【ツアー報告】夏の知床沖・根室沖クルーズと羅臼のシマフクロウ 2019年7月19日~21日

(写真:ツノメドリ 撮影:久野守正様)

「鳥の観察会」が看板商品としてさまざまな時期に企画している海鳥クルーズ。その中でも今回改めて時期変更して企画したのが、この夏の知床沖・根室沖クルーズです。実はこのツアーは過去、5月末から6月初旬に企画していたのですが、エトピリカの出現状況が年々悪化してしまったため、時期に関して悩んでいました。そこで過去の出現データを再度洗い直し、エトピリカの出現状況が良く、さらにツノメドリの記録もあり、その他の海鳥類の数が多くなる7月に企画することにしました。ただ、夏は濃霧が出る確率が高くなることから良いことばかりではないのですが、今年は7月で行くと決めて募集したところ、おかげさまで満席となり出発することができました。今回も道東の天気予報が芳しくなく、どうなることかといった印象でした。

19日、ずっと天気がグズグズでしたが、この日の羽田空港周辺は晴れ間が見える中、ほぼ予定通り出発しました。ただ現地の天気予報は曇りということではっきりせず、到着時は予報よりも天候が悪く小雨が降っていました。ただこの日は波がややあるもののクルーズは出港予定とのことで、到着後は観察機材の準備をしてから現地に向かいました。途中、海鳥の解説や乗船する船の解説をしていましたがいきなり船長から慌ただしい電話があり、我々が乗船する一つ前の便で、なんと純白のシャチが観察されたとのことでした。そのため車内の雰囲気も変わり、一気に盛り上がってきました。現地到着後はやや時間があったことから道の駅に立ち寄り、その後は乗船して慌ただしく出港しました。小雨が降り、海上には濃霧がかかっていましたが沖に進むにつれて雨は上がり、霧も晴れて青空が見えてきました。純白のシャチが見られた海域まで一気に進んだ後はデッキから浮上するシャチの姿を探しながらの航行となり、気がつくと周囲をおびただしい数のフルマカモメが飛翔していました。また小群で飛び回るハイイロミズナギドリの姿が目立ったほか、後半は数百羽レベルながらも移動しながら海面に飛び込んで採食を繰り返す、ハシボソミズナギドリの群れが見られ、海鳥たちの貴重な捕食シーンを見る幸運がありました。ほかにも夏羽が残るアカエリヒレアシシギ、ハイイロヒレアシシギ、独特の飛翔を見せるハイイロウミツバメなどが続々と現れて休む暇がないほどで海鳥たちをかなり楽しめましたが、シャチをはじめとした大型の海棲哺乳類に出会うことはできませんでした。港に戻るとまた小雨模様に戻る中、その後は一旦宿に入っていただき、その後はシマフクロウ観察のため現地に向かいました。今回は時間を決めての観察のため、少しでも観察時間が確保できるよう夕食は現地で食べ、見る見る暗くなってくる中、シマフクロウの出現を待ちました。ここ数日は出現する時間が遅めとのことで心配でしたが、この日は小雨の中、早くもシマフクロウは現れ、その後は周辺の木に止まりしばらくいてくれました。

20日、前日が遅かったことからこの日の早朝探鳥はなく朝食をいただいてから出発して探鳥に向かいました。この日も残念ながら小雨模様で現地の視界が心配でしたがとりあえず行ってみるしかなく、やや霧がかかる峠を進みました。到着時はやや風があったため視界はあり、雨は降っていましたが1時間ほどギンザンマシコを探してみました。時折雨足が強くなりましたがイワツバメが飛び、どこからともなくカヤクグリの声も聞こえていました。間もなく出発しようかとした時、2羽のギンザンマシコが飛んできてハイマツに止まりましたが残念ながらすぐに飛び去ってしまいました。その後は雨足が強くなる中、移動しました。幸いにもこの頃からは雨が止み、早速草原の中の枯れ木に止まるチゴハヤブサを観察し、その後は湿原を歩きながら餌を探すタンチョウを間近に観察することができました。一旦昼食をとった後は草原に沿うように歩き、ハマナスの花が咲く中、かなりの数のシマセンニュウと当地の代表種であるノゴマ、そしてノビタキなどを観察してから、次の探鳥地に向かいました。ここでは距離はありましたが湿原を歩くタンチョウの親子が見られ、ヒナはもう親鳥と変わらないくらいの大きさに成長し、付近ではオジロワシやエゾシカ、そして林ではハシブトガラやシロハラゴジュウカラなどを見てから根室に向かい、最後は短時間ながらオジロワシのペアを見事な風景の中で観察してからホテルに向かいました。

21日、この日は曇り空の中、早朝に公園に向かいました。ここでは主に昨日、見ることができなかったベニマシコを探しましたが、幸いにも早速声が聞こえたため行ってみると真っ赤なオスが2羽やってきてくれました。その後も周辺の木々でさえずる姿をじっくり見せてくれるなど、本州では見ることができない真っ赤な夏羽個体を見ることができました。また巣立ったばかりのヒナを連れたヒガラが賑やかにやってきてくれたり、ハシブトガラ、シメなども見られ、最後はさえずるアオジ、そして飛翔するアオバトを見てからホテルにて朝食をいただき落石港に向かいました。海上には霧がかかり空はどんよりとしていましたが運行には問題ないとのことで2隻に分かれて出港しました。海上に出ると思ったほど視界は悪くなく、まずはウトウが数多く出現し、群れの中に混じるウミガラスの姿もありました。その後は先を行く船の周囲に着水しているクロアシアホウドリを間近に観察することができ、同時にエトピリカの非繁殖羽も間近に見ることができました。また先行する船がツノメドリを観察したとのことから付近を探してみると幸いにもその姿があり、過去に経験したことがないような距離感でじっくり観察することができました。その後はケイマフリが群れるポイントで鳴き交わす様子を観察したほか、岩場ではチシマウガラスやウミウ、ヒメウ、そして人気者のラッコの姿を見ることもでき、気がつくと青空が広がっていました。

さて、今回は過去、5月~6月に企画していたこのツアーをやや霧のリスクはあるものの7月中旬に変更して企画してみました。これはここ数年のエトピリカの出現状況が芳しくなかったことからでしたが、結果的にはエトピリカを間近に観察することができたほか、ツノメドリを間近に観察する幸運にも恵まれ、時期変更がうまく行った形になりました。また春季にはほぼこの海域では見られないクロアシアホウドリやヒレアシシギ類、フルマカモメもたくさん見られ海鳥を楽しむには良い時期でした。一方、知床沖ではハイイロミズナギドリやハシボソミズナギドリ、フルマカモメが見られ、捕食行動も見られました。ただ大型の海棲哺乳類が見られず残念でした。クルーズは海況による影響が大きくリスクを伴いますが、今後もより近い距離感で海鳥たちを楽しめるよう、クルーズツアーを数多く企画して参ります。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

シマフクロウ 撮影:鶴田美津子様

 

エトピリカ 撮影:久野守正様

 

クロアシアホウドリ 撮影:鶴田美津子様

 

ハシボソミズナギドリ 撮影:久野守正様

 

ハシボソミズナギドリ 撮影:鶴田美津子様

 

ケイマフリ 撮影:久野守正様

 

ウミスズメ 撮影:鶴田美津子様

 

ウトウ 撮影:久野守正様

 

ツノメドリ 撮影:鶴田美津子様

 

フルマカモメ 撮影:久野守正様

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