【ツアー報告】初冬の羅臼でシマフクロウに会いたい! 2018年11月23日~25日
(写真:シマフクロウ 撮影:富川誠様)
国の天然記念物に指定され、国内では主に北海道東部に生息しているシマフクロウ。夜行性のため出会うことはほとんどなく、それだけに憧れの鳥と言えるでしょう。以前は厳冬期に観察機会を設け実質数時間の観察でほぼ出会うことができていましたが、数年前に一時的になかなか出会えない状況になってしまいました。そのためせっかく北海道まで足を運んでもシマフクロウだけに出会うことができず旅を終えるということが続いてしまいました。それを踏まえ、より出会いの確実性を挙げる目的で、他のツアーではありえない現地宿泊を含む観察機会を2日間確保してみることにしました。また時期に関しても繁殖期前の出現率が極めて高い時期に設定することにしました。雪景色にも大いに期待できる時期ではありますが、今年の冬は各地で記録的に初雪が遅く今回は出発前日にようやく積雪があったとのことでした。
23日、ほぼ予定通りに羽田空港を出発して無事現地に到着。ただ、この時期の日の入りは16:00のため、到着時は早くも夕方のような雰囲気でした。この日は日の入りに間に合うように行かなくてはならないため、とりあえず荷物をバスに積んで慌ただしく出発となりました。到着時はさわやかな快晴でそれほど寒さを感じませんでしたが途中からは雪が舞い始めました。ただ現地到着時には空は青空に変わり、国後島もしっかりと眺められました。到着後は一旦お部屋に入っていただき、その後は観察機材準備を進めました。ただこの頃にはすっかり薄暗くなり雰囲気は整っていました。うっすらと積雪があるため11月とはいえ真冬のような風景の中、予想通りシマフクロウは比較的早い時間に音もなく闇夜からフワリと現れて枯れ木に止まりました。その後、もう1羽が現れ、この時期らしく2羽一緒に見ることができました。その後はやや風が吹き始め、小雪が舞う状況になりましたがシマフクロウは頻繁に餌場に姿を見せ、早めにお休みになったお客様は早朝に再度観察を開始され、シマフクロウを観察されたとのことでした。
24日、天気予報が心配でしたが早朝には雪は止んでいて青空が広がっていました。この日は周辺でカワガラスを見てから出発しました。途中にある川では数はかなり少ないもののオオワシとオジロワシが木々に止まっていたためバスを降りて観察しました。周辺ではユリカモメが飛び、河口にはカワアイサの姿もあり、中には中洲に降りて魚を食べているオオワシもいました。その後は休憩してさらに進み、湖畔にやってきました。タンチョウの親子は残念ながら遥か遠くの湿地帯で採食行動していて、周辺には数多くのオオハクチョウが群れ、ウミアイサ、ヒドリガモ、オナガガモも群れ、湿地帯の中洲では20羽ほどのハマシギが採食し、遠くの枯れ木にはオジロワシの姿もありました。ただ残念ながら小鳥類の反応はなく、その後は公園に向かいました。これといった気配はありませんでしたが、林の奥に行くとハシブトガラ、ヒガラ、ヤマガラが見られ、珍しく針葉樹にいるキクイタダキも見られました。また奥の池ではキンクロハジロの姿もあり、戻る道すがらではシロハラゴジュウカラの姿もありました。周辺には真っ赤なナナカマドがごっそりと実っていましたが、この冬は小鳥が少ないのか食べられたような跡はありませんでした。その後は各自昼食を購入していただいてから休憩をとり、オジロワシの飛翔などを見てから宿に戻りました。昨夜のこともあるのでとにかく早めに準備をして待機しました。ただ、この日は声すらもなく全く気配がないまま時間が過ぎて行き、無風で前日よりも条件が良かったにもかかわらずシマフクロウに出会うことがないまま観察を終了することになりました。
25日、実はこの日も天気予報はあまり芳しくなかったのですが朝から天気が良い中、朝食をいただき、その後出発しました。途中、小さな漁港内にカモ類がいたことから立ち寄ってみると5羽のシノリガモの群れが見られ、カモ類が全体的に少ない中、美しいオス個体2羽も見ることができました。その後は昨日ワシ類が見られた川を通りましたがその姿がなかったことからさらに進み、途中、2羽で仲良く並んで木に止まっているオジロワシがいたことから観察することにしました。近い距離ながらもこれといって警戒する様子もなくのんびりとしていました。その後は湖畔まで行き、漁港で群れているシロカモメ、オオセグロカモメ、ウミネコなどを観察してから移動しました。最後の探鳥地でも残念ながら小鳥類の気配はありませんでしたが、この日は湖面に数百羽のコクガンの群れが見られ、オオハクチョウの群れと共に海藻類を食べていました。過去、何度となく訪れていますが、これだけのコクガンの大群は見たことがなく驚きました。また海上には比較的近くにクロガモの群れが浮上している姿が見られたほか、ウミアイサ、アビなども見られ、飛翔するビロードキンクロも見られました。また大きな角のエゾシカがいたことから見ていると、ヨシ原からハイイロチュウヒのメスが飛び立ちました。その後は各自昼食をご購入いただき空港に向いました。今回は初冬というにはかなり暖かく、積雪量も信じられないくらい少ない3日間でした。
昨年に比べるとかなり暖かく、積雪量の少ない11月の知床でした。ただ主な目的であったシマフクロウが23日にはその姿を何度も見せてくれ、2羽同時に見られるなどこの時期らしい光景を楽しむことができました。そのほかでは残念ながら冬の小鳥類との出会いがなく、またカモ類もかなり少ない中、オオワシとオジロワシ、コクガンの大群、そして少ないながらもクロガモ、ビロードキンクロ、ウミアイサ、ホオジロガモ、シノリガモ、アビといった海鳥たちが楽しませてくれました。これから流氷と共に混雑する知床を避け、やや早い時期にのんびりとシマフクロウの出現を待つというシマフクロウ観察に特化したツアーでした。知床はこれから厳冬期を迎えてまた素晴らしい風景を見せてくれ、春から夏にはシャチやマッコウクジラといった鯨類、そしてヒグマにも出会えます。また季節を変えて足をお運びください。この度はお疲れ様でした。
石田光史