【ツアー報告】紅葉の戸隠高原でムギマキに会いたい! 2017年10月24日~25日

(写真:ムギマキ 撮影:宅間保隆様)

秋恒例となっている戸隠高原を訪れるツアー。私が担当するツアーとしては最も長い間担当しているツアーで、探鳥地としても特に好きな場所です。この時期は冬鳥たちがやってくるには少々早いのですが、この時期はほんの僅かな期間だけ滞在する旅鳥に狙いを定めているためやや中途半端な時期設定となっています。秋の戸隠高原ツアーは小鳥探しであると共に木の実探しでもあり、その年その年で鳥たちがやってくる木の実が違ったりしておもしろいものです。また鳥だけでなくその風景の美しさも忘れてはならないでしょう。黄金色に紅葉したカラマツをはじめ、さまざまに彩られた紅葉が楽しめます。それから春に比べてひっそりとした落ち着いた雰囲気であることも秋の戸隠の魅力でしょう。今回は台風21号が去って行ったタイミングで出発することができ、ほっと一安心でしたが25日の天気予報が直前に悪いほうに変わってしまいました。

 24日、新幹線で快晴の東京駅を出発し、1時間半ほどで長野駅に到着。長野駅では現地集合のお客様と合流してまずは今回お世話になるホテルに向かいました。約1時間ほど走るバスの車窓からは台風によって葉を落としてしまった木々が目立つものの、なんとか紅葉を見ることができました。ホテル到着後は一旦お部屋に入っていただき各自昼食として、その後13:00から探鳥としました。出発時には見事な戸隠山が見えましたがやや雲が多くなってきていました。メイン探鳥地はちょうど観光客がピークを迎える時間のため、まずはバスにて別の場所に向かいました。川沿いに歩くとセグロセキレイの姿があり、その後は過去に小鳥類が見られた木の実のある場所を丹念に見て行きました。最初の場所ではツルマサキを食べにやってきていたコガラ、ゴジュウカラが見られ、早くも渡ってきていたツグミの群れが飛び交っていました。この時期のツグミの群れにはさまざまな種が混じっていることが多いのですが、この群れはどうやらツグミだけのようでした。さらに歩くと木の実は豊富にあるのですが小鳥たちの姿はなく、いよいよ昨年多くの小鳥たちが見られた場所に到着しました。数本の木を見ましたがここでも小鳥たちの姿がなく残念に思っていると、一番奥のツルマサキにやってきているムギマキのオスが見られました。頻繁に木の実にやってきてないようであまりじっくりとは見ることができませんでしたが、最終的にはジョウビタキのオスと共にミズキの実を食べにやってきたところを望遠鏡で見ることができました。黒色と橙色のコントラストが美しいオス個体は秋にはあまり見かけないだけに、いきなり出会うことができて幸運でした。また帰り間際には川べりで2羽のカワガラスを見ることもできました。その後は移動して、この秋によく小鳥類が見られているという場所に行ってみました。この場所も毎年のようによく小鳥たちがやってきていますが、たまたま昨年はあまり鳥の姿はありませんでした。ただ今年はいきなり数羽のメジロとアトリの姿があり、複数のムギマキが入れ替わりでやってきてはミズキの実をついばんでいました。観察しているとオス個体が2羽、その他、メスと思われる個体も2羽ほど見られ、最後にはマミチャジナイのオスが2羽、アカハラまでやってきてくれ、思いのほかあっさりと主役の2種を観察することができました。

 25日、深夜から降りだした雨は次第に雨足を強め、早朝には激しい降り方になっていました。そのため06:30から予定していた早朝探鳥は中止とし、07:30から朝食、08:30出発の予定も30分ほど繰り下げて09:00出発としました。朝食後にレストランに残っていたお客様と外を眺めていると、アトリやツグミの群れやカケスが見られ、激しい雨の中、アカハラとシロハラが並んで木に止まっている姿が見られました。ただ残念ながら出発時にも雨足が強かったことから屋根のある場所から観察することにしました。雨のため鳥たちの動きはほとんどありませんでしたが草むらに隠れていたカシラダカ、ホオジロ、アオジといったホオジロ類が時より顔を見せてくれ、渡ってきたばかりと思われるツグミの群れや「ツィー」と鳴きながら飛び、大型ツグミ類の姿がありました。また林では複数個体のアオゲラの姿が見られ、僅かな時間ながらキバシリの姿もありました。この日は午後から雨が止むだろうとのことで通常よりも1時間ほど早い12:00からこのツアーではすっかりおなじみになっている新蕎麦をいただき13:00再出発としました。すると予想通りに雨は小降りになり、みるみる雲が晴れてきて見事な戸隠山や雪を被った高妻山が見えてきました。そして再出発時には幸運にも雨は止んでいました。早速、昨日小鳥たちが集まっていた場所に行くと雨上がりということもあってか小鳥たちの動きは良く、昨日は見られなかったシジュウカラやコゲラ、ゴジュウカラも見られました。この日はムギマキはやや減った感じがありましたがオス、メス共にやってきてくれ、時よりホバリングを交えながら巧みな飛翔をして木の実をついばんでいました。逆にマミチャジナイは増えたような感じで同時に数羽がやってきては次々に木の実を食べていました。またキビタキのメスやシロハラ、驚いたことにはクロツグミのオスが何度かやってきては木の実を食べていました。春の戸隠高原では主役級でありながら定番中の定番種ですが、秋のツアーで観察したのは初めてだったと思います。また1時間ほど森林内を歩き、オオルリのメスや群れで飛び回ってはハンノキに止まるマヒワの群れなども見ることができました。悪天候の影響から予定通りの行動がほぼできず、特に毎回恒例となっている鏡池を訪れることも足場の悪さを考慮して断念しましたが、なんとか目的の旅鳥2種を2日間に渡って複数個体観察できたことは幸運でした。

 すっかりお馴染みになっている戸隠高原ですが、今回は悪天候の影響から行動範囲を狭める判断をいたしました。結果として戸隠高原の秋を象徴する鏡池の紅葉を見にいけず残念でした。ただその分をムギマキとマミチャジナイ観察の時間に充てましたのでいつもよりはじっくりと観察することができたように思いました。年によっては全く見られないこともあるこの2種ですが、今回は訪れるタイミングが良かったことからムギマキは複数個体を見ることができ、特に黒色と橙色のコントラストが美しいオス個体も複数見ることができました。またマミチャジナイも複数個体を同時に観察するなど幸運でした。他にもこれから渡って行くであろうキビタキ、オオルリ、そしてクロツグミなども見ることができ、秋らしいバードウォッチングであったと思います。次回はミズバショウやカタクリ、リュウキンカなどが咲き乱れる春に企画しております。美しい野鳥たちの姿はもちろん、早朝のコーラスなどもお楽しみいただければと思います。この度はお疲れ様でした。

 石田光史

ムギマキ 撮影:稲田貢様

 

マミチャジナイ 撮影:宅間保隆様

 

カワガラス 撮影:稲田貢様

 

クロツグミ 撮影:宅間保隆様

 

アカハラ 撮影:稲田貢様

 

ムギマキ 撮影:宅間保隆様

 

マミチャジナイ 撮影:稲田貢様

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