【ツアー報告】ベストシーズンに行く三宅島 2018年5月11日~13日
(写真:アカコッコ 撮影:宅間保隆様)
週末を利用して貴重な野鳥たちが生息する三宅島を巡る初夏恒例のツアー。三宅島の野鳥たちが出揃い、最もさえずりが多く、緑が鮮やかな時期に訪れます。三宅島といえばそのシンボルバード的な存在である日本固有種のアカコッコをはじめ、夏鳥として渡ってくる天然記念物のイイジマムシクイ、絶滅危惧種のウチヤマセンニュウがよく知られており、ほかにも亜種、モスケミソサザイ、オーストンヤマガラ、タネコマドリ、不気味な声で鳴く天然記念物のカラスバトが生息しています。またこのツアーでは2時間ほどの時間を使って島内を一周し、三宅島と噴火の歴史を学ぶ時間もとっています。今回は幸いにも天気予報が良い中で出発することができました。
11日、集合場所の竹芝桟橋は週末ということもあってかなり混雑していましたが、集合時間の21:30には皆様ご集合いただきましたので資料配布、翌日の連絡、そしてツアー全体のスケジュールと見られる鳥の解説などをしてから22:10頃から乗船開始となりました。三宅島に向かうために乗船する東海汽船「橘丸」は毎年春にアホウドリ観察ツアーで乗船しているお馴染みの船で、揺れがかなり緩和された良い船という印象があります。
12日、今回は幸いにも穏やかな航海となり、予定よりもやや早い04:55に三宅島三池港に着岸するとの船内放送がありました。三宅島には3つの港があり、東寄りの風ならば島の西側にある錆が浜港、西寄りの風ならば島の東側にある三池港となります。幸い到着時の三池港はそれほど風もなく青空が広がっているさわやかな朝でした。到着後は早速バスに乗って探鳥を開始し、早朝でないとあまりさえずらないウチヤマセンニュウを求めて移動しました。ただ現地はやや風が吹き、しばらく立っていると寒さすら感じるほどでした。ただ目的のウチヤマセンニュウのさえずりは周囲から聞かれ、複数の個体が比較的道に近いところでさえずっていました。そのため二手に分かれてそれぞれの個体を観察することにし、ほんの僅かな間隔で高いところに出てきて歌ってくれるウチヤマセンニュウを観察することができました。また風に乗って間近を飛び回るアマツバメ、子育て中なのか、せっせと餌を運ぶイソヒヨドリ、海上を眺めると無数のオオミズナギドリが乱舞していました。その後は森に移動しました。ここは一転して薄暗い森といった雰囲気のため、ウチヤマセンニュウ以外の小鳥類はほぼ生息している場所です。まずは元気よく歌うイイジマムシクイのさえずりが出迎えてくれ、さっと地面に降りて採食するアカコッコに出会うことができました。最初に見られた個体は頭が真っ黒なオスでしたが、次に見られた個体は頭が褐色がかったメスでした。また付近でさえずっていたタネコマドリもさっと地面に降りては採食行動していたことからその姿を見ることができました。ただ本来ならばよく鳴いているカラスバトの声は聞かれずどうしたことかと思いましたが、最後には大木の枝に止まる姿を見つけることができ数人だけでしたが望遠鏡でその姿を見ることができました。その後は一旦、宿に戻ってから周辺を歩いてみることにしました。林では恒例になっているイイジマムシクイのさえずりが降り注ぐように聞こえ、比較的じっとしてさえずっている個体がいたことから幸いにも望遠鏡を使って観察することができました。また途中の遊歩道上にはアカコッコが降りて採食していて、周辺の林からはアオバズクの声が聞こえてきました。中間地点まで来るとようやくモスケミソサザイが大木の横枝に止まってさえずり、一瞬でしたがサンコウチョウがヒラヒラと舞いました。湖畔では採食しているダイサギ、またオオバンの姿がありました。その後は宿にて昼食の時間とし、午後からは2時間ほど時間をとって島内一周を行いました。毎回、三宅島の噴火の歴史に詳しいガイドさんにお願いしていて、今回も三七山を見た後にひょうたん山の古い火口を見に行きました。ここでは海面を漂うアオウミガメ、間近をスイスイ飛ぶアマツバメの姿も楽しめ、その後は椎取神社、阿古小学校跡を見学しました。その後は宿のすぐそばにある施設を訪れて水場にやってくる小鳥たちを観察させていただきました。シチトウメジロ、イイジマムシクイ、ヒヨドリ、オーストンヤマガラなどが見られたほか、地面で採食するアカコッコをじっくりと観察することができました。
13日、やや風がある朝でしたが05:00から宿周辺を歩きました。早朝はカラスバトの声が聞こえたり、飛翔する姿を見ることが多いのですが、今年に限っては全く気配がありませんでした。ただ、ほんのわずかな時間、電線に止まるカラスバトの姿を見られたお客様がいらっしゃったようでした。早朝はイイジマムシクイやタネコマドリ、モスケミソサザイのさえずりは相変わらずでしたが、この日は新たにツツドリ、ホトトギスの声が加わりました。また林道では枯れ葉をひっくり返しながら餌を探すアカコッコの姿が見られました。その後は一旦朝食をいただき、その後は再び周辺を歩きました。林道の入り口ではタネコマドリがさえずっていたため観察していると、道を挟んで反対側からもう1羽が現れてなわばり争いをはじめました。お互いが警戒しながら牽制し合っていて、2羽で地上に降りて並ぶように佇んだり、歩き回ったりとさまざまな姿をしばらくの間、楽しませてくれました。また湖畔ではふいに見事な夏羽のアカガシラサギが飛び立ち、対岸を歩き回るように採食行動しはじめたことから望遠鏡を使って観察することができました。また最後にはこちらに向かってくるように飛翔してくれたことから、その姿をじっくりと見ることができました。その後はお昼に合わせるように宿に戻って昼食をとり、三池港に向かいました。橘丸乗船後は僅かな時間ながらデッキから海鳥観察を行いました。時期的にはこの航路のベストシーズンを過ぎていますが、御蔵島で繁殖しているオオミズナギドリが飛び、この航路ではほとんど見ることがないハシボソミズナギドリの小群が何回か飛びました。また距離はかなり遠かったもののクロアシアホウドリも数回出現してくれ、ザトウクジラの噴気も上がりました。そして橘丸が房総半島に差し掛かる16:45に探鳥を終了しました。ただ、東京湾に入ってからもオオミズナギドリの大きな群れが帯状に群れ、着水して採食行動する様子が見られました。
今年の三宅島ツアーは幸い好天に恵まれ、特に日曜日の日中は歩いていると汗ばむような陽気でした。印象としてはまずカラスバトの姿が少なく、アカコッコもやや出会いが少ないように思いました。一方でウチヤマセンニュウ、イイジマムシクイは例年に比べて大変に見やすく、特にイイジマムシクイはどこの林に入っても降り注ぐような見事なさえずりを聞くことができました。三宅島にはほぼ同じ時期に10年以上来ていますが、とにかく緑の回復力には驚かされます。初めて訪れた15年ほど前はむき出しになった山肌は焦げたように真っ黒で、とてもここに緑が回復するとは想像もできませんでした。今後も順調に緑が回復して野鳥たちにとって棲みやすい環境であり続けてほしいものです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史