【ツアー報告】晩秋の十勝平野 ハクガンの群れとナキウサギ 2020年10月30日~11月1日

(写真:ハクガンの群れとアオハクガン 撮影:泉全様)

十勝平野の広大な農地とそれを取り囲むような美しいカラマツの紅葉。そんなコントラストが印象的な晩秋の十勝平野をめぐる温泉連泊のツアー。前回からは行程を変更し、移動距離を極力短くするために往復共に帯広空港を利用。宿泊も温泉宿に連泊とし2日目、3日目の行動予定をお天気を見て変更できるようにしてハクガンの大群とナキウサギの観察の可能性をより高くできるようにしました。またバス車内からの観察、撮影を考慮して参加人数を減らしてバス席をお一人様2席利用にしています。毎年10月下旬にハクガンが忽然と十勝平野にやってくるのですが、今回はたまたま訪問直前になってハクガンの大きな群れが飛来したとのことで、3桁ほどだったその数が一気に4桁になったとの情報が入りました。お天気も毎回なかなか安定しないのですが、今回は幸にも3日間共に晴れマークが出てくれました。

30日、晴れ予報ながら午前中の羽田空港は雲が多くどんよりとしていました。予定通りご集合が完了したことからひとまず帯広空港に向いました。ただ天気予報よりも天気は良くなく、機体を大きく揺らしながらどんよりとした帯広空港に到着しました。到着後は真っ黒い雲が上空を覆う中、ひとまずバスにて出発し、この日は早速ハクガンの群れを探しに向いました。小雨がぱらつくスタートでしたが、黒い雲は空港付近だけだったようで進むにつれて青空が見え始めました。1時間ほど走っていよいよポイントに近づくと、どこからともなく現れたシジュウカラガンの群れがバスの上を通過し、いよいよガンたちの中継地にやってきたことを印象づけてくれました。そしてある場所にやってくると鮮やかな緑色の牧草地に1000羽にはやや満たないもののハクガンの大群が群れていました。見たところ警戒している様子はなかったものの距離が比較的近かったことからバスを道の脇に止めて車内から観察することにしました。曇ってはいましたが時折オレンジ色の夕陽が当たり、鮮やかな緑色にハクガンのスノーホワイトが映えます。よく見ると少数ながらシジュウカラガンの群れもいて、さらによく見るとハクガンの青色型、通称アオハクガンの姿も見られたため、車内に望遠鏡をセットしてじっくりとその姿を見ることができました。現地から早い段階でたった1羽ながらアオハクガンが飛来しているとの情報は得ていましたが、そのたった1羽に出会える可能性は低いと考えていたのでラッキーな出会いとなりました。ただ見る見るうちに陽が傾き、この日は日没の16:30まで観察して探鳥を終了しました。

31日、日の出は遅く06:00ということで05:30には起きて外を見るとまだまだ薄暗いものの雲はかかっておらず天気予報通りの快晴を思わせる朝でした。早朝探鳥は日の出に合わせて06:00としてあり、外に出ると気温は0℃ほどか、かなり肌寒くフリースの上から薄手のダウンジャケットを着こむほどでした。早速高木に6羽のシメが止まり今季初の観察でした。明るくなるにつれて鳥の声が増えてきたことから歩き出すとシマエナガの声がしました。その方向に向かうとシマエナガの群れがコミカルに動きながら移動していき、付近ではハシブトガラの姿もありました。ホテルの餌台にはシロハラゴジュウカラがやってきていて、どこからともなく飛んできたアカゲラのメスが枯れ木をコツコツとつつき、そこに今度はオスがやってきて追いかけっこをしていました。さらに進むとツルウメモドキの実をついばむハシブトガラ、人気のエゾリスも現れ、見る見る広がってくる青空を背景に珍しくじっとしているシロハラゴジュウカラをじっくり望遠鏡で観察してから一旦朝食の時間としました。朝食後はこのツアーのもう一つの主役であるナキウサギを探すために出発しました。途中、道の駅に立ち寄り、その後は前方に雪を被った大雪山系の山々が見え、紅葉の大地とのコントラストが見事でした。珍しく快晴だったこともあり、到着直前に眼下に広がる十勝平野の眺望とカラマツの紅葉を楽しんでいただいてから現地まで行きバスを降りました。本来であればここから山道を歩いてポイントに行く予定ではありましたが、驚いたことに道の入り口付近のガレ場で早くもナキウサギの姿を見ることができ、この日は動きが良かったことからしばらくの間、ここで観察を続けることにしました。観察しているとその名の通り甲高い大きな声で鳴く姿が見られたほか、せっせと草を巣穴に貯食する様子などを観察することができ、可愛らしいその姿を堪能することができました。気が付くと早くもお昼を過ぎていたことから、再びバスに乗って道の駅まで戻って昼食としました。その後はやや風が出てくる中、公園まで移動して主に小鳥類を観察しました。この時期の帯広市内はどこも紅葉が美しく公園内も同様に真っ赤に色づいた葉が風に揺れていました。シジュウカラやハシブトガラの声を聞きながら池まで歩くと、マガモ、カルガモに混じって複数のカワアイサの姿があり、中には羽繕いをしている個体もいて真っ赤な足、独特の形の嘴を見ることができました。さらに進むと地上で餌を探すシジュウカラ、樹間を移動しながら餌を探すハシブトガラとシロハラゴジュウカラも現れ、いつの間にかエゾリスがやってきて器用に幹を移動していきました。さらにはミヤマカケスが数羽飛んできてくれ、傾いて行く夕陽を見ながらこの日の探鳥を終えました。

