【ツアー報告】ヒグマとマッコウクジラが棲む世界遺産 夏の知床 2020年8月7日~9日

(写真:マッコウクジラ 撮影:宅間保隆様)

春から初夏の定番ツアーとして毎回大好評をいただいているのが知床を訪れるツアーなのですが、この春はコロナウイルス感染拡大による非常事態宣言が発令されてしまい、そのため全くツアーが催行できず、結果的には知床を訪れることもできませんでした。ただ見どころが多い知床は季節を変えてもツアー企画が可能であることから、ターゲットを変えて再編成しました。この時期は小鳥類は繁殖を終えていることからさえずりもなくなかなか見どころがありませんが、山ではヒグマが子供を連れて歩き回り、海には歯鯨類最大を誇るマッコウクジラがやってきます。またシマフクロウも比較的見やすい時期のため見どころは盛りだくさんです。ただ今回はたまたま運が悪く、大きな低気圧の通過のタイミングに当たってしまいました。

7日、梅雨明けして暑さが厳しくなってきた快晴の羽田空港を出発して予定通り中標津空港を目指しました。この日の東京の最高気温は33℃。この暑さから逃れるには最高の場所と言えるでしょう。ただこの日は低気圧の接近、通過に伴い着陸時に機体が大きく揺れ、どうなることかと思いながらも無事、中標津空港に到着しました。ただこの日は知床の海は大しけとなり、この日の観光船は早々に欠航とのことで、空港到着後は目的地を2日目の午後に予定していた場所に切り替えて観察機材を空港内で準備してから再出発しました。動物を探しながらゆっくり流しながら進むと、各所にオジロワシの姿があり、草原内にはエゾシカの姿もありました。途中、駐車帯で一旦バスを止めて降りてみると三脚が倒れてしまうほどの強風でしたが、飛び回るアマツバメ、遠くの針葉樹にはオジロワシの姿がありました。一旦、休憩をとった後はさらに進み、湿地帯では渡り途中のシギチドリ類を観察しました。あまりの強風のため座って観察したが、ひとまずトウネン、キアシシギの群れ、飛び回るキョウジョシギが見られ、遠くにはせっせと歩き回るソリハシシギの姿があり、よく見るとそのすぐそばには橙色の足と嘴が鮮やかな夏羽のハジロコチドリの姿もありました。その後はこの日の宿泊地を目指して移動し、途中にある港では港内を歩き回るオオセグロカモメの幼鳥を見て、さらに羅臼港では翌日に乗船する船を見てから一旦宿に入り、観察機材だけを持ってシマフクロウ観察に向かいました。ひとまず日の入りの30分前には到着してカワガラスの姿を見ながら観察、撮影の準備をして、それぞれ好きな時間に夕食を食べていただき、見る見る暗くなってくる中で観察を開始しました。この日は快晴無風でシマフクロウ観察にはもってこいの条件でのスタート。そして早くも19:30頃からは暗闇から不気味なシマフクロウの鳴き交わしが響いてきました。この感じからするとあっさり観察成功かと思いましたがしばらくすると声は止んでしまい、なんと20:00頃からは突然周囲の木々を揺らすような強風が吹いてきてしまいました。状況が一変してしまいどうなることかと心配しましたが、幸いにも1羽のシマフクロウが音のなくやってきて木に止まりました。その後、川で魚を捕ると川石に止まり、その後はまた木に止まりましたが暗闇に消えていきました。結局この日は時間をやや延長して観察し、小雨が降り出す中、観察を終了しました。

