【ツアー報告】渡り鳥の中継地 秋の粟島 2019年10月18日~20日

(写真:ヤマヒバリ 撮影:鶴田美津子様)

春に引き続いて秋の渡りの季節を迎え、今年も離島に向かうシーズンになりました。この秋はこの粟島ツアーを2度企画し、おかげさまで両ツアー共に満席となりましたが、前週のツアーは台風のため残念ながら中止判断したため、この秋は今回が初のツアーとなりました。粟島は飛島や佐渡、舳倉島と同様に日本海側にある渡り鳥の中継地として知られていて、過去にはさまざまな珍鳥に出会っているほか、一足先に冬鳥たちに出会うことができ、その年の冬の鳥の状況を占ううえでも楽しみな島です。ただ、探鳥ポイントの多くが狭い畑であり、またどの道もほぼ小道のような狭さで作業をしている地元の方もいらっしゃいます。そのため我々は6名様限定という、ほかに例がない超少人数ツアーでこの島に向かいます。今回は中日の天候が荒れるとのことでやや心配な中での出発となりました。

18日、島に渡る定期船のスケジュールに合わせるため、早朝の新幹線で東京駅を出発してまずは新潟駅に向かいました。出発時の東京は小雨でしたが、空は次第に曇りに変わり、新幹線に乗り継ぎ後、現地に到着した頃には空は快晴になっていました。海を眺めると穏やかな印象だったため安堵しましたが、船員の方からは「ちょっと揺れますよ」と言われて少々驚きました。粟島到着後は迎えにきてくださった宿の車に乗り込んで一旦宿に移動しました。この時点でまだお昼まで1時間ほどあったことから、まずは宿周辺を歩いてみました。離島ではちょっと外に出るとなんとなく鳥の状況を感じ取ることができるのですが、早速カラ類の賑やかな声が聞こえてきて驚きました。見ていると複数のヒガラが上空を渡る姿が見られ、ヒヨドリの群れの渡りも見られました。さらに進むと松林はキクイタダキの声で埋め尽くされていました。そのため足を止めて観察していると普段は高い場所にいることが多いキクイタダキが目線ほどの位置に次々に出てきてはその姿を楽しませてくれ、ほかにもマヒワ、カシラダカといった冬鳥たちがその姿を見せてくれ、いきなり期待感が高まりました。その後は一旦宿に戻って昼食をいただき、その後は別の場所に向かいました。到着するといきなりツグミ類の群れが飛び回り、ジョウビタキが複数地上採食し、とになく過去にない賑やかさを感じました。畑地ではツグミ、シロハラ、ヒバリ、ノビタキが見られ、しばらく観察していると枯れ木にヒレンジャクがやってきました。別の場所ではミヤマホオジロのメスが見られ、しばらく見ていると数羽のベニヒワがやってきて道端の草に止まってしばらくその姿を楽しませてくれました。そして最後は飛び立ったホオアカの姿を観察してから一旦宿に戻りましたが、途中の道端にはマヒワが群れていました。やや時間が押してしまいましたが、最後は宿周辺の畑地の道を歩きました。ここではカキの実に群れるツグミ、シロハラが賑やかで草地からはアオジ、カシラダカが次々に飛び立ってはセイタカアワダチソウに止まりました。ふと見ると聞きなれない「チッ」という声と共に飛び立った個体がいたため見てみるとシロハラホオジロのメスでした。また別の場所ではミヤマホオジロの小群が地上採食していて、飛び立っては枯れ木に止まってその姿を楽しませてくれました。

