【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼 2015年11月21日~11月23日
(写真:シジュウカラガン 撮影:石田光正様)
我々バードウォッチャーにとって晩秋の風景といえば田園風景に群れ舞うガンたちの姿を連想するものです。その数13万羽といわれるガンたちが越冬するのが伊豆沼、蕪栗沼周辺で、言うまでもなく日本最大の越冬地です。先月の下見ではマガン、ヒシクイのほか、ハクガン、カリガネ、シジュウカラガンの姿もあり期待種は勢ぞろいしているようでした。早朝と夕方に見ることができる群れ飛ぶガンたちの姿はもちろん、こういった比較的珍しいガンに出会いたいものです。
21日、3連休ということもあり、かなり混んでいる東京駅から逃げるように新幹線に乗り込み、予定通り昼過ぎにくりこま高原駅に到着。ホテルまで徒歩で行けることからまずはホテルのロビーで観察機材の準備をしてから探鳥に出発しました。この日はほぼ半日だったので夕方の塒入り観察を見据えて蕪栗沼に向かいました。ただ塒入りまで時間があることから、まずはこのツアーで最も手強いと思われるカリガネを探しました。いくつかのポイントで空振りだったもののまずは2羽のカリガネを見つけることができ特徴である小さな嘴、額の白色部、そして金色のアイリングを見ることができ、その後さらにもう1羽を見て移動しました。塒入り前にはコチョウゲンボウ♀を観察中に30羽ほどのシジュウカラガンが飛来したことからじっくり観察し、塒入り観察に入りました。蕪栗沼にはヘラサギの姿があり、日没の16:20に合わせるように無数のマガンが戻ってきました。マガンたちが群れで飛翔する様子はまるで空に模様が描かれたかのようでしばし見とれてしまいました。そして気が付くとその中にシジュウカラガンの群れも含まれていました。
22日、まだまだ空に星が出ている05:45にホテルを出発してガンの塒立ちを見に出かけました。一気に飛び立つというわけではありませんでしたが、雲の切れ間から輝く朝日に照らし出されたガンの群れと、飛び立つ時の地鳴りのような轟音が見事でした。朝食後はさらに大きなシジュウカラガンの群れを探しに行きました。実はここ数年、シジュカラガンが群れる場所があることが分かりコースに入れていました。到着すると地面に降りて採食しているオオハクチョウの群れと行動を共にするマガン、シジュウカラガンの姿があり、その中のシジュカラガンだけが次々に移動していました。見ていると数百羽のシジュウカラガンが集結し群れ飛ぶ様子は圧巻でした。その後は幸運にも移動中に3羽のハクガンを見つけることができ、望遠鏡を使ってじっくり観察することができました。午後からは亜種オオヒシクイ、ベニマシコ、カシラダカ、ホオジロなどを見て、塒入りまでの時間を伊豆沼周辺で過ごしました。今年はカモ類が極端に少ないため湖面を眺めても僅かにカンムリカイツブリ、オナガガモ、カワアイサを見るに留まりましたが、地上に群れているマガンの群れの中に混じるハクガン幼鳥2羽を見ることができました。ただ、ここの群れは非常に大きかったためなかなか近寄ることはできませんでした。塒入りは前日よりもやや遅い時間にピークがやってきましたが、渦を巻くように飛翔するマガンの群れは見事で暗くなる頃までその光景を眺めていました。
23日、天気予報が外れてしまったようで出発の05:45はすでに霧雨が降っていました。天候のこともあり、この日の塒立ちはあまり期待していませんでしたが、遠くに塒を取っていたガンたちが続々と手前側に集結してきたため、結果的には近い距離から飛び立つ個体が多く見応えとしては前日以上でした。今回は幸い期待種を全て見ることができていたことから、ここまで良かったポイントに少々アレンジを加えて巡ることにし、朝食後はダム湖で探鳥しました。今年はどこもカモ類が少ないのですが、この場所ではハシビロガモ、コガモ、オカヨシガモ、ホシハジロなどが見られ、次に訪れた場所では昨日に引き続き数百羽のシジュウカラガンの大群を観察することができました。小雨が降る中でしたが最後はもう一度カリガネを探しました。最初のポイントでは成鳥2個体、次の場所では親子連れと思われる8羽の群れ、そして最後はこれも親子連れと思われる10羽の群れを観察することができ、ホテルに戻る途中にはかなりの数のマガンの群れを見て終了しました。
今回は幸いにも2日目までで期待種のガンたちを全て観察することができました。今まで10万羽といわれていましたが、今冬は全体で13万羽のガンたちが越冬しているとのことで、これだけの数のガンたちが越冬できる環境があることに驚きました。晩秋はやはり伊豆沼周辺でのガン類観察が定番です。皆様お疲れ様でした。
石田光史
2016年12月9日~11日 日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼 3日間