【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道(追加設定) 2018年6月26日~29日
(写真:ツメナガセキレイ 撮影:富田俊晴様)
本州の森ではすでに野鳥たちのさえずりもなくなり、観察には向かない季節になってきてしまっていますが、それに合わせるように探鳥のベストシーズンを迎えるのが北海道の原生花園です。このツアーでは札幌を起点に旭岳のギンザンマシコ、サロベツ原生花園のシマアオジ、そして天売島では圧倒されるようなウトウの帰巣風景を中心に、夏の北海道のメインとなる野鳥たちを巡って行きます。やや移動距離が長くなることがデメリットではありますが4日間でこれらの野鳥と出会えるようスケジュールを組んでいます。今回は本州では真夏のような晴天が続くという予報が出る中、北海道内は相変わらず梅雨がやってきてしまったかのようなはっきりしない天気予報の中での出発となりました。
26日、ほぼ予定通りご集合が完了したためご集合場所にて資料配布、当日の連絡事項を済ませてから搭乗していただき空港に向いました。ただ、機材の遅れや預け荷物の受け取り等、遅れが重なったため予定よりも30分ほど遅れて出発することになりました。そのため前回とほぼ同じ動きとなり、まずは道の駅で休憩を取りました。空は曇っていましたが前回同様気温が高い印象の中、付近の草原ではノビタキが飛び回り、ホオアカ、ホオジロ、そして電線にはニュウナイスズメの姿がありました。その後は一旦ホテルに向かい、各自チェックインしていただいてから周辺にある森で探鳥しました。まずは前回見られたヤマゲラの姿があるかどうかを確認しに行ってみました。途中、枯れ木でさえずるツツドリが見られ、周辺を見るとアオバトが飛んでいました。到着した後はしばらく待ってみましたが気配がなく、どうしたものかと思っていると突然飛んできたハシブトガラスを警戒してヤマゲラがけたたましく鳴き出しました。探してみると木に止まっているヤマゲラの姿があったためじっくりと観察することができました。また同じ木にはアカゲラがやってきたり、ハシブトガラがやってきたりしていて、周囲ではヒガラ、キビタキのさえずりが響き、遠くの木の梢にはオオルリの姿もありました。そして最後は当地の名物となっているアオバトの群れ、そして川辺を歩き回るカワガラスの姿を見て終了しました。天気予報は思ったほど悪くはなく、とりあえず十勝岳を見ることができました。
27日、この日はこのツアーの日程の中では最も天候が悪いという予報でしたが、早朝は意外にも空は明るく雨は落ちてきていませんでした。ひとまずロープウェイの始発に乗るため早朝にホテルを出発してロープウェイ駅に向かいました。到着後は各自準備をしていただき始発で現地に向かいましたが、この辺りで小雨が落ちてきてしまいました。ただ予定通り探鳥ポイントまでやってきました。しかし到着と同時に風が吹き始め、1時間後には機材が吹き飛ばされそうな強風になったため、一旦駅に戻ることにしましたが、時を同じくしてロープウェイが運休となってしまいました。ただ駅の軒下から外が見えることから見ていると、驚いたことにギンザンマシコのさえずりが間近に聞こえたかと思うとギンザンマシコのつがいが目の前のハイマツに止まり、飛び去って行きました。そのため望遠鏡で探すとハイマツに止まる姿を見ることができました。結果的にはわずかな時間で飛び去ってしまったものの、残雪の上を歩くノゴマ、ハクセキレイの姿も見られました。雨は降り続いてはいましたが観察を続けていると再びギンザンマシコがやってきてくれ、最後はオス個体が間近の残雪の上に降り、歩きながら餌を探す姿を見る幸運がありました。ただその後はさらに風が強まったせいか鳥たちの動きはなく、ひたすらロープウェイが動き出すのを待ちました。結果的には午後にロープウェイが動くことになり3時間ほど遅れて出発して原生花園を目指すことになりました。途中、休憩を入れながら時間読みをしていましたが、この日は残念ながら予定していた探鳥は諦め、ひたすら宿に向かうことにしました。長い移動だったこともあり天候は目まぐるしく変化し、途中に立ち寄った道の駅では見事な晴れ間と虹が出迎えてくれ、僅かな時間ながら周辺にいたノビタキ、ベニマシコ、アオジ、スイスイと飛翔するハリオアマツバメの姿も見ることができました。ただ、宿に到着したのは19:10と大幅に遅れ、即、夕食をとっていただき、この日の疲れを温泉で癒していただきました。
