【ツアー報告】道東2大クルーズと羅臼のシマフクロウ 2015年12月20日~12月22日
(写真:ツノメドリ 撮影:米持千里様)
数ある北海道ツアーの中でも海ガモ類、ウミスズメ類観察に特化したかなりコアなWクルーズを主体にしたツアーです。昨年は海況悪化で予定していたクルーズを行うことができず残念な結果になってしまいましたが、この企画を挫折してしまうわけにもいかず再企画して臨みました。数日前から天気予報、波予報、風予報をチェックしていましたが、今年の北海道は積雪が少なく比較的温暖な状況で、これといった大きな低気圧もなく、ひとまず不安なく出発日を迎えることができました。
20日、快晴の羽田空港から中標津空港まで飛び、予定通り14:00過ぎに空港を出発することができました。中標津は思った以上に暖かくとても過ごしやすい印象でした。ただ、この時期の道東地方は16:00には日没を迎えるためすでに夕方のようです。初日は時間も時間ということから羅臼まで移動して早々とシマフクロウ観察を行う予定ですが、少々時間をとって途中にある漁港に行ってみました。道東の漁港らしく間近にシノリガモの群れが見られ、オオセグロカモメ、シロカモメ、ワシカモメといった北海道の定番カモメ類のほか、カモメ、ユリカモメなどを観察して早くも日没を迎えた漁港を後にしました。一旦ホテルに入った後、すぐにシマフクロウ観察に出かけましたが、驚いたことに到着とほぼ同時に早速シマフクロウが現れてしまい夕食が後回しになる状況でした。結局21:00に観察を終了するまで3回の観察機会があり、2個体が同時に見られる場面もありました。
21日、早朝に外を見ると晴れ間が見え風もなく問題ない天候です。前日には船長から問題なしという電話があったので安心はしていましたがそれが裏付けられました。朝食後、08:00過ぎに港に到着するとオジロワシが舞い、漁港内ではホオジロガモ、ハジロカイツブリなどが見られました。予定通りに08:30に出航すると雪景色が見事な知床連山が見え気合いが入ってきました。漁港を出たあたりでは複数のウミスズメが見られ、進むにつれてこの海域に多いハシブトウミガラスが各所で見られ、中にはウミガラスが混じっている小群も見られました。また数は少なかったですがコウミスズメの姿もあり、船体に驚いて潜水したり、飛び立ったりしていました。ほかには飛翔するシロエリオオハムも数回見られました。そして今回最も驚いたのはエトピリカが十数回出現して楽しませてくれたことでした。運が良ければ見られるだろうとは思っていましたが、これだけの個体数に遭遇したことは強く印象に残りました。派手な夏羽に比べるとかなり地味で、一見するとウトウに似ていますが嘴の形と頭部の形が他のウミスズメ類とは異なり特徴的でした。またハシボソミズナギドリが1羽飛翔していたのには驚かされました。クルーズ下船後は昼食を食べながら野付半島まで行き、オオワシ、オジロワシ、海上ではクロガモの群れ、ウミアイサ、ケイマフリ、ウミガラス、ある場所ではアビとシロエリオオハムの群れを見ることもでき、最後に訪れた漁港では間近にコオリガモが浮上したことから撮影を楽しみました。
22日、06:00に外を見ると小雪が舞っていました。前日に見た天気図は状況が悪く心配はしていたのですが、強風が吹き荒れていました。さすがに今日のクルーズは中止かと思いましたが、連絡を入れるとなんとか出航できるとのことで08:30に出航となりました。出航後の30分ほどは向かい風の中、しかもうねりが大きくほとんど鳥が視界に入りませんでした。ただ風が治まり出した頃からはクロガモ、シノリガモの群れ、ケイマフリを観察することができ、続けてチシマ型と呼ばれるウミバト、また亜種アリューシャンウミバトが見られ、特にアリューシャンウミバトは濃紺の波の上で銀色に輝いて見え存在感がありました。ほかにもコウミスズメ、ウミスズメ、ハシブトウミガラス、ウトウ、ヒメウなどが見られ、最後の最後にはツノメドリの姿を見るという幸運もありました。しかし最後は再びうねりが大きい中での観察となり、双眼鏡の視界に鳥を捉えることも困難な状況で、非常にスリリングな2時間半のクルーズでした。
ツアーにクルーズを組み込むことは、普段まず見ることがない海ガモ類、ウミスズメ類を間近に観察することができるため意味があるのですが、海況悪化による欠航のリスクがあるため悩ましいところです。今回は幸い2度のクルーズができましたが、昨年はちょっとしたタイミングの悪さから全くうまくいきませんでした。海況の悪化はある程度仕方がないのですが企画には勇気が必要です。ただ、大きな成果があることも事実なので今後も企画して参ります。根室では大揺れのクルーズで大変でした。皆様お疲れ様でした。
石田光史