【ツアー報告】珍鳥の宝庫 春の飛島 2017年5月4日~7日

(写真:カラフトムジセッカ 撮影:内田将司様)

ゴールデンウィークは日本海側の離島に渡り途中の鳥たちを見に行くというのはバードウォッチャーにとっては当たり前のことになっています。そのため今年も恒例となっている山形県の飛島に向かいます。ただ観察地の条件などを加味すると大人数での観察には向かないため今年も15名様限定としました。この飛島に渡るためには酒田港から定期船に乗らなくてはならないのですが、ここ数年は欠航する率が高く、その関係から運行が非常に難しくなっています。昨年も出発日から数日の欠航が濃厚になったため残念ながらツアー出発直後に中止にしたほどです。今年は幸いにも出発日は波も穏やかとの予報が出ていたため予定通り出発し島に向かうこととなりました。

4日、この日は連休初日ではありませんが、東京駅の新幹線ホームはものすごい混雑ぶりでした。ただこれといったトラブルはなく一路、新潟駅を目指しました。新潟駅からは特急いなほ号に乗り換えて酒田駅を目指します。途中の車窓からは日本海が見えるのですが、この日は信じられないくらいの穏やかな海が広がり、のどかに釣りを楽しむ人たちの姿も見られました。酒田駅到着後はタクシーに分乗してフェリー乗り場である酒田港に向かい、早速乗船。酒田港でも連休中らしく釣りを楽しむ家族連れが多く、船に手を振って見送ってくださる方もいらっしゃいました。船のデッキからは美しい青空に映える鳥海山を眺めることができ、驚いたことに遥か彼方に飛島の島影を見ることもできました。1時間半ほどの船旅ではオオミズナギドリ、ウミスズメ、ウトウ、さらには夏羽のユリカモメの姿を見ることができ、フェリーとびしまは滑るように飛島に着岸しました。到着後は一旦宿に入って観察機材を準備してから出かけることにしました。毎回のことですがあらかじめ島内の鳥の状況を教えてくださる方がいらっしゃることからだいたいの状況は把握できていて、その関係からこの日はグランドに向かいました。天気が良かったせいか歩いていると汗ばむ陽気の中、道端で餌を探すアオジ、木の実に群れるアトリ、ヒヨドリ、岩礁に佇むヒメウ、ウミウなどが見られ小学校のグランドではまず複数のツグミ、アオジ、カワラヒワの姿がありました。よく見ると胸まで深緑色の亜種シベリアアオジの姿があり、ツグミに混じってアカハラも現れました。また間近に現れたノジコが全く人を気にする様子もなく餌を探し、やや草丈が高いところからひょっこりとキマユホオジロとノゴマが姿を現しました。そして夕方になってようやく目玉のオガワコマドリが出現してまた動けない状況になり結局この日はずっとこの場所で観察を続けました。気が付くと18:00を過ぎていて芝生の上にはツグミ、アカハラのほか、マミチャジナイの姿もありました。また、斜面の草地にはカラフトムジセッカの姿もあり、こちらもじっくりと観察することができました。

