【ツアー報告】春の渡り鳥を求めて 新潟県・粟島 2019年5月5日~7日
(写真:シロハラホオジロ 撮影:安部哲也様)
この時期、多くのバードウォッチャーたちが渡り鳥との出会いを求めて、日本海側にある離島を目指します。離島に行くためにはほとんどの場合、船に乗らなくてはいけないため少々面倒ですが、やはり普段なかなか出会うことができない鳥たちに出会える可能性が高いという点では魅力的です。今回訪れる粟島は探鳥地のほとんどが小さな畑であり、歩く道も極めて細いことから、周辺住民の方々への配慮を含めて我々は6名様限定という超小型ツアーで企画し、全員で出現した鳥たちを観察できるようさまざまな配慮をしています。
5日、ゴールデンウィーク後半ということもあり、それほど混雑していない東京駅を出発して新潟駅を目指しました。この日は幸い快晴の中、順調に進み、午後には予定通り岩船港から高速船で粟島に向けて出港しました。航路上はかなり穏やかでトラブルなく粟島に到着することができ、到着後は一旦宿にて観察機材の準備をしてから探鳥に出かけました。まずは芝生で餌を探すアオジ、ビンズイを観察しました。その後は新緑の中を飛び回るキビタキ、オオルリといった代表的な夏鳥を観察しました。すると水場にいきなりマミジロのメスがやってきて必死に餌探しをはじめたことから、いきなり離島ならではの印象的な出会いがありました。その後は集落からキャンプ場付近を歩きました。森の方からはクロツグミやアカハラのさえずりが響き、海岸にはウミネコとウミウの姿がありました。途中にはカワラヒワがさえずり、何羽かわからないほどのアオジが地面で餌を探していました。そして夕方はミゾゴイを探して神社の畑に向いました。なかなか姿を見ることができませんでしたが人の気配が無くなったのに合わせるように姿を現し、地上から飛び立ち、旋回するように飛翔する姿を観察することができました。
6日、この日は午後から雨との予報が出ていましたが晴れ間が出ている中、徒歩にて宿周辺を歩き、その後は島北部に向いました。到着するとアカハラの群れが飛び、センダイムシクイのさえずりが聞えました。この日は畑でシロハラホオジロのオスに出会うことができ、その後は外周を歩きながら飛翔するハヤブサ、そしてキビタキ、オオルリ、ホオアカに出会うことができ、針葉樹林を飛び回るコサメビタキを楽しむこともできました。また最後は畑でキマユホオジロ、カシラダカを見てから一旦宿に戻って朝食としました。朝食後はやや曇り空になる中、畑地を歩きました。この日はモズやムクドリが目立ち、数羽で飛び回るコムクドリが見られたほか、1羽で行動しているギンムクドリを見ることができました。またキャンプ場に向かう途中では亜種シベリアアオジにも出会い、その後は一旦昼食に戻ってから午後は再び北部に向かいました。道端では数羽のアオジが餌を探し、再びシロハラホオジロの姿を今度はじっくりと観察することができました。そして最後は夕方に合わせて歩き、この日は残念ながらミゾゴイに出会うことができませんでしたが、ツタの実をついばむマミチャジナイの姿を見てこの日の探鳥を終えました。日中は小雨程度で済みましたが18:00頃からは激しい雨が降り出して翌日が心配になるほどでした。
7日、天気が心配でしたが早朝からカラッとした快晴の中、早朝に北部に向かいました。この日は冬鳥のアトリに出会ったほか、林からは「チューイ」というキマユムシクイの声が数多く聞こえていました。見ていると枯れ木の枝先に出てきたりとなかなかサービス良く動いてくれたことからその姿をじっくり見ることができました。その後は畑に降りて餌を探している夏羽のシメを観察していると、いきなりギンムクドリのオスが降りてきてくれたため、ようやくギンムクドリをじっくりと観察することができました。さらに進むと突然黄色い小鳥が我々の前を横切って枯れ枝に止まりました。これが驚いたことにマミジロキビタキのオスでした。すぐに飛び去ってしまったため周囲を探しましたが残念ながら見つからず、その後はコサメビタキやヤマガラ、そしてヘリポート付近では道端で餌を探すクロツグミのメスやシロハラを見てから一旦朝食のため宿に戻りました。朝食後も再び北部でマミジロキビタキの姿を探すことにしましたが残念ながら再びその姿を見る機会はなく、3日間の探鳥を終了しました。
さて、この春の粟島ツアーは現地でお世話になった方々のおかげもあり、春の離島ならではの鳥たちに出会うことができました。シラオハラホジロやキマユホオジロ、シベリアアオジは離島ではしばしば出会うホオジロ類ですが、ほかにもキマユムシクイやギンムクドリ、マミチャジナイ、また本州でも繁殖地では見られるものの、なかなかその姿を見る機会がないマミジロやミゾゴイ、またマミジロキビタキというラッキーもついてきました。ただ、こうった離島での観察は鳥への配慮のほか、現地への配慮が重要です。今後も歩く距離を極力軽減し、6名様限定というかなり絞った形でツアー企画して参りますのでよろしくお願いいたします。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史