【ツアー報告】渡良瀬遊水地と城沼・多々良沼 2018年12月26日
(写真:ノスリ 撮影:須崎明男様)
2018年を締めくくるのは毎冬恒例の渡良瀬遊水地周辺をめぐる日帰りバスツアーです。カモ類が豊富な湖沼を複数めぐるほか、猛禽類も多く、ヨシ原や公園もめぐって冬の小鳥類も探すため毎回観察種数が多いことも印象的なツアーです。大変に風が強い探鳥地としても知られていますが、当日は穏やかな日和となり、風が弱かったことから厳しい寒さを感じることがない1日となりました。
26日、薄曇りの東京駅前をほぼ予定通りに出発して群馬県方面に向かいました。大きな渋滞もなくバスは順調に進み、バス移動中はこの日に見られる可能性が高い種についての解説を行いました。最初の探鳥地ではまず観察機材の準備を行ってから歩き出しました。遠くの枯れ木にはノスリの姿があり、干潟状になっている湖畔ではダイサギとアオサギが群れていました。湖面を見ると遠くのハス田周辺にはタシギが群れて地上採食し、コチドリ、オジロトウネンの姿も見られました。カモ類はそれほど多くはありませんでしたが、ヒドリガモ、オナガガモ、コガモ、ミコアイサ、またカンムリカイツブリやハジロカイツブリの姿もあり、杭にはミサゴが止まっていました。また当地ではあまり見た記憶がないほどのミヤマガラスが群れ、地上に降りて採食行動する個体もいました。ただこの冬を象徴するかのように冬の小鳥類の気配がなかったのは残念でした。また隣にあるハクチョウの池では、オナガガモが群れ、コハクチョウ、オオハクチョウ、そして嘴が真っ黒い亜種アメリカコハクチョウの姿もありました。その後は別の池に立ち寄り、ここではミコアイサ、ホシハジロ、コハクチョウ、オオハクチョウなどを見てから渡良瀬遊水地に移動しました。ただここからの道沿いでは毎回、ミヤマガラスが見られていることから探してみると、数は少ないものの電線に並んでいる群れが見られたためかなり近い距離からじっくりと観察することができました。時間が押してしまったことから付近の公園で一旦、昼食の時間をとり、その後は再び付近に群れていた100羽ほどのミヤマガラスの群れを見てみましたが残念ながらコクマルガラスの姿はありませんでした。その後は一旦、渡良瀬遊水地内に入り、公園を歩いてみることにしました。公園内も同様に小鳥の気配はありませんでしたが、ニレの木にはシメの姿があり、ジョウビタキのオスも姿を見せてくれました。またチュウヒ、ハイタカの飛翔が見られ、ようやく草むらからベニマシコの声が聞こえたため探してみましたが、奥のほうから声が聞こえるのみでした。ただ周辺には数羽のアトリがいたため、せっせと種子を食べる様子を見ることができ、この冬あまり見かけなかったアオジが歩き回る姿も見ることができました。通常であればこの後はチュウヒの塒入りを観察するのですが、この冬、なかなか出会うことができないハイイロチュウヒの姿を追って、この冬に比較的よく見られているという場所に行ってみました。いかにもいそうな場所ではありましたがしばらく待っても姿がないため、渡良瀬遊水地のゲートが閉まる16:00に合わせて塒入りのポイントに移動することにしました。幸い風がなかったため厳しい寒さを感じることがない状況の中、ユラユラと塒に帰ってくる複数のチュウヒをしばらくの間眺めることができ、中には枯れ木に止まる個体も見られ、高速で飛び去るコチョウゲンボウのオスも見られました。周囲が薄暗くなってきた頃には塒入りはピークを迎え、チュウヒが次々にヨシ原の中に消えていく幻想的なシーンを見ることができました。ただ残念ながらハイイロチュウヒに出会うことはできませんでした。
12月恒例となっている日帰りバスツアー。今回も観察種は55種を数えましたが、ハイイロチュウヒやコクマルガラス、ベニマシコといった、このツアーの代表種が見られなかったことは残念でした。ただ冬の小鳥が少ない中、アトリの群れやシメ、ジョウビタキ、アオジが見られ、チュウヒの塒入りは過去最大数とも思えるほど見ごたえがありました。皆様にお世話になった「鳥の観察会」ツアーも2018年はこれで最後となります。この一年多くの皆様にご参加いただき心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
石田光史