【ツアー報告】ミナミオナガミズナギドリに会いたい!大洗~苫小牧~八戸航路 2018年11月8日~11日

(写真:ハジロミズナギドリ 撮影:須崎明男様)

鳥の観察会の看板商品である海鳥観察。その特長はすっかりお馴染みになったトラベルイヤホンを使用して観察することで、瞬間的である海鳥の出現をデッキにいる全員でリアルタイムで共有しながら観察できることです。これにより全員に情報を確実にお伝えすることが可能で、かつ詳細な位置や識別ポイントなどをお伝えすることができます。この時期の北航路の秋の主役は世界で最も美しいミズナギドリと言われるミナミオナガミズナギドリです。ただここ数年は観察頻度が極端に低下しており、そのため今回はミナミオナガミズナギドリ観察において最も重要と思われる海域を3度通過して観察する航路に行程を組み替えました。ただ出発翌日に低気圧が通過するとのことで波が高い予報が出ており、金曜日の観察が危ぶまれる中での出発となりました。

8日、全員の集合が完了したため、資料配布、トラベルイヤホンの使用説明、翌日の案内やこの時期に見られる可能性の高い海鳥の解説、特にミナミオナガミズナギドリの特徴のおさらいなどをしてから乗船を開始しました。外を見ると早くも小雨が降りだしやや心配な空模様でした。

9日、この日は深夜から船体が大きく揺れ、時折大きな衝撃を感じるほどで少々早くに目が覚めていました。デッキに出ると空はどんよりと曇ってはいましたが気温は11℃とそれほど寒くはありませんでした。ただ1.5ⅿほどのうねりがあり海水がしぶきとなってデッキ上に降りかかる状況でした。すでにオオミズナギドリが飛び、早くもフルマカモメの姿もあり、時折クロアシアホウドリの姿もある状況でトウゾクカモメの姿も見られました。直後にはいきなり純白に近いアホウドリの成鳥が飛び、コアホウドリも出現したかと思うと、オオミズナギドリの群れが連続して出現し始めました。その後は小雨が降りだす中、尾羽の長いトウゾクカモメがスイスイと飛び、気がつくと0波は意外なほど穏やかになっていました。そんな中、今度はさらに純白に近い、これぞ完全成鳥といえる美しいアホウドリの成鳥がやや高い位置から現れてかなり近い位置を飛翔してくれたためデッキ上はどっと盛り上がりました。たださらに驚いたことにこの個体と思われる個体が5分ほどして船尾方向から飛んできて、見事なダイナミックソアリングをしながら船を追い越していきました。その後はコアホウドリやトウゾクカモメが飛翔し、着水していたと思われるコアホウドリとクロアシアホウドリが船首側から舞い上がり、船体脇近くを悠々と飛翔してくれました。その後、やや雨が強まる中、フルマカモメの姿が目立ち始め、その後は一旦海鳥の出が悪くなる中、再びうねりを感じるようになりました。その後は陸地に近いせいかウミネコやオオセグロカモメの姿が目立つ時間が続きました。その後はオオミズナギドリとカモメ類の群れが出現し、その中にはコアホウドリの姿もあり、一旦群れが消えたかと思うと1羽のハジロミズナギドリが独特の飛翔を見せてくれました。その後はやや若いアホウドリが飛翔し、1000羽ほどのオオミズナギドリの群れが着水して採食行動をする中、カマイルカの群れも出現しました。昼頃にはカモメ類を狙ってかハヤブサの若い個体が飛翔し、その後再びオオミズナギドリの群れが見られました。また何度目かのアホウドリの若い個体が出現し、夕方からはハジロミズナギドリが連続して出現する中、やや薄暗くなってきたころに観察を終了しました。この日は大荒れ予想でしたが幸い観察できるレベルでした。また2時間到着遅れのアナウンスがあったものの定刻に苫小牧港に到着しました。到着後は自由行動をしていただいた後、八戸港に向かうフェリーにご乗船いただき、今回は船としては珍しいシングル部屋をご利用いただきました。出発後は船体がガタガタと揺れ、時折船体に衝撃がある航海となりました。