28日、この日の天気予報はようやく雨マークが消えていたのですが早朝は残念ながら霧雨が降っていました。ただ予定通り早朝に宿を出発して原生花園に向かいました。到着時は幸い雨はなく、周辺でさえずるコヨシキリの声を聞きながら、ひとまず当地の目玉であるシマアオジを探しました。木道を歩いて行くと幸いにもシマアオジの伸びやかなさえずりが聞え、周囲を見てみると原生花園内にある低木の上でシマアオジが体を伸ばすような独特の姿勢で歌っていました。そのため望遠鏡を使って比較的長時間観察することができました。一旦飛んでしまいましたが周囲の草の上にいたため再度観察することができ、意外にもあっさりとその姿を楽しむことができました。周囲ではこの日もオオジシギがディスプレイフライトを繰り返し、最後に立ち寄った場所では枯れ木でノゴマがさえずり、巣立ったばかりと思われるヒナを連れたノビタキをじっくり見ることができました。またツメナガセキレイがいきなり間近に飛んできて楽しませてくれました。途中、雨に打たれる場面もありましたがオオジュリン、ホオアカ、カッコウなども見ることができました。その後は一旦朝食のために宿に戻り、その後は昨日行くことができなかった原生花園に向かうことにしました。途中にある池ではマガモ、ヨシガモが見られ、原生花園では周囲でコヨシキリが歌っていたためまずは観察し、その後は木道を歩くことにしました。すると驚いたことにマキノセンニュウの虫の声のようなさえずりが聞え、周囲を見てみると低木で歌っていました。一度歌い出すとしばらく歌うため望遠鏡を使ってしっかりと観察することができました。昼前には現地を出発してひとまず羽幌町に向かい、途中お昼ご飯をいただいてから曇り空の下、予定通り天売島に向かいました。この日は幸い波は低く、途中、ウトウの群れやケイマフリを観察しながら天売島に到着し、一旦宿に入っていただいてから探鳥に出かけました。ただ到着と同時に周囲は霧に包まれ始めていました。海岸では繁殖行動中のウミネコのコロニーを観察し、その後は霧の中、周囲を歩いて主にノゴマの姿を観察してから夕食をいただき、19:00からは天売島のメインでもあるウトウの帰巣風景の観察に出かけました。この時間は幸いにも霧はなくなり、次々に巣に戻ってくるウトウたちの飛翔、そして地面をノコノコ歩き回るユーモラスな姿を観察することができました。
29日、天気予報が雨だったことから心配でしたが、外を見ると空は明るく一部で青空が見えていました。この日は早朝に漁船によるクルーズを実施するため05:00前には準備をして出かけました。このクルーズは船が小さな漁船のため波の影響を受けやすく、出港できるかはその時次第という感じではありますが、この日は海況が良かったことから無事に出港できることになりました。ただ、この漁船は10名しか乗船できないことから2回に分けてクルーズを行い、各1.5時間ほどを使ってウミガラスの繁殖地である赤岩周辺海域を航行しました。結果的には2回共にウミガラスの姿を見ることができ、1回目は海面に浮いている3個体のウミガラス、2回目は海面に浮いている個体は波が高い場所だったことから接近ができませんでしたが、飛翔している姿を観察することができました。またウトウとケイマフリはかなりの数を見ることができ、ケイマフリは間近から飛び立っていく姿や中には魚を咥えて飛翔する姿などが見られ、最大の特徴である真っ赤な足も見ることができました。ウトウも時には数十羽の群れで海面に浮いていて橙色の嘴、顔にある2本の白い飾り羽も見ることができました。またクルーズ以外の自由行動中にはコムクドリ、アリスイなどをご覧になったお客様もいらっしゃいました。朝食後は海の宇宙館を訪れ、展示物を見たりお買い物をしたりしてから港に移動し、フェリーにて羽幌港に向かいました。この日は天気予報は雨でしたが、終わってみればこのツアーで初めて青空が見えた1日でした。
おかげさまで追加設定となった今年の夏の北海道。本州が梅雨になり、道内の天候が最も安定する時期に合わせて企画していますが、今年は驚いたことに6月中に本州が梅雨明けして、なぜか道内がずっと雨や曇りという状況になってしまい残念でした。またロープウェイが一時運休となってしまいご苦労をおかけしました。ただ終わってみればこのツアーの目的であったギンザンマシコ、シマアオジに出会うことができ、天売島ではウトウの帰巣風景のほか、海況が良かったことから漁船によるクルーズが実施でき、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウの姿を見ることができました。ほかにもヤマゲラ、アオバト、ツメナガセキレイ、マキノセンニュウ、ベニマシコ、オオジシギ、オオジュリン、ノゴマといった鳥たちとも出会え、夏の北海道をお楽しみいただけたのではないかと思います。北海道は海も山も草原も楽しめる探鳥地です。また季節を変えて足を運んでいただけました幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史