【ツアー報告】6月の大洗~苫小牧航路 2017年6月16日~18日

(写真:オオトウゾクカモメ 撮影:坂東俊輝様)

海鳥たちの北上期に合わせて企画している恒例の6月大洗~苫小牧航路。5月のように規模が大きい大群を見る機会が少ないため、ベストシーズンではなく準ベストシーズンと謳っていますが、ほぼこの航路のベストシーズンと言ってよいでしょう。言うまでもなく冬鳥は見られませんが、この航路で観察可能な海鳥たちのほとんどに出会う可能性があるだけでなく、アホウドリ、オオトウゾクカモメ、コシジロウミツバメ、ハイイロウミツバメにも期待できます。ただ今回は天気予報は申し分なかったのですが、海況は終始ベタ凪予報のため海鳥たちが乱舞する様子に期待が持てない可能性が高い中での出港となりました。

 16日、予定通り22:30に集合が完了したことから資料配布、翌日の案内、トラベルイヤホンのチェックなどを済ませてから乗船しました。

17日、通常は08:00の金華山沖からの観察ですが、6月は海鳥の出現が金華山沖のやや手前からであることが多いため07:00からとしました。一応、念のため06:30頃に順光側の左デッキに出ると早くもオオミズナギドリ、コアホウドリ、クロアシアホウドリが飛んでいました。天候は晴れで風も弱く、デッキ上の温度計は21℃でした。この時間帯はほとんど途切れることなくオオミズナギドリが飛び、コアホウドリの姿も目立ちました。07:15には早くも20羽ほどのクロアシアホウドリの群れがいくつか着水していて、それらが一斉に飛び立つシーンが見らえました。また網を引いている漁船がいたことから多くのウミネコが飛んでいました。また漁船付近ではオオミズナギドリも採食していて、一緒にカマイルカの群れも見られました。07:30には海上はかなりベタ凪となり、着水しているシロエリオオハム、ウトウの姿が見られ、08:30には再びオオミズナギドリとカマイルカが採食していました。09:10には10羽ほどのクロアシアホウドリが点々と着水しており、10:15頃からは水面がきれいだったことから小群で着水している冬羽に換羽中のカンムリウミスズメが見られました。7月にはよく見かけますがこの時期の観察は極めて珍しいことでした。ただ船が陸地に近づく11:30頃には海鳥の出現は一旦止まってしまい、時々着水しているクロアシアホウドリが見られる程度になってしまいました。13:00頃からは再びクロアシアホウドリが増えだし、14:30には個体数が増えてきました。またこの頃からは時よりハシボソミズナギドリの小群が飛ぶようになり、その中にアカアシミズナギドリの姿もありました。14:50にはようやく遠くを飛ぶオオトウゾクカモメが見られ、次第に船に近づく上空を通過していきました。15:05頃からはキタオットセイの愛嬌ある姿が目立つようになり、15:40には着水しているオオトウゾクカモメが海面から飛び立っていきました。津軽海峡に差し掛かった16:20頃からは状況は一変して風が吹き出し、波が立ってきて一気に寒くなってきました。このタイミングに合わせたかのように数千羽クラスのハシボソミズナギドリの大群が乱舞しはじめ、デッキ上は一気に忙しくなってきました。よく見るとハイイロミズナギドリ、コアホウドリも数多く混じっていて、風に乗るようにスイスイと飛翔しながら船体のすぐ脇を次々に通り抜けていきました。津軽海峡を通過した頃には再び海況は穏やかになっていましたが、ハイイロウミツバメが見られたほか、18:30には遠くを飛び白色型フルマカモメの姿があり、次第に船体に近づいてきて飛翔してくれたことからじっくりとその姿を観察することができました。6月はいつまでも明るいため結局19:00まで観察し、その後は慌てて荷物整理をして20:00前に下船しました。

