【ツアー報告】珍鳥が渡る!春の与那国島 2018年3月28日~31日
(写真:カタグロトビ 撮影:中村裕一様)
多くのバードウォッチャーがワクワクする春の渡りの季節がやってきました。本州に住んでいると春の渡りはゴールデンウィークあたりを連想しますが、実は南西諸島では早くも春の渡りの最盛期を迎えています。そのため毎年3月中下旬には石垣島、西表島、与那国島へのツアーを企画しています。この時期の南西諸島の特長といえばまず気候が比較的過ごしやすいこと、そして離島でのバードウォッチングにありがちな大きなハズレが少ないことでしょう。今回も何かしらの珍しい種に出会える期待感を持って予定通り出発することができました。
28日、これといったトラブルもなく予定通り出発し、那覇空港を経由して石垣島に向かいました。石垣島空港ではギラギラした日差しの中、当日の午前中まで石垣島と西表島を巡るツアーを担当していた宮島仁さんと合流し、観察機材準備をしてからまずは石垣島内での探鳥に出発しました。石垣島では時間の制約があることからひとまず八重山3点セットと呼ばれているカンムリワシ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、そしてここ数年留鳥化しているカタグロトビに絞っての探鳥をしています。まずは水田に向かいカンムリワシとムラサキサギを探しました。到着すると電柱に止まっているカンムリワシの姿があり、バスを降りてじっくりと観察することができました。カンムリワシは国の特別天然記念物に指定されている鳥ですが、春は出会う頻度が高く、またそれほど警戒心がないのも特長です。その後は水路沿いで突然飛び立ったムラサキサギの成鳥を見ることができ、その後は水田でコチドリ、タカブシギ、シマアジ、セイタカシギ、そして今度はコントラストが弱いムラサキサギの幼鳥が歩く姿を観察することができました。そしてその後はサトウキビ畑でカタグロトビを探しました。到着するとヒラヒラと飛ぶカタグロトビが見られましたが光の方向が悪かったため順光側に移動することにしました。移動すると読みがピタリと当たり順光側から木に止まっているカタグロトビを見ることができました。観察しているとどこからともなくもう1羽がやってきて交尾をしたり、巣材と思われる草を咥えて飛翔する姿なども見られ、短時間ながらさまざまなシーンを見ることができました。そして陽が傾いてきた頃に合わせてズグロミゾゴイを探しました。日中にはなかなか姿を見せない鳥のため夕方に合わせて探鳥していますが、この日は雑木林の奥の小道に佇んでいたため間近にその姿を見ることができました。ただ全員で観察することができなかったため、最後にもう一箇所、付近にある牧場に向かいました。そこでは大きな虫を食べる様子をじっくりと観察すると共に付近を歩き回るシロハラクイナも観察し、リュウキュウコノハズクの声を聞きながら19:00に観察を終了しました。
29日、日の出前からホテル周辺を歩いてみることにしました。この日も朝から快晴でイソヒヨドリのさえずりが響いていました。今年は残念なことにセキレイ類、ムクドリ類の姿がなく、コチドリ、シロガシラ、アカモズなどを見ながら河口まで歩き、ここではおなじみの白いクロサギが見られ、どこからともなく飛んできたヒバリシギの群れ、飛び交うリュウキュウツバメを見てホテルに戻りました。朝食後は石垣空港から与那国島に到着しました。到着後は早速島内探鳥に出発しました。一足早く島内で探鳥している方からも情報を頂きましたが数日間快晴が続いていることから鳥の姿が少ないとのことでした。まずは集落に向かいその後は東崎に向かいました。東崎では芝生の上を見てまわりましたがこれといった成果はなく、移動しようかと思った時、遠くでホバリングしている猛禽類の姿がありました。距離があったため近づいてみると翼上面の白斑が目立つオオノスリでした。この個体は見事なまでに風に乗ってしばらくホバリングした後、どこかへ飛び去ってしまいました。その後は畑地を流しながら水田まで行き見てみることにしました。ここでも鳥の影は薄かったですが採食行動をしているクサシギの小群を見ることができました。その後は移動して毎回鳥たちの姿が多い小川を見てみました。ここではハクセキレイ、キセキレイのほか、イソシギ、そして当地ではあまり見かけないオオソリハシシギの姿があり、柵に止まったシマアカモズがじっくりその姿を見せてくれました。その後は別の水田を見てみました。ここでは幸いにも2羽のアカガシラサギの姿があり、ようやく渡りの島らしい鳥に出会うことができました。2羽ともほぼ冬羽でしたがそのうちの1羽は比較的警戒心が薄く近い距離感で観察することができました。その後は過去にヤツガシラやオオチドリが見られたポイントを巡ってみましたがその姿はなく、移動中にケリの姿を見るのみで18:00にホテルに戻りました。
30日、この日も天気が良かったことから日の出前からホテル周辺の探鳥を行ないました。早朝ということもあり心地よい風が吹いている中、周辺からはアカハラに似たシロハラのさえずりが響き、今朝渡ってきたのか小鳥の群が飛んでいました。この日は07:00から朝食をいただき08:00に出発してまずは集落方面に向かいました。この日もいきなり飛翔しているオオノスリが見られ、その後、東崎へ向いましたが同様に鳥の気配はなかったため、別の畑地を見ているとムナグロの群れがいたことからバスを止めて観察することにしました。この時期はムナグロの群れの中にオオチドリがいることがあるのですが、この群れの中にはたった1羽ながらツバメチドリの姿がありました。見ていると空中を浮遊している昆虫を捕食するフライキャッチを繰り返していました。またこの日は各所でサシバの姿が見られ渡りを感じることができました。一旦昼食の時間をとった後は溜池でコガモ、カルガモ、バン、オオバン、カイツブリを観察し、その後はツアー中1度は必ず訪れることにしている日本最西端の石碑がある西崎に向いました。ちょうどフェリーよなくにが入港する場面を見るなどして過ごし、その後は牧場経由で移動しました。水田ではオオソリハシシギがまだ滞在中で隣接する別の水田ではセイタカシギの優雅な姿が見られたほか、ウズラシギを間近に観察しました。そしてその後の移動中、道路脇の草むらから飛び立った2羽のミフウズラが見えたことからバスを止めて待っていると、可愛らしいミフウズラがひょっこり現れてバスの前を何度か行き来してくれ、その姿を間近に観察することができました。そして虹が出る中、牧場で観察し、最後に集落付近で2羽のタシギを見て観察を終了しました。
31日、この日も天候が良かったことから日の出前からホテル周辺で探鳥を行ないました。前日同様にアカハラ、シロハラの声が聞かれ、どこから渡ってきたのか50羽ほどのアトリの群れが飛び交い、付近の樹木に止まっている個体もいました。また電線に止まるミヤマガラスの姿を見て探鳥を終了しました。
さて、今年の春の与那国島は全体的に鳥の気配が薄く期待通りとはならず残念でした。石垣島もそうでしたがシギ類、セキレイ類、ムクドリ類の姿が少ないことが目立ちました。ただなんとか春の与那国島らしいオオノスリ、ツバメチドリ、アカガシラサギに出会うことができ、秋にはよく見るものの春にはほとんど見たことがないミフウズラを間近に見る幸運があり、石垣島ではカンムリワシ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、カタグロトビ、シマアジ、シロハラクイナなどに出会うことができました。毎年若干渡りのタイミングが変わることから、毎回毎回同じような成果が得られないのですが、何が見られるかわからない、予想外の出会いがあるかもしれないという離島ならではの探鳥は楽しめたのではないでしょうか。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史