11月1日、この日はやや雲がある中、06:00から早朝探鳥を行いました。この日は早朝から川で塒をとっていると思われるオオハクチョウの声が響く中を歩き、早速、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラが見られ、針葉樹の中からはキクイタダキの声が聞こえていました。さらに進むとこの日も餌台にはシロハラゴジュウカラがやってきていて、付近にはエゾリスの姿があり、しばらく見ているともう1個体が現れ追いかけっこをしているようでした。またこの日も同じ木にアカゲラがやってきてしばらくの間、その姿を楽しませてくれました。さらに小道を歩くとここでも複数のエゾリスが現れ、最後はイチイの実を食べるハシブトガラ、シジュウカラ、シロハラゴジュウカラを間近に見て一旦朝食の時間としました。この日は探鳥時間が午前中だけのため、予定通り現地に向かい、初日同様にハクガンなどのガン類を探すことにしました。ただ初日にほぼ目的が達成されていることから途中にある河川敷に立ち寄ってみました。毎年、オジロワシ、オオワシの姿があるため期待しましたがこの日は残念ながらその姿はなく、草地でホオジロ、声だけながらベニマシコ、飛翔するオナガガモなどを見て現地に向かいました。ただこの日はなかなかハクガンの姿が見当たらず、ひとまず畑地で餌を探す複数のタンチョウを間近に観察し、その後は牧草地でシジュウカラガン、ヒシクイ、マガンの群れを観察し、再びバスを走らせました。するとようやく初日よりも数を増したハクガンの大群に出会うことができたため、ひとまずバスを安全な場所に待機させ、歩いてその場所に向かいました。幸いにもハクガンの群れは警戒する様子はなく、徐々に近づいて観察することができました。1000羽はいようかというハクガンの群れが緑色の牧草地に群れている様子は圧巻で、少数ながらシジュウカラガン、ヒシクイの姿もありました。そしてしばらく観察していると初日に出会ったアオハクガンの姿もあり、距離があったことから望遠鏡を使って独特の色合いを観察することができました。そしていよいよ時間になろうかという時、まるでつむじ風が吹いたかのように突然地上にいたハクガンの大群が舞い上がり、鳴きながら旋回飛翔を始めました。そしてその大群が我々の頭上を越えていくかのように飛翔してくれ、思わず息をのむようなシーンでツアーを締めくくってくれました。

なかなか天候が安定しない秋の北海道ですが、今回は3日間共に晴れ間が見える状況となり、穏やかな鳥見日和だったことが何より幸いでした。広大な農地に美しいカラマツの紅葉は見事で、遠くに見えた雪を頂いた大雪山系の山々の美しさも印象的でした。ツアーの主役であるハクガンは我々が訪れる直前に4桁に到達したようで、今回も見事な大群の姿を堪能することができ、たまたま飛来していた、たった1羽のアオハクガンに出会えたことも幸運でした。ほかにもヒシクイ、シジュウカラガン、マガン、そしてあまり見る機会がない秋の風景の中のタンチョウも見ることができました。またもう一つの主役であるナキウサギもあっさりと見ることができ、コミカルに動き回る姿や特徴的な鳴き声を聞くこともできました。またシマエナガ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、ミヤマカケス、そしてエゾリスにも楽しませてもらった3日間でした。北海道はとても魅力的な場所のためまた季節を変えて企画いたします。ぜひご参加ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ハクガンの群れ 撮影:西川惠美子様

 

ナキウサギ 撮影:泉全様

 

タンチョウ 撮影:西川惠美子様

 

ハクガンの群れとアオハクガン 撮影:泉全様

 

ハクガン 撮影:西川惠美子様

 

ナキウサギ 撮影:泉全様

 

ハクガンとシジュウカラガン 撮影:西川惠美子様

 

ナキウサギ 撮影:泉全様

 

ナキウサギ 撮影:西川惠美子様

 

タンチョウ 撮影:西川惠美子様

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