【ツアー報告】利根川周辺の冬の猛禽類 2019年12月4日
(写真:ハイイロチュウヒ 撮影:林山直樹様)
冬といえば猛禽類観察ということで、毎年冬恒例になっているのがこのツアー。いかにも猛禽類が多く生息しているような環境をめぐりながらその姿を探すほか、毎年越冬にやってきているヒシクイの群れ、そしてその独特の風貌から人気が高いタゲリ、越冬中のシギ類、そしてここ数年、毎年のように越冬するようになったホシムクドリなどを含めて探していきます。この時期になるとかなり寒さが気になるのですが、この日は幸い天気予報は晴れマーク一色で、北日本では寒気の影響から荒れ模様とのことでしたがその影響はないようでした。
4日、快晴無風の東京駅前を予定よりもやや早く出発して、ひとまず千葉県方面に向かいました。移動中のバス車内ではいつものようにこの日観察できる可能性の高い種の特徴や探し方などをお伝えし、まずは途中にあるサービスエリアで休憩しました。ここでは桜の木から樹液が出ているようで、そこの10羽ほどのエナガがやってきていて盛んに樹液を飲んでいました。再出発後はさらに1時間ほど走って最初のポイントまで行き、到着後は各自観察機材準備をしていただいてから探鳥を始めました。スカッとした青空の下、まずはこのツアーの主役であるチュウヒが舞う利根川の河川敷で探鳥し、杭に止まるノスリ、畑地に群れるタゲリ、そして今年の冬鳥の好調さを印象づけるかのように早くも平地にやってきたツグミの姿などが見られ、ほかにもタヒバリ、モズ、ムクドリ、川ではカルガモ、オオバン、カンムリカイツブリの姿もあり、やや風が吹く中、気持ちよさそうに舞う2羽のチュウヒの姿を見てから移動しました。この2羽のチュウヒはどちらも茶系でしたが、うち1羽は全身が濃い茶色で独特の姿でした。その後は利根川沿いの細い道を走りながら探鳥し、電柱にはチョウゲンボウが見られ、さらに行くと50羽ほどのタゲリの群れはいくつも飛翔していたことからバスを降りてその光沢ある姿を堪能することができました。時間がきたことからその後は霞ケ浦南部まで移動して各自昼食の時間としましたが、たまたま餌の魚を足に持ったミサゴが真上を飛翔してくれました。昼食後はこの冬にヘラサギが見られている場所に向かいました。到着すると残念ながらその姿はありませんでしたが、間近に3羽のオオハシシギが採食し、同じく3羽のセイタカシギの姿もあり、付近ではツグミの群れが乱舞していました。その後はオオヒシクイの越冬地に向かい、今期は過去最多となる182羽のオオヒシクイが距離はあったものの干拓地に群れていて、ふと見上げるとノスリが上空を悠々と舞い、川にはカンムリカイツブリとハジロカイツブリが並んで浮上し、同時に飛び立つ珍しいシーンを見ることができました。また帰り間際にはオオタカの飛翔も見られました。その後は猛禽類を探しながらヨシ原や畑地をめぐり、水田ではタカブシギ、干拓地では杭に止まるハヤブサ、そしてハヤブサに驚いて飛び立った50羽ほどのタゲリの群れなどが見られ、その後はホシムクドリを探してみましたが、この日は残念ながらムクドリの群れが見当たらないことから断念して、15:45頃からは猛禽類が塒入りするヨシ原に向かいました。この日は幸い雲一つなかったことから美しい夕陽をしばらく見ることができ、続々と塒にやってくるチュウヒの姿を堪能したほか、ヨシ原上を飛び回るコチョウゲンボウのメス、そして薄暗くなってからは一旦塒に入ったハイイロチュウヒのメスがヨシ原上をスイスイと飛び回り羽ながら小鳥類を襲うシーンをしばらく見ることができ、その高い飛翔能力を感じることもできました。
寒さが気になる時期のツアーでしたが、この日は幸いにも快晴無風だったこともあり夕方になっても寒さが厳しくなることはありませんでした。結果的にはハイイロチュウヒのオス、ホシムクドリに出会えず、また越冬シギ類も少ない状況で残念な部分もありましたが、チュウヒ、ハイイロチュウヒ、チョウゲンボウ、コチョウゲンボウ、ハヤブサ、オオタカ、ノスリ、ミサゴといった猛禽類に出会うことができ、タゲリ、オオヒシクイ、オオハシシギ、セイタカシギなどにも出会うことができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史