【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2017年12月9日~10日
(写真:ハクガン)
晩秋から初冬にかけて絶対に外せない探鳥地がこの伊豆沼周辺でしょう。ほかではなかなか見ることができないカリガネをはじめ、シジュウカラガン、ハクガンなどガン類が短期間で5種見られるほか、圧倒されるようなガン類の大群見られ、ここ数年は最大数が約13万羽と言われています。まずこれだけの数のガン類が越冬しているということだけでも驚異的なのですが、各所で見ることができるガン類の大群が織りなす光景はさらに驚異的かつ感動的です。今回は11月に引き続いて今季2回目のツアーですが、今回は2日間とやや短い日程で巡ります。幸い、天気予報も問題なく出発日を迎えることができました。
9日、朝から快晴の東京駅を予定通りに出発して現地までやってきました。ここでは現地集合のお客様と合流してから一旦ホテルに向かいました。天気は良かったのですが一部に雪雲がかかり、ホテルに向かう途中には小雪が流れてくる場面もありました。ホテル到着後は各自観察機材の準備をしていただいてから出発しました。今回訪れる伊豆沼周辺は広大な農耕地が広がる探鳥地のため、ガン類がどこに降りて採食しているかはあらかじめ分からないため、とにかくひたすら探さなくてはならず、また駐車場のようなものがほとんどないことから募集人員を7名様限定として小型車で巡っています。こうすることによって細い道に入って探すことができ、場合によっては車内から観察、撮影も可能となります。さらに細い道にバスを路上駐車すると迷惑行為となってしまいますが、こういった心配もなく観察に集中できるのです。この日はまず伊豆沼南側の観察舎に向かいました。強風だったせいか日中からマガンの群れに動きがあり、意外にも湖面に大きな群れが着水していました。風が強く寒さが厳しかったことから建物内から観察することにし、湖面を眺めてみると比較的大きなマガンの群れが見られ、ほかにもカワアイサ、ミコアイサ、ホオジロガモ、そしてヒシクイの姿もありました。その後は目的のガン類5種のうちの1種、カリガネを探して移動しました。まずはトイレ休憩をしてから過去に観察したことがある場所を巡り、車内から地上採食しているマガンの群れを片っ端から見ていきました。この日はなかなか見つかりませんでしたが、ようやく8羽で固まっているカリガネの群れを見つけることができたため、順光側に回り込んで望遠鏡を使って観察することができました。カリガネはマガンに似ているため見つけることが難しいのですが、額の白色部の面積の大きさや頭の形、また嘴の色の違いや金色のアイリングを見ることでマガンとの違いに気が付きます。よく見るとこのマガンの群れの中にはさらに多くのカリガネの姿があり、結局15個体ほどを見ることができました。その後は見る見る傾いていく夕陽を見ながら塒入りポイントに向かいました。この日は見事な夕景といえるような状況ではありませんでしたが16:00を過ぎた頃からガン類が続々と飛んできました。たまたま我々に近い側の湖面にガンたちが降りてくれたことから鳥までの距離も近く、観察しているとマガンのほかのシジュウカラガンもかなりの数がやってきて湖面に着水してくれました。気が付くと空には大きなⅤ字を描くガンたちの群れが幾重にも連なり、美しく、そしてどこか懐かしい風景を描き出していました。そして薄暗くなった頃にはハクガンの幼鳥が1羽、さらに成鳥が2羽やってきてくれたため初日にしてガン類5種を全て観察するという幸運がありました。遠くの山々には厚い雪雲がかかり、体の芯から冷えるようなとにかく寒さが厳しい1日でした。
10日、この日は06:00に出発して日の出を見に行きました。天気予報では曇りとのことであまり期待していませんでしたが、空は明るくなってきていて東側の空には雲はあるものの空が開き、赤く染まってきていました。現地ではそれほど寒さを感じることもなく日の出を待ちました。結局、綺麗な日の出を見ることはできませんでしたが橙色に染まった空を背景に群れ飛ぶマガンたちの姿を見ることができたほか、各塒から飛び立たったマガンたちが夕方同様に編隊を組みながら餌場に向かっていく光景も見ることができました。一旦朝食に戻った後は、再び探鳥に出かけました。この日はまずカケスが飛び交い、50羽ほどのマヒワの群れも見られました。またマヒワが止まった木を見ているとじっとしているアオゲラ、さらにはアカゲラも見られました。また池にはカワセミの姿があり、湖面にはヨシガモ、カワアイサ、ホオジロガモ、ミコアイサの姿もありました。その後はシジュウカラガンの群れを探すことにしました。いつもの間にか青空が広がる中、広大な農耕地を巡るといくつかのマガン、オオハクチョウの群れが見られ、この日はかなりの数のマガンの群れの中に混じって地上採食しているシジュウカラガンの姿を見ることができました。残念ながらシジュウカラガンだけの大きな群れではありませんでしたが、それでもよく見てみるとかなりの数のシジュウカラガンの姿がありました。その後は一旦トイレ休憩をとって、いよいよハクガンを探しました。今回はそれほどマガンの群れが見られず心配でしたが、とある場所にあった水たまりを見てみるとオオハクチョウとマガン、コハクチョウが混じり合って採食しており、ひとまずその群れを双眼鏡で見てみると幸いにも2羽のハクガンの姿がありました。1羽はやや灰色みのある幼鳥、もう1羽は純白の成鳥でした。しばらく観察していると一旦飛んでしまいましたが、また同じ場所に戻ってきたことから、方向をやや変えて望遠鏡を使ってじっくり観察することができました。その後は一旦、昼食の時間としてから水田を歩きました。まだまだ明るい時間帯でしたがこの日もマガンの群れが右往左往していました。ここでは沼地に群れているヒシクイの姿を間近に観察することができ、よく見るとタゲリ、ハマシギが採食していました。そしてしばらく観察していると水中に入れた嘴を左右に振りながら歩き、独特の採食行動をしているヘラサギが現れました。伊豆沼周辺では時々見ることがありますが意外な出会いがありました。その後は再びトイレ休憩をとってから昨日同様に塒入りポイントに向かうことにしましたが、たまたま電線に止まっている美しいオスのコチョウゲンボウを見ることができました。この日は日中の天気が回復したことから期待されましたが、夕方は残念ながら西の空に厚い雲がかかってしまい空が焼けることはありませんでした。ただガンたちは見る見るうちに集まり昨日同様見事な光景を見せてくれました。
毎年、晩秋から初冬にかけて恒例となっている伊豆沼ツアー。今回も幸い好天の中、目的としていたガン類5種に出会うことができました。またこのツアーの目玉となっている朝と夕に見られるガンたちが織りなす見事な光景も堪能することができました。もう長い年月、この地には通っていますが、越冬するガンたちの個体数の増え方は予想以上で、さすがにこのままで大丈夫なのかちょっと心配になってしまうほどです。ただ今回見たガンたちとこの環境が織りなす風景がいつまでも見られることを祈りたいものです。この度はお疲れ様でした。
石田光史