【ツアー報告】九州縦断 出水と有明海 2018年2月1日~3日
(写真:クロツラヘラサギ 撮影:内田将司様)
毎冬恒例のツアーはいくつかありますが、冬の道東と並んで人気が高いのがこの冬の九州です。北海道同様に九州にはここならではの野鳥たちが数多く越冬し、またそれらの中の多くが世界的希少種であるという点も見逃せません。メインとなるのは世界最大のツルの越冬地として知られる鹿児島県の出水平野と広大な干潟が広がる有明海の干潟です。言うまでもなくどこでも見られる光景ではなく、これぞ冬の九州といった感じなのですが、有明海の干潟はあまりに広大なため、ある一定の潮位を満たしている日の僅かな時間に合わせて訪れないと、せっかくの鳥たちが数百メートル先といった状況になってしまいます。また途中に訪れる河口も同様にタイミングが重要で、それを逸すると遥か彼方の鳥たちしか見られないということになってしまいます。我々のツアーでは慎重に日程を設定し、まさにジャストタイミングで訪れられるようにしています。
1日、当日は鹿児島県に雪予報が出ていたこともあり、前日から利用機材の運行が心配でした。案の定、当日は天候調査がかかりどうなることかと心配になりましたが早朝に鹿児島空港に向かう飛行機が無事に飛んでいるとのことで、ひとまずご集合いただいた後は荷物を預けていただき保安検査場に進んでいただきました。ホテルに問い合わせると雪ではなく小雨だということでほっとしていると、いつのまにか利用機材は通常運行に変わっていました。結局、予定通り鹿児島空港に到着することができ、小雨が降る中、ますは貯水池に向かいました。まだ小雨は降っていましたがそれほど気になるほどでもなく、早速間近に佇む20個体ほどのクロツラヘラサギの群れを観察することができました。日中はほとんど動きがない鳥ですが、この日は小雨だったこともあり羽繕いをするなど時々動きがあり、飛翔する個体も見られました。ただ今年は各地でカモ類が少ない傾向があり、ここでもツクシガモはしっかり見られたものの、それ以外のカモ類はキンクロハジロ、ホシハジロ、コガモなどが少数見られた程度でした。しかしここではヨシ原内に群れる20羽ほどのツリスガラの群れに出会う幸運があり、オオジュリンと共に採食する姿を観察することができました。その後はトイレ休憩をとり、次のポイントに向かいました。幸い到着と同時に雨は上がり、そのせいかツバメが乱舞していました。実はここではヤマセミを狙っていたのですが、驚いたことに川辺に出るといきなり我々の目の前をヤマセミがスイスイと飛んでいきました。周辺ではキセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイが見られたほか、イカルチドリ、イソシギがせっせと採食していました。ヤマセミが帰ってくる気配が無かったことから周辺をめぐると、別の場所で川辺の木に止まるヤマセミの姿が見つかったためしばらくの間、望遠鏡を使って観察することができました。気がつくと空は青空が広がり、最高のタイミングで雨が上がってくれました。途中、バスの窓から無数のツルたちの姿が見られ、到着後は基本種のナベヅルとマナヅル、そして電線に止まるミヤマガラスの姿を見ることができました。そしてこの日の最後には干拓地に行って見ましたがこの日はツルたちがいる場所がかなり遠く、ようやく望遠鏡でカナダヅルとクロヅルを発見しましたが、あまりにも距離が遠く残念でした。
2日、この日は朝食前にホテルを出て日の出前から早朝のツルたちの姿を観察に出かけました。はじめは塒に固まっていたツルたちが日の出に合わせるように動き出し、餌場にやってきました。昨日は遠くに見えたクロヅルが間近に見られましたが、カナダヅルは今年はなかなかいい場所にはやってきてくれませんでした。一旦朝食に戻った後は再び出水平野に向かい、まずはミヤマガラスの群れを観察しました。数百羽の群れは地上で採食しながら移動し、時には電線に群れていました。ミヤマガラスがいればだいたいコクマルガラスがいることから探してみましたが、意外にもその数は少なく、幼鳥個体が僅かに見られたのみでした。ただ周辺にある牛舎付近にはホシムクドリが群れ、木に止まったり、地上で採食したりして間近にその姿を堪能することができました。そして最後は再び干拓地に向かいカナダヅルを探しましたが、やはり距離感が変わりなかったので、バスを近くに停車させてバスの中から観察、撮影をして観察を終了しました。この後は1時間強移動して別のポイントに向かいました。到着時はまだまだ潮位が高かったことからまずは各自昼食をとっていただき、その後13:00から観察を開始しました。