオハシシギ、タカブシギ、クサシギなどが見られ、それらを観察して探鳥を終了しました。
毎年この時期は何かしら目立った種が観察されていたことから楽しみにしていましたが、今年は国内で数回の記録しかないアシナガシギに出会う幸運がありました。その数日後には見られなくなったとのことですから非常に運が良かったと思います。またシギ類が一箇所に集中していましたが、それだけに比較しながら探鳥することができ、識別が非常に難しい秋のシギ類の僅かな識別ポイントを抑えることができたと思います。次回は11月8日(日)に同様のコースを巡るツアーを予定しています。これらに種に越冬組が加わることに期待が持てる時期ですのでぜひご検討ください。
石田 光史