【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森 2017年5月31日~6月1日

(写真:チゴモズ 撮影:刈田宏様)

ブナ林が美しい北信越の森を巡り、温泉も楽しめる恒例の12日のバスツアー。この周辺に生息している希少種、ブッポウソウとチゴモズとの出会いを中心に巡っていきます。たまたま時間があったことから一週間ほど前に1日だけ巡ってみました。今回巡る場所は豪雪地帯として知られ、厳冬期には数メートルの積雪があります。そのため毎年どこかしらで土砂崩れによる通行止めがあり、まだまだ残雪が多くあったりするのですが、とにかく今年は雪が少なく、道はほとんど問題なく通れました。そのため探鳥はほぼ問題なくできると考えてスケジュールを組むことができました。ただ天気予報では31日は晴天のため気温が高く、午後からは雷雨の可能性があり、翌1日は残念ながら終日雨の予報が出ていました。

 31日、東京駅前は早朝からやや蒸し暑く、空はどんよりとしていました。集合時間の08:00にはバスを出発させることができました。途中に2度休憩を挟んで3時間弱で高速道路を降りることができ、そこから先はのどかな田園風景が広がる山村を車窓から見ながらバスはいくつかの峠道を走っていきました。車窓からはこの時期を代表するタニウツギのピンク色の花を見ることができ、紫色が美しい桐の花も所々で咲いていました。現地到着後は観察機材の準備をしてからブナ林の中を散策しました。林内からはキビタキの軽快なさえずりが響き、林の奥では樹洞からアカゲラのヒナの声が響いていました。そのため距離をとって待っていると餌をせっせと運ぶ親鳥の姿を見ることができました。あまり時間をとってしまうと親鳥に迷惑がかかるため早々に切り上げて一旦各自昼食としました。その後は付近にある棚田でチゴモズの姿を探しました。この頃には日差しがあり気温は27℃と蒸し暑くなっていました。湿地帯からはひっきりなしにオオヨシキリの声が響き、周辺ではサシバが見られ、珍しく針葉樹の上でけたたましくホトトギスがさえずっている姿を見ることができました。またノジコ、ヤブサメの声がひっきりなしに聞えていました。目的のチゴモズは数回やってきてくれましたがじっくりとは行かず、一旦場所を変えることにしました。付近にある別の場所でも1時間ほど待ってみましたがこちらは全く反応がなく、ニュウナイスズメ、キセキレイ、ヤマガラ、カワラヒワなどをみて最後はブッポウソウが見られる場所に移動しました。到着すると早くも3羽のブッポウソウが見られ、望遠鏡を使って特徴的な光沢ある緑色と紫色のグラデーションを見たほか、真っ赤な嘴もはっきりと見ることができました。観察していると周囲からは「ゲッ、ゲッ」というブッポウソウの声が聞かれ、さらには宙返りするように飛翔しながら昆虫を捕らえるフライキャッチのような動作を何回か見ることができました。パッと見は真っ黒い鳥に見えますが、特に飛翔する姿は美しく、翼にあるライトブルーの斑は特に印象的でした。やや雲行きが怪しくなってきた17:50に探鳥を終え、温泉が楽しめる宿に向かいました。この日は夜から小雨が降り出し、深夜には激しい雷雨になっていました。ただ天気予報が若干変わり明日は終日曇りの予報になっていました。

 1日、小雨は降っているものの雨具を着るほどではない曇り空の中、出発して早朝は主にアカショウビンとの出会いに期待しました。到着すると早速アカショウビンの声が響いていましたが森のかなり奥からでした。しばらく待ってみましたが声が近づいてくる感じがなかったため場所を変えることにしました。ここでは昨日はサンコウチョウの声が響いていましたが、この日は声はなく、ただ付近からは間近にヤブサメの声が聞かれ、くさむらの中をチョロチョロ動き回る姿が見られました。また針葉樹の梢には頻繁にサンショウクイがやってきては「ヒリリ、ヒリリ」と鳴き、イカルもやってきて賑やかに歌っていました。また薄暗い場所だったことから口笛のようなトラツグミの不気味なさえずりが響いていたのが印象的な朝でした。その後は一旦朝食のため宿に戻り、再度探鳥に出発しました。出発時には宿周辺でオオルリの声が聞かれたため探してみると枯れ木の梢で歌っていました。朝食後は再度ブッポウソウの姿を見に行き、今回は主にブナの林の中で行動する姿を見ることができました。まだまだペアリング段階なのか、盛んに求愛給餌の行動が見られ、つがいが仲良く並んでブナに止まっている様子はとても印象的でした。この頃になると天気予報に反して空は青くなり蒸し暑さが増していました。1時間ほど探鳥した後は、道の駅で休憩を挟んで昨日じっくり見ることができなかったチゴモズの姿を再度探しに向いました。到着するとサシバの姿があり、昨日よりも多くノジコの声が響いていました。ほどなくして特徴的なチゴモズの声がしたことから見てみると、どこからともなく飛んできたチゴモズのオスが付近の草に止まりました。思いのほかじっとしていたことから望遠鏡を使って観察することができ、一旦飛び去った後も近くの草に止まっていたことからじっくりと観察することができました。この日は動きが良かったことからこの後も針葉樹や電線に止まる姿を複数回観察することができました。ただこの場所ではオス個体しか見ることができず、今後メス個体がやってきて繁殖行動に至ると良いなと心配になりました。その後は昼食をとり、最後はここまで訪れることができないでいたブナ林に向かいました。ここは下見時に唯一残雪があった場所で、自然なブナ林の美しさが堪能できる場所です。バスを降りると渓流から流れてくる風が涼しく感じられました。ただやはり例年に比べると雪はほとんどないと言ってよいほどでした。ここではとにかくオオルリが見やすく、この日も複数のオオルリが歌う姿をじっくりと観察することができました。最後は歌っていたオオルリのオスが間近にやってきてくれたことから美しいブルーを間近に見ることができ、雪が少なかったことからショウジョウバカマやイワウチワ、ミズバショウといった花も見ることができ、ツアーを締めくくってくれました。

 今回は初日は晴天だったため気温が高く蒸し暑い1日でした。ただ翌日は天気予報が良い方に変わり、ほぼ雨に打たれることなく過ごすことができました。第一の目的であったブッポウソウはつがいでの行動など、さまざま観察することができ、特にフワフワとした独特の飛翔行動は印象的で、翼にあるライトブルーの斑は美しく見えました。また最近見る機会が減ったチゴモズも無事に観察することができました。ただ今回観察した場所ではつがいで見ることができず心配でした。今後無事に繁殖をしてくれればと思いました。ほかにも当地を代表するサシバ、ノジコ、オオルリ、アカゲラ、アオゲラ、今回は声だけでしたがアカショウビン、サンコウチョウのさえずりを聞くこともできました。気温の変化が激しい2日間でした。みなさま、お疲れさまでした。

 石田光史

チゴモズ 撮影:小倉彰様

 

ブッポウソウ 撮影:宅間保隆様

 

ブッポウソウ 撮影:刈田宏様

 

キセキレイ 撮影:小倉彰様

 

ブッポウソウ 撮影:宅間保隆様

 

キビタキ 撮影:刈田宏様

 

オオルリ 撮影:刈田宏様

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