19日、深夜からの雨は早朝も降り続き、残念ながら雨の朝になってしまいました。ただそれほど激しくはなかったためひとまず徒歩探鳥に出かけました。芝生のある場所では数羽のカシラダカ、ハクセキレイ、セグロセキレイが歩き回り、ふと電線を見るとムクドリとホシムクドリが並んで止まっていました。畑地ではこの日もツグミ、シロハラがカキの実に群れ、10羽ほどのマヒワがセイタカアワダチソウに止まりました。やや雨が強くなる中さらに進むとカキの実にツグミ、シロハラのほか、クロツグミがやってきていて、落ちたカキの実をついばんでいました。またアカゲラもやってきてその姿を見せてくれました。雨に追われるように一旦宿に戻って朝食をいただいてから探鳥に向かう予定でしたが、雨が激しくなってしまったため宿周辺を歩きながらの探鳥に変更しました。畑地では亜種ホオジロハクセキレイが見られ、さきほど行ったカキの実には再びクロツグミの姿があり、さらにはマミチャジナイの姿もありました。雨が強まったことから杉林の下で雨宿りしながら探鳥していると、間近にキクイタダキがやってきてホバリングし、どこからともなくやってきたメジロの群れが賑やかにカキの実に群れていました。雨のせいか多くのツグミ類は地上付近で餌を探していたことから最後は地上に降りているクロツグミやマミチャジナイを見ることができ、早朝同様にミヤマホオジロの群れも見られました。その後は一旦宿に戻って昼食をいただき、最後は雨が弱まったため別の場所に向かいました。まずはシメの群れが樹上に止まり、なぜか小道をコガモが歩いていました。この日はマミチャジナイの群れが島にやってきたようで、ここでも複数のマミチャジナイを見ることができました。さらに進むとカシラダカの群れに混じるコホオアカの姿があり、最後は木に止まってくれたことから望遠鏡を使ってじっくりと観察することができました。その後は外周の舗装道を歩き、ミヤマホオジロ、ツグミ、クロツグミ、ヒガラなどを見て薄暗くなる中、この日の探鳥を終了しました。

20日、この日は天気は一気に回復して早朝から青空が広がっていました。前日の夜に付近にヤマヒバリがいたとの情報をいただいていたため、この日は日の出に合わせて探してみることにしました。まずは前日に見られたという場所に行ってみましたが、カシラダカ、ジョウビタキ、キクイタダキといった顔ぶれが見られただけだったため、さらに歩いて探してみました。ただ、なかなかその姿を見ることはできず、最後に行った海岸沿いの公園ではビンズイの姿が見られたのみでした。時間も押してきてしまったため引き返すと道端で餌を探す小鳥の姿があり、見てみるとそれがヤマヒバリでした。秋の離島では確率は低いものの出現することがある鳥で、それにしてもなかなかそういったチャンスはなく、極めて珍しい鳥といってよい鳥だけに時間を使ってじっくりと観察してから宿に戻りました。朝食後は再びヤマヒバリを見に行きましたが、マヒワの群れやキクイタダキを見るのみで再会はならず、最後は別の場所に向かうことにしました。離島では天気によって鳥の動きが大きく変わることがしばしばありますが、この日はすっかり静かになっていて、マミチャジナイやシロハラ、ジョウビタキ、カシラダカといったメンバーはかなりその数を減らしている印象でした。ただ居残っていたツグミの群れの中に亜種ハチジョウツグミの姿があり、顔や胸の橙色を見ることができ、よく見るとわずかにヒバリ、カシラダカの姿もありました。またチゴハヤブサが飛び回り、最後は再びヤマヒバリを探しましたがその姿はなく、マヒワの群れを間近に観察して探鳥を終了しました。

この秋は残念ながら台風の影響で先発のツアーが中止となり、この1回だけの催行となってしまいました。ただこの秋は鳥の影が濃く、さらにはたまたま出会った親切なバードウォッチャーの方のおかげで、秋の離島では極めて珍しいヤマヒバリに出会うことができました。ほかにもベニヒワ、ヒレンジャク、シロハラホオジロ、コホオアカ、ミヤマホオジロ、ホシムクドリ、チゴハヤブサ、マミチャジナイ、亜種ホオジロハクセキレイ、亜種ハチジョウツグミなどに出会うことができ、キクイタダキの多さには驚かされました。また早くも渡ってきた、ツグミ、カシラダカ、ジョウビタキ、マヒワ、シメといった冬鳥たちにも出会うことができました。秋の離島はややリスクがある印象がありますが、何度か訪れることで春とは違った種に出会うことができます。また粟島はバードウォッチャーが少なく、静かな雰囲気の中で探鳥できること、また宿では島ならではの地魚料理に加え、郷土料理もお楽しみいただけます。また季節を変えて粟島にお出かけいただけましたら幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

キクイタダキ 撮影:鶴田美津子様

 

ƒベニヒワ 撮影:鶴田美津子様

 

マヒワ 撮影:鶴田美津子様

 

ヤマヒバリ 撮影:鶴田美津子様

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