18日、この日は早朝の時間帯が重要なことから04:00には起床して04:30にデッキに出ました。昨日は荒れていた津軽海峡ですが、この日は驚くようなベタ凪で海面は鏡のようでした。さっと海面全体を眺めてみましたが、昨日は見ることができなかったウミツバメ類がヒラヒラと飛翔していました。幸いにも船と同じ方向に飛んでいる個体が多かったことから比較的ゆっくりと観察することができ、全身薄い灰色のハイイロウミツバメ、腰の白さが目立つコシジロウミツバメが確認できました。この航路では67月には比較的見かけますが何しろ小さいことから波の状況によっては目につかず、見落としてしまいますが、この日は海面が鏡のようだったことからやや遠い距離にいる個体も容易に見つけることができました。また昨日に引き続き所々で浮いているカンムリウミスズメの姿も見られました。05:00にはハシボソミズナギドリの群れに混じるアカアシミズナギドリが飛び、フルマカモメが間近を通過していきました。05:40には水面スレスレを飛翔するオオトウゾクカモメの姿があり、05:50には距離はあったもののまたまた白色型フルマカモメが飛翔していました。06:30頃からは所々で濃霧が発生して中断する状況になりましたが、幸い長時間の中断にはなりませんでした。07:00を過ぎるとやや風が出てくる中、船体脇にずっとついて飛ぶキジバトが現れて盛り上がりました。08:00頃からはやや曇り空になり海鳥はコアホウドリの姿が目立ってきました。その後はオオミズナギドリの姿が目立ちはじめ、カマイルカのジャンプが各所で見られました。その後は海況が穏やかになる中、海鳥の姿が減ってしまいましたが所々でオオミズナギドリとハシボソミズナギドリの姿がありました。11:00頃からは風も収まり、さらに海況が穏やかになる中、クロアシアホウドリの姿が目立ちはじめ、フルマカモメ、オオミズナギドリ、そして再びカンムリウミスズメの姿が見られました。そして11:30には計30個体ほどのクロアシアホウドリが着水している姿が見られました。13:00には海面を帯状に進みながら大きなジャンプを見せるカマイルカの大群が登場して盛り上げてくれ、中には船体のすぐ脇までくる個体もいました。また13:20には漁船にまとわりつくクロアシアホウドリとコアホウドリが見られ、13:30には再びオオミズナギドリを引き連れたカマイルカが登場して激しく採食行動していました。それ以降も何度も何度もカマイルカの群れが登場し、オオミズナギドリと共に採食行動を見せてくれ、最後はハイイロミズナギドリ、ハシボソミズナギドリ、フルマカモメ、アカアシミズナギドリが入り乱れながら飛翔する姿を観察して16:00に観察を終了しました。とにかく記憶に残るほどの穏やかな2日間でした。

 この大洗~苫小牧航路ツアーは文字通り茨城県大洗町と北海道苫小牧市を往復するという移動距離の長いツアーですが、2日間を通して天候をはじめ、風や波に至るまでほとんど変化がないという珍しい2日間でした。そのため海鳥の多くが飛翔することなく着水していたため、見た目の派手さを感じることができなかったことはやや残念でした。ただこの時期らしいクロアシアホウドリ、コアホウドリが数多く見られ、白色型フルマカモメを含むミズナギドリ類5種、さらにはオオトウゾクカモメ、コシジロウミツバメ、ハイイロウミツバメ、またこの時期初観察のカンムリウミスズメにも出会え、カマイルカ、イシイルカ、キタオットセイも楽しませてくれました。海鳥観察はいかに多くの経験を積むかがカギです。今後もさまざまな航路探鳥にお出かけいただけましたら幸いです。この度はお疲れさまでした。

 石田光史

ハシボソミズナギドリ 撮影:坂東俊輝様

 

クロアシアホウドリ 撮影:鈴木真様

 

シロエリオオハム 撮影:坂東俊輝様

 

コアホウドリ 撮影:鈴木真様

 

アカアシミズナギドリ 撮影:坂東俊輝様

 

カマイルカ 撮影:鈴木真様

 

クロアシアホウドリ 撮影:坂東俊輝様

 

キタオットセイ 撮影:鈴木真様

 

コアホウドリ 撮影:坂東俊輝様

 

ハシボソミズナギドリ 撮影:鈴木真様

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