海面に出た杭の上にはダイゼンが佇み、周囲にはニュウナイスズメが群れていました。また遠くの電線には綺麗に並んだアトリの群れが見られ、小鳥を狙ってかチョウゲンボウが飛んでいました。少しずつ潮位が下がっていくと各所からセグロカモメが集まりだし、どこからともなく3羽のクロツラヘラサギが干潟めがけて飛んできました。また潮位がかなり下がり干潟が現れ始めるとシギ類も集まりだし、ハマシギ、シロチドリ、ダイゼン、ダイシャクシギなどが見られ、驚いたことにミヤマガラスの群れも干潟で採食していました。ただ、期待していたズグロカモメが1羽も現れず残念でした。その後はさらに北上して干拓地に立ち寄りました。ここでは過去にナベヅルとマナヅルが少数見られましたがここ数年はほとんどその姿を見ることがなくなりましたが、ホシムクドリの群れが見られるため立ち寄るようになりました。まずはトイレ休憩をとってから干拓地に向かいましたが、いきなり電線に止まる2羽のカササギが見られ、バスの中からでしたがじっくりとその姿を見ることができました。干拓地内のポイントでは水路にクロツラヘラサギの姿があり、木々に止まるホシムクドリの群れ、電柱に止まるチョウゲンボウなどが見られ、この日の探鳥を終了しました。
3日、この日の夕方から九州地方は天候が崩れるとのことで心配でしたが、穏やかな朝を迎えることができました。朝食後はやや時間があったことからホテルから僅かな距離にある場所で探鳥しました。ここも同様にカモ類の姿は少なく、代わって複数のタゲリ、アオアシシギが楽しませてくれました。カモ類はほとんどがヒドリガモ、マガモ、カルガモでしたが、遠くに群れるヨシガモの姿もありました。その後はいよいよこのツアーのもう一つのメイン探鳥地である有明海の干潟に向かいました。到着時はまだまだ潮位が低いことからまずは公園内を歩きました。公園内ではいきなり「カシャッ、カシャッ」というカササギの声が聞かれ、2羽のカササギが地面を歩くなどしてその姿を楽しませてくれました。またムクドリの群れに混じる1羽のホシムクドリ、地面採食するシロハラ、針葉樹にはキクイタダキの姿がありました。干潟を一望できる場所までくるとその広大さに歓声が上がっていました。その後は干潟まで歩き、佇むクロツラヘラサギの群れ、ハマシギ、ダイゼン、ダイシャクシギ、波打ち際で採食しているツクシガモの群れなどを観察しました。この日は昼前に満潮に達することからその1時間半ほど前から観察を始めたのですが、みるみるうちに潮位が高くなり、はじめは遠くに群れていたハマシギやダイゼン、ダイシャクシギが時間を追うごとに目の前にやってきてくれ、どこからともなくミヤコドリの群れもやってきてくれました。シギたちが近くにやってきてくれたことからその中に混じっていたシロチドリ、メダイチドリ、トウネン、普段は淡水域で見ることが多いツルシギやオオハシシギ、アカアシシギなどを見つけることもできました。またダイシャクシギに混じるホウロクシギ、チュウシャクシギも最後は間近に観察することができ、昨日見ることができなかったズグロカモメに関しても乱舞する様子や干潟に降りている姿などさまざまな姿を観察することができました。ただ潮位が満潮になった頃からは西の空が曇り始め、冷たい強風が吹き始めました。その後はバスに戻って昼食の時間としましたが、強風に乗って小雪が舞ってきたため少々早く出発し、通行止めの可能性がある峠越えルートは回避して高速道路を経由して福岡県に向かいました。このツアー最後の探鳥地は今津湾に面した河口です。ここでは強風の中での探鳥となってしまい寒さが厳しい状況でしたが、ヨシ原内からはツリスガラの声が聞こえていました。ただ風が強いせいかなかなか姿を見せてはくれませんでした。堤防を上がるとさらに寒さが堪えましたが、中州にはツクシガモの群が見られ見事な色合いが楽しめました。また当地ではすっかりおなじみとなっているミサゴの飛翔が見られました。翌日から九州地方は再び雪予報とのことで良いタイミングで訪れることができた3日間でした。
さて今回は初日に小雨に降られましたがほぼ予定通り探鳥をすることができ3日間で93種の鳥たちに出会うことができました。出水では4種類のツルのほか、コクマルガラスやホシムクドリ、もう一つのメイン探鳥地である有明海の干潟では、ツクシガモ、ズグロカモメ、クロツラヘラサギをはじめ、ダイシャクシギ、ホウロクシギ、ミヤコドリ、ダイゼン、ツルシギ、アカアシシギ、オオハシシギなどさまざまなシギチドリ類を間近に見ることができました。この2大探鳥地はまさに圧巻でその規模は言うまでもなくほかでは見ることができない風景です。この圧倒されるような光景がいつまでも見られればといつも思います。この度はお疲れ様でした。
石田光史