【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森 2019年5月29日~30日

(写真:チゴモズ 撮影:中谷博之様)

そろそろ野鳥たちの繁殖期も後半に入り、森も薄暗くなり、さえずりも無くなり、総じて小鳥類が探しづらい季節になってきてしまいました。ただ東京からやや足を伸ばして北信越のブナ林まで行けば、まだまだ渡ってきて間もないため行動的で、しかも魅力的な野鳥たちが数多く生息しています。今回は恒例となっている1泊2日の天然温泉宿泊のバスツアーとして松之山周辺をめぐります。毎年この時期の松之山は晴天時には蒸し暑くなることが多かったのですが、今回は天気予報が快晴だった割には意外にも気温はそれほど高くない予想でした。

29日、前日夜に雨が降っていたため早朝はやや心配でしたが、すっかり雨は上がっていて空は明るい曇り空でした。集合場所の東京駅前も曇り空ながら風は涼しく心地よい感じがしました。予定よりも少々早めにご集合が完了したことから07:55に出発しました。この日の午前中はほぼ移動だったため、バス車内ではこのツアーで観察が期待できる種の解説などをしながら進み、途中2度休憩を挟んでまず最初の探鳥地に到着しました。時間が時間だったことからまずは各自昼食とし、その後は観察機材の準備をしていただいてから林道を歩きました。早速、キビタキが軽やかに歌い、いきなり飛んできたアオゲラが地上付近で餌を探していました。またカケスがやってきて松の木に止まり、周辺からはイカル、クロツグミのさえずりが聞えていました。戻ってくるとキビタキがさらに近い場所でさえずっていたことから、その姿を何度も何度もじっくりと観察することができました。その後はチゴモズを探して2か所ほど巡りましたが残念ながら出会うことはできず、ただ電線でさえずるホオジロやノジコ、またせっせと巣作りするニュウナイスズメ、そして当地では頻繁に目にするサシバの飛翔を見ることができました。また、杉の高木で盛んにさえずるカッコウ、また人気のあるオオルリなどを見ることができました。そして最後はちょうど光線状態が良い時間帯に合わせてブッポウソウのポイントに移動しました。この日はあまり動きが良くなく、なかなか姿を見られなかったことから周辺を歩いてみると、ようやく眼下の電線に止まる1羽を見ることができ、その後はブナ林の中に佇む1羽、そして最後は順光の中、見事な緑色と藍色と赤色のグラデーションを輝かせて止まる姿を見ることができたほか、飛び回る3個体を見ることができました。そして夜には宿周辺からヨタカの声が聞こえていました。

30日、思いのほか肌寒く、思わずフリースを羽織って05:00に外に出ると遠くからアカショウビンの声が聞こえ、斜面の高木ではオオルリがさえずっていました。ひとまず早朝はアカショウビンに期待して出発しました。到着すると遠くからアカショウビンの声はしましたが探せる距離ではなく残念でした。ただブッポウソウが姿を見せてくれ、少々歩いて行くと2羽のオオアカゲラが争うような行動を見せてくれました。さらに歩くとサンコウチョウの声が聞こえ、周辺ではせっせと巣に餌を運んでいるコサメビタキや当地では珍しいゴジュウカラ、そしてキバシリなどを見ることができました。その後は朝食のため一旦宿に戻り、その後は前日に見ることができなかったチゴモズを探してみることにしました。早朝は肌寒かったですが、この頃には日差しがやや強くなり、当地らしい蒸し暑さが戻ってきていました。まず向かった場所では昨日同様にその気配がなく、残念ながらチゴモズに出会うことはできませんでしたが、ノジコがさかんにさえずっていたほか、コサメビタキ、アカゲラ、カケスなどが見られ、最後はすぐ近くの高木のてっぺんでさえずるオオルリをじっくりと観察することができました。次の場所ではやや小道を歩いて探してみることにしましたがこれが幸いし、ようやく美しいチゴモズのオスに出会うことができました。周辺ではオオヨシキリがけたたましくさえずっていて、サンショウクイのメスも姿を見せてくれましたが、どうやらこの場所で餌を採っているようで、チゴモズは何度も姿を見せてくれ2羽でいることも確認できたので無事繁殖してくれればと思いました。その後は一旦昼食の時間とし、最後はここまで行くことができていなかった場所に向かいました。ここではまだまだ残雪がある林道を歩きました。足元にはイワカガミやミズバショウの花々が見られ、早速当地の主役であるオオルリのさえずりが響いていました。川辺ではキセキレイが争うような行動を見せ、その後はようやくオオルリに出会いましたが距離が長く、ひとまず望遠鏡を使って観察しました。やはり青い鳥は人気が高いのか、意外なほどに盛り上がりました。そして最後は当地の環境を代表する大型猛禽類、クマタカが2羽、両翼を大きく持ち上げたような独特の飛翔姿勢で舞ってくれ、山深いブナ林に来ていることをもう一度しっかり認識させてくれました。

蒸し暑くなることが多い松之山ですが、今年は幸にも心地よい陽気の中の2日間でした。もう長らくこの地にも通っていますが、まず驚くのが環境の変化をほとんど感じないことです。こういった場所はなかなかなきょうに思います。もちろん野鳥たちの姿はやや減少し、見づらくなっていることは間違いないですが、それでもブッポウソウやチゴモズ、ノジコ、アカショウビン、サンコウチョウ、クマタカといった希少種が毎年のように確認できています。ご覧いただいた通り、現地は極めてのどかな山村です。当地が騒がしくなることなく、生息する野鳥たちが安心して暮らしていけるよう配慮していきたいものです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

クマタカ 撮影:稲田貢様

 

チゴモズ 撮影:山岸俊文様

 

キビタキ 撮影:寺田祐治様

 

オオアカゲラ 撮影:中谷博之様

 

ブッポウソウ 撮影:稲田貢様

 

ニュウナイスズメ 撮影:寺田祐治様

 

コサメビタキ 撮影:中谷博之様

 

コサメビタキ 撮影:稲田貢様

 

カケス 撮影:寺田祐治様

 

キビタキ 撮影:中谷博之様

 

オオルリ 撮影:稲田貢様

 

オオアカゲラ 撮影:寺田祐治様

 

サシバ 撮影:稲田貢様

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