【ツアー報告】冬の道南巡り 2018年1月13日~15日
(写真:ヒレンジャクとキレンジャク 撮影:大坪昭允様)
年間を通して北海道へのツアーはさまざま企画していますが、1月恒例となっているのが苫小牧から噴火湾沿いに南下して大沼まで巡る冬の道南です。人気のある冬の道東ではシマフクロウ、タンチョウ、オオワシ、オジロワシといった大型種が中心ですが、この道南ではそれに比べると小鳥類とカモ類が観察できる頻度が高いことが特長でしょう。ただ冬の小鳥類に関しては毎年渡来状況が激変するため安定感はありません。ただ、この冬は各地で冬の小鳥類が比較的多く観察されていることから少々期待しての出発となりました。ただ出発直前に函館でかなりの積雪があったとのことでした。
13日、早朝から快晴の中、ご集合いただき、予定通りに到着することができました。バスに乗るために外に出るとすっきりとした快晴で、風もなかったことから暖かな印象がありました。ひとまず出発しましたが直前に函館方面でかなりの積雪があったことから、最終日の林での小鳥類の探鳥が厳しいと判断し、この日は海岸での探鳥予定を変更して小鳥類を狙うことにしました。到着後は澄み切った冬空の下、ゆっくりと歩き出しました。まずはハシブトガラとヤマガラが愛想良く現れ、数羽のウソが餌をついばんでいました。すると驚いたことに数羽のシマエナガが現れて樹液を飲んでいました。あまり見かけない上に人気のある鳥のためとても印象的な出会いでした。雪を踏みながらさらに奥に進むと池にはメスのホオジロガモがいて間近にその姿を見せてくれました。またハシブトガラ、シジュウカラ、シロハラゴジュウカラといったお馴染みの顔ぶれが我々を追うように何度も何度もその姿を楽しませてくれました。その後はよくエゾフクロウが見られている場所まで行ってみると幸運にもその姿を見ることができました。ただ長時間の観察は禁物のため、距離を詰めず、10分ほどの観察でその場を離れました。今後もずっとこの場所でエゾフクロウに出会えればと思いました。帰り道でもハシブトガラやシロハラゴジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラといった顔ぶれが登場し、最後の最後ではまたまたシマエナガが現われて間近にその姿を観察する幸運がありました。その後は1時間ほどかけて移動しました。本来ならば寒風吹きさらす極めて寒い探鳥地ですが、この日は風がなかったことから拍子抜けするほどでした。漁港では残念ながらカモ類の数が少なかったですが、コガモ、ヒドリガモ、ホシハジロ、スズガモ、クロガモが見られ、シノリガモはその際立った美しさで楽しませてくれました。そして最後は猛禽類を狙いましたが残念ながら登場がなく、思い切って別の場所に移動するとようやくヒラヒラと舞うコミミズクを夕景の中で観察することができ、この日の探鳥を終了しました。とにかく快晴無風の穏やかな1日でした。
14日、快晴の空を見ながら朝食をいただき、その後はひたすら南下して函館方面に移動しました。途中休憩は挟んで約1時間半ほどで到着した現地はやはり快晴で雪景色と青空が見事なコントラストでした。まずはオオワシとオジロワシを探して川沿いを走りましたが、前日夜に積雪があったらしく思いのほか雪が積もっていました。ある場所まで来ると木々に止まるワシたちが間近に見えたためバスを止めて観察しました。道東方面のように個体数は多くはないですが、オジロワシの亜成鳥が3羽、そして見事な色彩のオオワシの成鳥が2羽止まっていました。しばらく観察しているとどこからかオオワシの亜成鳥が1羽やってきましたが成鳥に追い払われていました。また「カッ、カッ、カッ」という声を出しながら鳴き交わす様子も観察することができました。その後は一旦場所を変えて観察することにし、幸いにも青空を背景に飛翔するオオワシ、オジロワシが見られ、川ではオオハクチョウ、カワアイサ、また潜水して餌を探すカワガラスを見ることができました。また河口では同様にオオワシ、オジロワシがさらに間近に見られ、コガモの群れやユリカモメ、海上ではホオジロガモ、カワアイサ、クロガモの姿を見ることができました。その後は移動して昼食をいただき、昼食後は周辺の松林を散策してみましたがシメを観察するに留まりました。その後は周辺にある漁港を巡りました。漁港ではスズガモの姿が目立ったほか、シノリガモ、ホオジロガモが見られ、堤防にズラリと並んだオオセグロカモメの中から冬の北海道の定番であるワシカモメとシロカモメを探しました。また数羽ながらセグロカモメの姿もありました。陽が傾いてくる中、バスにて移動していると周辺の木々に止まるレンジャク類の群れがいたことから観察すると、我々にとっては比較的馴染み深いヒレンジャクの中にキレンジャクが混じっていたことから幸運な出会いとなりました。東北、北海道では主にキレンジャクが多いということは知られていますが、この道南では昨年もヒレンジャクの群れが見られていることから、必ずしもキレンジャクが多いとは言い切れないようです。そして最後は薄暗くなる中、飛翔するオジロワシや工場に群がるカモメ類の大乱舞に圧倒されてこの日を終了しました。
15日、前日の天気予報ははっきりしない中、07:00から朝食をいただきましたが空は思ったほど暗くはなく期待がもてるような状況でした。朝食後は1時間ほど走って海岸に向かいました。ここでは岩礁海岸に多く生息するコクガンを探しました。最初のポイントではいきなり数羽のコクガンが飛んではきましたが、残念ながら間近に着水することなく飛び去ってしまったため、別の場所に行ってみることにしました。この頃からは小雨模様になってしまいましたが、次の場所では岩礁で採食する4羽のコクガンの姿を見ることができ、しばらくバス車内から観察しているとみるみるうちに近づいてきてくれました。さらにトイレ休憩のために立ち寄った場所の前の岩礁でも2羽のコクガンを間近に観察することができ、付近ではかなりの数のウミアイサが群れ、ホオジロガモも群れていました。今回は九州からご参加いただいたお客様もいらっしゃったため、こういった海ガモ類やカモメ類がじっくり観察できて幸いでした。その後は僅かに時間があったことから過去に冬の小鳥類が観察できた場所を時間いっぱい巡ってみました。ただ思った以上に雨が強まり、なかなか小鳥類を探せる状況でははりませんでした。ただこの日も別の場所でヒレンジャクの群れが見られ、最後は湖畔で大量のマガモの群れに混じるミコアイサの姿を観察して探鳥を終了しました。
今回は最終日に冬の北海道ではほぼあり得ない雨が降りましたが、2日間は過去の状況からは考えられない快晴無風だったことが何より印象的でした。期待していたいくつかの種には出会えませんでしたが、オオワシ、オジロワシ、エゾフクロウ、コミミズクが見られ、森林では人気のあるシマエナガのほか、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、冬鳥のキレンジャク、ヒレンジャク、ウソ、海岸ではコクガンをはじめ、シノリガモ、クロガモ、ホオジロガモ、ウミアイサなどが楽しませてくれました。冬鳥観察は飛来状況によって成果が変わるためなかなか難しい部分がありますが、今冬は比較的冬鳥の渡来状況が良かったことに加え、晴天のおかげで楽しめたように感じました。この度はお疲れ様でした。
石田光史