【ツアー報告】初冬の羅臼でシマフクロウに会いたい!(追加設定) 2019年12月6日~8日
(写真:シマフクロウ 撮影:竹村章様)
北海道でぜひ見たい鳥の一つに数えられるのが今回のツアーの主役、シマフクロウでしょう。全長70cm、翼を広げると180cmにも及ぶ日本産最大のフクロウ類で国の天然記念物に指定されています。ただ夜行性のためその姿を見ることは難しいのですが、北海道東部の一部の宿泊施設ではお客様に提供するために活けられている魚を狙って夜な夜な見られる場所があり、そういった場所では運が良ければ見られることが知られています。この11月下旬から12月初旬はシマフクロウの繁殖期前のためオス、メス共に行動が活発になり見られる確率が高く、また観察地が混雑していないこと、また雪景色で見られることからこの時期にツアーを企画しています。ただ今回はさらに出会いの確率を上げるべく、1本のツアー中、観察機会を2度設けるというほかに例がない日程を組んでいます。今回は最終日の天気予報に雪マークが出ていましたが概ね穏やかな予報が出る中での出発となりました。
6日、曇り空の羽田空港をほぼ予定通り出発してひとまず中標津空港に向いました。幸いにも現地は快晴でしたが、この時期の知床の日没は15:45ということで、現地はすでに夕方といった雰囲気で、とにかく早めに中標津空港を出発してこの日の観察地に向かいました。今回は前回とはやや異なり道路脇には積雪がある中、夕陽を浴びて赤らむ国後島も見られ、車窓からは木々に止まるオオワシ、オジロワシなどを眺めながら15:30に現地に到着した後は、まずお部屋に入っていただき各自観察機材の準備をしていただきました。なんとか日没前には準備が整い16:00頃から観察を開始しました。この時期はシマフクロウの出現が早めということで期待しましたが、この日もシマフクロウに動きはなく、そのため18:00からはひとまず夕食の時間としました。夕食後もひたすらシマフクロウの出現を待ちましたがこの日はどういうわけかその姿を見ることなく時間だけが過ぎていきました。そしてこれといった雰囲気がない中、シマフクロウは静かに現れてくれ、この日は数回出会うことができました。
7日、この日も朝から快晴の中、07:00から朝食をいただき美しい羅臼岳を眺めながら08:00に出発してこの日は時間があることから根室方面に向かいました。まずは途中にある川に立ち寄り、この時期サケを求めて群れるオオワシ、オジロワシを観察しました。まだまだワシ類の数は多くはないものの、木々に群れる姿やオオワシの若い個体も見られました。その後は羅臼町周辺ではほとんど見ることができないコオリガモを探して漁港まで移動しました。漁港内には氷が張ってしまっていましたが、スズガモの群れに混じるコオリガモのつがいの姿があり、のんびりと羽繕いをする様子を観察することができました。別のエリアまで行くと堤防上にシロカモメ、オオセグロカモメが並び、その中に混じる1羽のワシカモメの姿がり、漁港内にはヒメウ、ホオジロガモが見られました。その後は一旦休憩した後、時間が押してきてしまったため一気に根室市内に向かいました。到着するといきなりシロハラゴジュウカラ、ヤマガラが目の前の木に止まりましたが、園内は意外にもこれといって鳥の気配はありませんでした。歩いて行くとシロハラゴジュウカラとハシブトガラがやってきてくれ、池のある場所まで行くとウソのペアが木の芽をついばんでいました。そして道を戻るとカラマツの実を食べるヒガラ、そしてキクイタダキ、キバシリが立て続けに現れてくれましたが冬鳥の姿はなく、それでもやや時間があったことからもう一度来た道を歩いてみるとナナカマドの実を食べているギンザンマシコのメスに出会うことができました。北海道では夏に亜高山帯のハイマツ帯で見ることができますが、冬季に市内で見たことがなかったので新鮮な出会いとなりました。その後は昼食の時間をとり一気に羅臼町まで戻りました。なんとか日没前の15:30にはホテルに戻ることができ、昨日同様に16:00頃から観察を開始しました。この日は早くも川の上流方向からシマフクロウの鳴き交わしが聞こえたことから期待感が高まりましたが残念ながら早めの出現はなく、そのため18:00から夕食をいただきました。ただその後もシマフクロウの出現はないまま21:30頃からは雪が降り始め、その雪が次第にその量を増やしていきました。結局この日は予定をやや延長して観察を続けましたが残念ながらシマフクロウに出会うことができず、激しく降る雪を見ながら探鳥を終了しました。ホテル到着後は外は吹雪となり、部屋の窓がガタガタ音を立てるほどでした。
8日、昨夜の雪の影響から外は一面の銀世界でしたが、幸いにも強風は収まっていました。この日も07:00から朝食をいただき08:00に出発して野付半島方面を目指しました。出発してしばらくの間は雪が舞う状況でどうなることかと心配でしたが次第に雪は止み、標津町までくる頃には青空が広がっていました。まずは漁港に立ち寄り群れるホオジロガモ、シノリガモ、オオセグロカモメ、ユリカモメを観察し、数羽の群れで泳ぎ回るシノリガモのオスが印象的でした。その後は休憩してから別のポイントに向かいました。小鳥類を探しながら走りましたがその姿はなく、ただ漁港では群れるユリカモメ、スズガモ、そして堤防上に並ぶシロカモメの群れ、飛翔するオオハクチョウの群れなどが見られました。そして最後は野付半島に向かい、同じく走りながら車窓から小鳥類を探しました。風が強く吹き付ける中でしたが、海上に群れるクロガモ、ビロードキンクロ、アビなどが見られ、ネイチャーセンターまで行くと間近に浮いているクロガモの群れが見られました。そして最後には雪原を飛び回る数羽のユキホオジロの姿があったため強風の中、バスを降りて探し回りましたが見つけることができず、時間となったため中標津空港に向いました。
今回は2日目の夜から3日目の早朝にかけて冬の知床らしい吹雪に見舞われましたが、概ね探鳥には影響なく過ごすことができました。シマフクロウに特化したツアーのため1本のツアー中に2度の観察機会を設けるという異例の形式をとってみましたが、結果的には2日目はシマフクロウに出会うことができず残念でしたが、初日の夜にその姿を見ることができなんとか目的を達成することができました。また冬鳥が好調との気配があるこの冬を象徴するかのように、ギンザンマシコに出会う幸運があったほか、漁港ではコオリガモ、シノリガモ、ホオジロガモ、シロカモメ、ワシカモメ、海上にはクロガモ、ビロードキンクロ、アビ、そして定番のオオワシ、オジロワシ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラも楽しませてくれ、最後の最後にはユキホオジロの姿をわずかながら見ることができました。この知床は生き物の濃さという点では他を寄せ付けない魅力があります。また季節を変えてぜひお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史