10日、荒天のため到着遅れが心配されましたが定刻に八戸港に到着し、一旦待合室にて待機していただいた後はチケットを配布して苫小牧港行きに乗船しました。デッキに出ると幸い青空が見える中、港内には複数のカンムリカイツブリの姿があり、堤防にはウミウ、ヒメウ、セグロカモメ、出航後にはウミスズメの小群、ユリカモメの姿が見られました。出航後はいきなりトウゾクカモメが挨拶代わりにグイグイ船体に近づいて飛翔し、その後はミツユビカモメ、クロアシアホウドリ、コアホウドリが連続して出現し、やや船が小さいため間近にその姿を観察することができました。その後は黒い雲が出てきたかと思うと一転して小雨模様となる中、フルマカモメが飛翔していました。その後はこの航路でもアホウドリのかなり若い個体がふわっと沸き上がって船体脇を飛翔し、2羽のハジロミズナギドリがしばらくの間、船体脇を大きく弧を描くように飛翔して楽しませてくれました。その後はミツユビカモメが連続して出現し、3羽のハジロミズナギドリが飛び、シロエリオオハムが高い位置を飛翔しました。その後は再び晴れ間が広がってくる中、コアホウドリ、クロアシアホウドリ、ミツユビカモメが次々に出現し30羽ほどで着水しているミツユビカモメが何度か見られました。またミツユビカモメに襲い掛かるトウゾクカモメが見られ、やや距離はあったものの着水して採食する50羽ほどのフルマカモメが見られました。その後は再び黒い雲が現れて小雨が降りだす中、着水している10羽ほどのコアホウドリが見られ、めまぐるしく天候が変わる中、苫小牧港に到着しました。港内では飛び回るウトウやウミスズメの群れが見られました。苫小牧港到着後は長めの待機時間を経て再集合していただいた後、大洗港行きの船にご乗船いただきました。

11日、この日は日の出の時間に合わせて探鳥を開始しました。デッキ上は気温12℃でそれほど寒くなく朝焼けが見事でした。早朝から穏やかな海面上をオオミズナギドリ、コアホウドリ、クロアシアホウドリが飛び、この航路でもアホウドリの若い個体が見られました。その後はオオミズナギドリとコアホウドリが連続して出現する中、1000羽を超えるオオミズナギドリの群れが見られるなど、しばらくの間、船首方向に向かって飛翔するオオミズナギドリを観察し続けましたが残念ながらミナミオナガミズナギドリの姿はありませんでした。その後は2羽のトウゾクカモメが絡まりあうように船首方向に飛び去り、着水しているフルマカモメも見られました。ただその後、一旦海鳥の姿はなくなってしまいましたがカモメ類の乱舞が見られ、わずかながらウトウの姿がありました。その後は噴気が上がったかと思うと15頭ほどのコビレゴンドウの群れが悠々と船体脇を通り抜けるように泳いで行き、それに合わせるようにいきなり風が吹き出し、やや波が立ってくる中、4羽、3羽で着水していたトウゾクカモメが一斉に飛び立ち、再び1000羽を超えるようなオオミズナギドリの群れが海面で採食し、コアホウドリやカマイルカも見られました。その後は船体のどこかで休んでいるのか、このツアー何度目かのハヤブサ幼鳥が現れ、その後は海鳥たちが少なくなる中、時折出現するオオミズナギドリを観察し続けましたが、ミナミオナガミズナギドリの姿はありませんでした。その後、オオミズナギドリの群れやフルマカモメが見られ、その後は海鳥たちの姿が次第になくなる中、観察を終了しました。

長らく企画してきました大洗~苫小牧航路ですが、秋の目玉のひとつであるミナミオナガミズナギドリの出現率の低下から、今回は初となる大洗~苫小牧航路に八戸航路を組み合わせたツアーでしたが、結果的にはミナミオナガミズナギドリに出会うことができず残念でした。特に9日の大洗~苫小牧は海況がやや悪く、海鳥の出現には良い条件だったため期待しましたが残念でした。ただ全体を通しては海鳥の出現状況は良く、フルマカモメ、コアホウドリ、クロアシアホウドリはほぼ途切れることなく出現し、3航路ともにアホウドリに出会うことができました。また過去、秋には見たことがない美しい成鳥個体に出会うなど幸運もありました。また過去9月を中心に観察されていたハジロミズナギドリが晩秋の頃まで観察できる例が増え、今回もかなりの個体数を見ることができました。今後もトラベルイヤホンを使用してリアルタイムで細かい解説が可能な手法で海鳥観察ツアーを企画してまいります。今回は4航路を乗り継ぐ形の新企画で少々お疲れだったかと思います。また違った時期、違った航路で海鳥たちを観察しにぜひお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

【※】諸般の事情により詳細な出現状況をウェブサイト上では公表しないことといたしました。ご了承ください。

 

アホウドリ 撮影:大竹明男様

 

コアホウドリ 撮影:須崎明男様

 

アホウドリ 撮影:須崎明男様

 

フルマカモメ 撮影:須崎明男様

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