5日、見事な日の出が見られる中、05:00 に宿を出て再びグランドに向かいました。途中、「ヒリリ、ヒリリ」と鳴きながらサンショウクイが飛んでいました。グランドでは早朝だからなのかカラフトムジセッカがさえずりらしい声で鳴いていました。初めて聞いたのですがムジセッカに似た声質でしたが、テンポがややゆっくりのような感じでした。またオガワコマドリ、ノゴマ、ツグミ、アカハラといった顔ぶれは同じでしたがキマユホオジロの姿はなく、代わってノビタキ、ホオアカの姿を見ることができました。その後、夏羽のシメのほか、オオルリ、センダイムシクイ、キマユムシクイが見られツツドリの声がしていました。また宿に帰る途中では木の実に群れるコムクドリが見られ、上空をハヤブサが旋回していました。ただ、スズメが激しい争いをしていたことが意外にも印象的な朝探鳥でした。08:00から朝食をとった後はやや長い休憩をとり、09:30にここまで全く行っていない場所に向かいました。ウミネコが繁殖している崖ではハヤブサの姿があり繁殖しているのか?アマツバメが周囲をスイスイと飛んでいました。その後は毎回何かしらいてくれる畑地を巡りましたが今年は事前の情報通りに何も見ることができず、ようやくさえずっているキマユムシクイを見るに留まりました。ダムまでくるとようやく鳥影があり、コマドリが歌い、新緑の中で餌を探すセンダイムシクイとエゾムシクイが見られ、ダム湖にはマガモの親子がいました。さらに進んだグランドではキマユホオジロのオスとメス、さらにコホオアカ、そして「ジュウイチ、ジュウイチ」とジュウイチの声が聞えました。その後は一旦宿に戻って13:00から昼食とし、14:30から再びグランドに向かいました。グランドではオガワコマドリ、ノゴマ、マミチャジナイ、アオジ、ツグミといった顔ぶれは変わりませんでしたが、やや個体数が減ったように感じました。その後は森に入ってみました。小道ではキビタキの姿があり、展望台では上空をアマツバメが飛んでいました。木の実にはシロハラ、シメが群れ、さらに進むと道端でシロハラホオジロのメスが採食していました。一旦飛び去ってしまいましたが別の場所で再び出会うことができましたが、シャイな個体らしくじっくりと観察することはできませんでした。その後はグランド経由で宿に戻り、途中では電線に止まっているコサメビタキの姿があり、夕方にはアオバズクが鳴いていました。

6日、天気予報では曇りから雨とのことで心配していましたが、美しい朝焼けが見られ予定通り05:00から探鳥に出かけました。グランドではこの日もカラフトムジセッカがさえずりらしき声で歌い、この日は比較的その姿をよく見ることができました。さらにはノゴマも口ごもったような声で歌っており、やや高い木に止まって歌っていたため望遠鏡を使ってじっくりと観察することができました。グランドの顔ぶれは変わっておらずツグミ、アオジ、アカハラ、マミチャジナイ、ホオジロが地上採食していました。ただ06:30くらいからは天気予報よりもやや早く小雨が落ちてきました。雨を避けるように森に向かい、途中ではコルリに出会うことができましたが雨は激しさを増し、とても観察を続けられる状況ではないと判断して宿に戻りました。ちょっと後味の悪い終わり方になってしまったことは残念でしたが、やはり7日、8日と定期船が欠航する可能性が極めて高いと判断し、残念ながらこの日に帰ることにして荷物整理に入りました。その後、定期船乗り場に向かいましたが予想を上回る混雑ぶりには驚きました。どうやら島内のバードウォッチャーや観光客のほとんどが予定を早めるという判断をしたようです。ただ、定期船は思いのほか揺れたものの予定通り酒田港に着岸し、我々は途中の特急、新幹線共に全員座席に座って東京駅に到着することができました。

 今回は結果的にはあらかじめ決めていた観察時間をフル活用することができず、実質2日間の探鳥しかできませんでしたが、春の離島でなくてはなかなか出会うことができない、オガワコマドリ、カラフトムジセッカ、キマユホオジロ、シロハラホオジロ、コホオアカ、キマユムシクイ、マミチャジナイといった顔ぶれを含む70種の野鳥を記録することができました。離島での探鳥には定期船欠航というリスクがあることはバードウォッチャーならばどなたでも知っていることとはいえ、連休後の予定があるお客様もいらっしゃるであろうことから急ではありましたがご参加の皆様にご相談させていただきました。結果、皆様が快諾してくださったことには心から感謝いたします。この度はお疲れ様でした。

石田光史

オガワコマドリ 撮影:K・Y様

 

コホオアカ 撮影:宅間保隆様

 

ノゴマ 撮影:内田将司様

 

キマユムシクイ 撮影:K・Y様

 

オガワコマドリ 撮影:宅間保隆様

 

サンショウクイ 撮影:内田将司様

 

キマユホオジロ 撮影:K・Y様

 

シベリアアオジ 撮影:宅間保隆様

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