【ツアー報告】初冬の羅臼でシマフクロウに会いたい! 2019年11月29日~12月1日
(写真:シマフクロウ 撮影:富川誠様)
北海道でぜひ見たい鳥の一つに数えられるのが今回のツアーの主役、シマフクロウでしょう。全長70cm、翼を広げると180cmにも及ぶ日本産最大のフクロウ類で国の天然記念物に指定されています。ただ夜行性のためその姿を見ることは難しいのですが、北海道東部の一部の宿泊施設ではお客様に提供するために活けられている魚を狙って夜な夜な見られる場所があり、そういった場所では運が良ければ見られることが知られています。この11月下旬から12月初旬はシマフクロウの繁殖期前のためオス、メス共に行動が活発になり見られる確率が高く、また観察地が混雑していないこと、また雪景色で見られることからこの時期にツアーを企画しています。ただ今回はさらに出会いの確率を上げるべく、1本のツアー中、観察機会を2度設けるというほかに例がない日程を組んでいます。今回はこの時期としては珍しく穏やかな3日間になるだろうとの予報の中、出発しました。
29日、ほぼ予定通り羽田空港を出発してひとまず中標津空港に向いました。幸いにも現地は快晴でしたが、この時期の知床の日没は15:45ということで、現地はすでに夕方といった雰囲気で、とにかく早めに中標津空港を出発してこの日の宿泊地に向かいました。今回はたまたま積雪が少ないため冬の景色という感じはしませんでしたが、夕陽を浴びて赤らむ国後島もバッチリ見ることができ、車窓からオオワシ、オジロワシなどを眺めながら現地に到着した後は、まずお部屋に入っていただき各自観察機材の準備をしていただきました。なんとか日没前には準備が整いました。この時期はシマフクロウの出現が早めということで期待しましたが、この日は残念ながら声を聞くこともなく雰囲気がなかったことからひとまず夕食をいただくことにしました。夕食後もひたすらシマフクロウの出現を待ちましたがこの日はどういうわけかその姿を見ることなく時間だけが過ぎていきました。そして20:00頃からは小雪が舞い始める中、21:00頃からはようやく距離はあったもののシマフクロウの鳴き交わしが始まり、その後は何度かシマフクロウに出会うことができました。
30日、この日も朝から快晴の中、07:00から朝食をいただき美しい羅臼岳を眺めながら08:00に出発してこの日は時間があることから根室方面に向かいました。まずは羅臼港内をバスで走りながらカモ類を探し、シノリガモに出会うことができました。その後は羅臼町周辺ではほとんど見ることができないコオリガモを探して移動し、幸いそれほど警戒する様子なく、せっせと羽繕いをしているオス個体がいたことから間近に観察することができました。その後は一旦、休憩した後、別の漁港をめぐり、ここではコオリガモ、シロカモメ、オオセグロカモメなどを見てから一気に根室方面まで移動しました。時間があったことからまずは木道を歩いてみました。鳥の気配はそれほどありませんでしたが、ヒドリガモ、オナガガモの姿があり、中洲にはユリカモメ、カモメが群れ、湿地ではハマシギの小群が餌を探していました。その後は市内まで移動して小鳥類を探してみました。この冬は小鳥類が好調なようで、数日前からさまざまな冬鳥たちが見られているとの情報を現地からいただいていました。歩きはじめると早速木に止まるレンジャク類の姿があり、よく見てみるとキレンジャクとヒレンジャクの姿があり、飛び立った先にはもう数羽のレンジャク類がいました。また付近からはイスカの声が聞こえたことから探してみると、針葉樹のてっぺんに真っ赤なオスが止まりました。さらには人気のシマエナガの群れがやってきて間近にその姿をしばらく堪能させてくれました。ほかにもハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、キバシリにも出会うことができ、その後は昼食の時間をとり一気に羅臼町まで戻りました。なんとか日没前にはホテルに戻ることができ、一旦お部屋に入っていただいた後は再びシマフクロウ観察に向かい、この日は時間を決めての観察ではありましたが幸いシマフクロウに出会うことができました。
1日、この日も朝から快晴の中、07:00から朝食をいただき08:00に出発して野付半島方面を目指しました。この時期はお天気はそれほど安定しないのですが、今回は3日間共に穏やかになり驚きでした。まずは昨日行くことができなかった港を見てみました。スズガモ、キンクロハジロといった顔ぶれのほか、ホオジロガモ、シノリガモを良い光で見ることができ、シロカモメ、ワシカモメの姿もありました。ただ幸いなことにオオハムの姿があったことからしばらく観察することにしました。オオハムは外洋性が高いためなかなか漁港内で見ることはできないのですが、この個体はのんびりとしていてくれました。また間近に浮上したヒメウのような個体をよく見てみると、それがチシマウガラスだったことから大変驚きました。道東では一部の岩礁帯で見られるものの、漁港内で見たのは初めてでした。その後は別のポイントをバスで走りながら小鳥類を探しましたがそれらしき姿はなく、最後は野付半島をめぐりました。この日も快晴のため知床の山々を眺めながら進み、海上に群れるクロガモ、アビ、シロエリオオハムなども見られましたが、ここでも残念ながら小鳥類の姿はなく、最後に野付湾に群れるコクガンの群れ、そして大きな角が目立つエゾシカの姿を見てから中標津空港に向いました。
今回はとにかく意外なほど穏やかな3日間だったことがまず幸いでした。シマフクロウに特化したツアーということで1本のツアー中に2度の観察機会を設けるという異例の形式をとってみましたが、結果的には2日共にシマフクロウに出会うことができ、繁殖期前ということもあってかオス、メス両個体を見ることができました。また冬鳥が好調の気配があるこの冬を象徴するかのように、キレンジャク、ヒレンジャク、イスカに出会う幸運があり、漁港ではチシマウガラス、オオハム、また北海道らしい小鳥の代表種であるシマエナガもじっくり観察することができ、定番のオオワシ、オジロワシ、コオリガモ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラも楽しませてくれました。この知床は生き物の濃さという点では他を寄せ付けない魅力があります。また季節を変えてぜひお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史