8日、この日の午前中はヒグマ観察クルーズに乗船予定でしたが前日夜に電話があり、当日の乗船はかなり難しいだろうと言われていました。ただ早朝に電話がありなんとか船が出せそうだとのことで、予定通り07:00からの朝食時に皆様に状況をお知らせして08:00に出発して港に向かいました。天気は回復していましたがこの日も風は収まってはおらず、場所場所で強風が吹き木々が揺れていました。到着後は各自準備に取り掛かり乗船、そして船は知床岬方面に向かって進みました。出港直後は意外なほど風、波ともになく、船は圧倒されるような知床の風景を間近に見ながら順調に進みました。途中、いくつかの湾に立ち寄ってオジロワシやキタキツネの姿を観察し、岩礁にはウミネコ、ウミウ、ヒメウが群れていました。小型船のためアトラクションのように陸地に沿いながら走り、ポイントと思われる場所では斜面にヒグマの姿がないか確認しましたが、エゾシカの姿があるのみでなかなかその姿を見ることができず、帰り道でもやや範囲を広げてヒグマの姿を探しましたが残念ながらその姿を見ることはできませんでした。港に戻ると前日の振り替え乗船として予約していたこの日の午後の船も欠航とのことで、一旦宿に戻って昼食とした後は、ヒグマの姿を求めて別の場所に行って見ることにしました。まずは羅臼ビジターセンターに立ち寄ってから移動していると路肩の草むらから何かが顏を出して思わずびっくり。一瞬、人が歩いているのかと思いましたがなんとヒグマ。しかも2頭の子熊を連れていました。親ヒグマは辺りを警戒しながらガードレールに手をかけるとひょいと乗り越えてバスの前を横断。子熊もそれに続いて道路を横断して斜面を登ってどこかへと去っていきました。僅か数分の出来事でしたが圧倒的な存在感を見せてくれたラッキーな時間でした。その後は駐車場でバスを降りるも強風のため断念して移動しました。今年はどこに行っても観光地は閑散としていましたが、ここは別のようで駐車場は満車。活気にあふれていました。ひとまずスイスイ飛び回るアマツバメ、木に止まるハヤブサ、そして小鳥を狙ってかハイタカが飛び、次第に知床連山がはっきりとその姿を見せてくれました。結局、ここではヒグマの姿を見ることはなく、エゾシカ、モズ、ノビタキなどを見てこの日の探鳥を終了しました。

9日、この日はようやく風は収まり、空がやや明るくなってくる中、05:00に宿を出発して探鳥に向かいました。途中、やや霧が出る場面もありましたが駐車場は視界良好でひとまず探鳥を開始しました。ほどなくしてギンザンマシコのさえずりが聞こえたことから探してみると、遠くの枯れ木に止まってさえずる真っ赤なオスがいたことから望遠鏡を使って観察することができました。また周辺からはルリビタキやウソの声が聞こえましたが、次第に霧が立ち込めてきてしまいました。探鳥後は一旦宿に戻って朝食をいただいた後、羅臼港に向かい、ようやく観光船に乗ることができました。出港後は強い向かい風を受けながら日露中間ラインに向かって走り、到着後は風を避けながらマッコウクジラの姿を探しました。周囲ではアカアシミズナギドリやハシボソミズナギドリ、ハイイロウミツバメが飛び交い、最初は遠くに見えただけのマッコウクジラが潜水したタイミングで浮上待ちしているタイミングでは停泊中に間近にやってきたフルマカモメや着水しているクロアシアホウドリの姿も見られました。浮上したマッコウクジラは迫力あるブローや尾ビレを立てて、ほぼ垂直になって潜水するフルークアップダイブを堪能させてくれ、巨大なその姿を何度も見る機会に恵まれました。また珍しい白色型フルマカモメが着水から飛び立ち、帰り間際には羅臼の海では珍しいカマイルカの群れが現れて盛り上げてくれました。行き帰りは向かい風の強風が吹き、海鳥観察には向かない状況で時折、海水を被るような状況でしたが、約3時間のクルーズを楽しむことができました。

今年は春から初夏のツアーが全く催行できなかったことから再企画した初企画の夏の知床。直前に低気圧の接近、通過があったためほぼ予定通りに進行できず3回予定していたクルーズには2回しか乗船できませんでしたが、主な目的であったヒグマ、マッコウクジラ、シマフクロウに出会うことができ、ギンザンマシコやオジロワシ、渡り途中のシギ類、さまざまな海鳥類、そしてエゾシカやキタキツネといった野生動物にも出会うことができました。予定変更の連続でご苦労をおかけしましたがまたの機会、ぜひご参加ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ヒグマ 撮影:大林修文様

 

シマフクロウ 撮影:宅間保隆様

 

オジロワシ 撮影:大林修文様

 

アカアシミズナギドリ 撮影:宅間保隆様

 

シマフクロウ 撮影:大林修文様

 

フルマカモメ 撮影:宅間保隆様

 

シギ類 撮影:大林修文様

 

クロアシアホウドリ 撮影:宅間保隆様

 

マッコウクジラ 撮影:大林修文様

 

キタキツネ 撮影:宅間保隆様

 

フルマカモメ 撮影:大林修文様

 

アカエリヒレアシシギ 撮影:宅間保隆様

 

マッコウクジラ 撮影:大林修文様

 

クロアシアホウドリ 撮影:大林修文様

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