【ツアー報告】ウミスズメ類のピーク!大洗~苫小牧航路 2018年3月16日~18日

(写真:エトロフウミスズメ 撮影:塚腰秀夫様)

一年を通してさまざまな海鳥たちが観察できる茨城県大洗町と北海道苫小牧市をつなぐ定期航路に乗船する海鳥観察ツアー。ツアーを企画している中では最も寒さが厳しい3月はウミスズメ類が最も多く観察できる季節です。ただ夏季に比べると海況が悪いことが多く、観察にはかなりの根気と体力を要します。今回も直前まで海況の不安がありましたが、観察を開始する土曜日の朝には海は穏やかになるとの予報でした。

16日、前日まで初夏のような暖かさでしたが、この日は一転して真冬のような寒さとなり、しかも小雨が降る中集合場所に向かうことになりました。22:30にはほぼ予定通りご集合いただけたため、資料の配布、観察に使用するトラベルイヤホンの説明、翌日の連絡を済ませ、僅かな時間ながら今回観察される可能性が高いウミスズメ類の一般的な識別方法、そして個々の種の識別ポイントを解説してから乗船しました。

17日、この日は日の出よりもやや遅い時間に探鳥を開始し、やや荒れ模様だったため、時折海水が吹き上がっていました。天候は晴れでしたがデッキ上の気温は低く3月航路らしい寒さでした。この時間はミツユビカモメが大量に飛び、風に乗ってオオミズナギドリが飛んでいました。その後、波が穏やかになったこともあり着水しているウトウの姿が目立ちました。ウトウは早くも嘴が橙色になり、顔には白い飾り羽が出ている夏羽個体がほとんどでした。その後は数羽のハシボソミズナギドリが飛び、着水しているウミスズメの小群が次々に飛び立って行く様子が見られるようになってきました。その後はシロエリオオハムが飛び、着水しているハシブトウミガラスの姿が多数観察できました。陸地に近い場所ではウミネコ、カモメ、セグロカモメ、オオセグロカモメといったカモメ類の乱舞が見られ、お昼過ぎには気温も4℃まで上がり青空が広がってきていました。この辺りからは波が穏やかになっていたことから着水しているハシブトウミガラスが何度も見られ、中にはバタバタと羽ばたきながら水面を走るように逃げる個体、珍しく15羽ほどの群れで飛翔する姿も見られました。その後はようやく塊状の群れで波間を飛翔するエトロフウミスズメの群れが登場し、ここから30分ほどの間に50~100羽程度のエトロフウミスズメの群れが連続して出現し、塊状の群れで飛翔と着水を繰り返す独特の行動を堪能することができました。その後は勢いよくしぶきを上げながらスイスイと滑るように泳ぐイシイルカの群れが現れ、再びハシボソミズナギドリが飛び、着水していたコアホウドリが舞い上がり見事な飛翔を見せてくれました。その後は一旦、エトロフウミスズメの出現が止まってしまいましたが、夕方になりようやく数百羽のエトロフウミスズメの群れが飛翔し、形を変えながらうごめくような大群の姿をようやく見ることができました。その後も連続して50羽程度のエトロフウミスズメの群れがいくつも出現し、着水と飛翔を繰り返す独特の行動を楽しむことができました。その後はエトロフウミスズメに変わってコウミスズメが見られるようになり、船体脇から飛び立って離れるように飛び去って行く様子が何回も見られました。そして最後にはこの時期には珍しいクロアシアホウドリが飛び、周囲が薄暗くなってきた頃に観察を終了しました。夕方からは比較的鳥の出現があり忙しかったですが、寒さはかなり厳しく体中がしっかりと冷え切っていました。

18日、早朝は意外にも強風でうねりがあり残念ながらエトロフウミスズメの群れは見られず、マッコウクジラのブローが見られたのみでした。ただ、ようやく2羽のハシブトウミガラスが船体を横切るように飛翔し、その後は着水しているハシブトウミガラスが連続して観察できました。ふと見ると遠くの山々は雪景色で完全に冬の風景でとにかく寒々しい朝でした。その後はこの時期には珍しいザトウクジラのブローが間近に上がり、最後は尾ビレを立てて潜水していく姿を見る幸運がありました。またクロアシアホウドリが飛び、海が穏やかになってきたことから着水しているハシブトウミガラス、ウトウの数が目立ってきました。その後はようやく10羽ほどのエトロフウミスズメの小群が飛び、気がつくと視界のどこを見てもウミスズメという状況になっていました。ほとんどが10羽程度の群れですが、中には30羽ほどの群れが1列に並んで着水している様子も観察できました。また潜水した個体が泳いでいる姿を見る機会もあり、ウミスズメのさまざまな姿をしばらくの間観察することができました。その後はアカエリカイツブリが飛び立ち、いよいよオオミズナギドリの姿が目立ってきました。その後は再び風が強まる中、数羽のハシボソミズナギドリ、オオミズナギドリ、ミツユビカモメが飛び交い、ヒレを動かしながら休憩しているキタオットセイが見られました。その後は着水しているオオオミズナギドリの群れ、そして各所に散らばって浮いているウトウの姿が多くなり、キタオットセイの数が一気に増し、中には10頭以上の群れで浮いている姿を見る機会もありました。ただその後はさらに風が強まり波間から飛び立って行くシロエリオオハムが目だってきていました。結局この日はたった1日の中で風の強さが小刻みに変化する忙しい1日でした。

一年を通してさまざまな海鳥が観察できるこの大洗~苫小牧航路。私的な乗船を含めると早いものでもう25年ほどのお付き合いになりました。一昔前はそれほど情報が無かったことからどのような種がいつごろ見られるかよくわからずに乗船していましたが、長年のデータ収集と友人たちのご協力もあり、だいたいいつごろにどのような種が見られるかがわかってきました。中でもこの3月中下旬はウミスズメ類がなぜか見やすくなり、また厳冬期にはほとんど見ることができないエトロフウミスズメが大きな群れを形成すること、またコウミスズメがある一定の海域で比較的見られることからツアー設定するようになりました。今回はほぼ思っていた海域で期待していた種に出会えて幸いでした。またマッコウクジラ、ザトウクジラ、イシイルカ、キタオットセイなどもツアーを盛り上げてくれ、航路探鳥の面白さが凝縮されていたと思いました。またの機会、さまざまな海鳥を観察にお出かけください。この度はお疲れ様でした。

石田光史

【※】諸般の事情により詳細な出現状況をウェブサイト上では公表しないことといたしました。ご了承ください。

ザトウクジラ 撮影:須崎明男様

 

ハシブトウミガラス 撮影:塚腰秀夫様

 

エトロフウミスズメ 撮影:須崎明男様

 

シロエリオオハム 撮影:須崎明男様

 

ウトウ 撮影:須崎明男様

 

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