【ツアー報告】春の水郷巡り 夏羽のシギを探そう!(追加設定) 2017年4月26日
(写真:ハジロコチドリ 撮影:柳澤隆様)
春の渡り期真っ只中ですが、離島に行くだけが渡りの観察ではありません。これから繁殖地に向かうシギチドリ類はどんどん美しい夏羽に換羽しながらこの時期に本州各地の水田で僅かな時間ながら羽を休めます。見られる時期がかなり限られており、しかもピークを当てることは極めて困難ですが、例年の観察データからはずれの少ない日を選んでいます。この日は直前の天気予報が芳しくありませんでしたが、幸いにも雨予報が直前にズレ、雨の降り出しは夜になってからということで結果的には雨に打たれることは全くなく過ごすことができました。
26日、早朝の東京駅前はどんよりと曇り、やや風がある状況でしたが大きな問題はなく、予定通り08:00に東京駅前を出発しました。バスは順調に進み途中の休憩を挟んでも2時間強で最初の探鳥地に到着しました。まずは各自観察機材の準備をしていただき出発しようかと思いましたが、近くの水田にムナグロの群れがいたことからまずはその姿を見ることにしました。この時期の代表種であるムナグロは時には数百羽の群れで見られることもあり、換羽の状況がさまざまであることから見応えがあります。今回も美しい夏羽に換羽が完了している個体から全く換羽していない個体までさまざま見ることができました。シギ類は歩いて近づくことが困難なことから一旦バスに乗っていただき近づいてみることにしました。狭い車内からであはりますが距離が近いことから双眼鏡でも十分に観察でき、群れの中にたった1羽ながら夏羽のウズラシギの姿がありました。また付近の畦ではキジのオスが盛んに母衣打ちを繰り返し、縄張り宣言していました。その後は3日前の下見時にシギ類がよく見られた場所に行ってみました。水田の畦道沿いには数羽のタシギの姿があり、警戒してか地面に伏せたり、固まったように動かなくなる個体がいました。また田植え後の水田の浅瀬には真っ赤な夏羽が鮮やかなメダイチドリとトウネンの姿がありました。赤い色に換羽する種類はいかにも夏羽という感じで美しく、春のシギチドリ観察ツアーの目玉といえるでしょう。さらには夏羽に換羽したタカブシギの姿がありスマートな姿をじっくりと観察することができました。また別の場所ではコチドリと共に採食するオジロトウネンの姿もあり、冬に見る灰色の姿とは異なり地味ながら羽縁に茶褐色の羽毛が混じる夏羽個体でした。ただ下見時に見られたハジロコチドリの姿は残念ながらありませんでした。お昼になったことから一旦各自昼食とし、午後からは場所を変えて利根川沿いに走りながら付近の水田を見てみました。この周辺はすでに田植えが完了している水田が多く、例年、チュウシャクシギやオオソリハシシギ、ムナグロ、昨年はツルシギの姿があったため毎回訪れていますが、この日は残念ながら数個体のチュウシャクシギの姿を見るに留まりました。ただ畦道の上でじっとしている個体がいたためじっくり見ることができました。夕方になりましたがまだ時間があったため最後にもう一度ハジロコチドリを探してみることにしました。可能性のありそうないくつかの水田を丹念に見てまわりましたがなかなかその姿を見つけることができず。ただ最後にようやくその姿を見つけることができ、最後は畦の上でじっとしていてくれたため、先端が黒い橙色の嘴と同じく橙色の鮮やかな足までしっかりと見ることができました。
この日は天気予報がずれたため結果的には雨の心配なく探鳥を終えることができ幸いでした。結局、春シギの代表種であるツルシギには出会えませんでしたが、国内では稀なハジロコチドリの夏羽個体に出会うことができ、ほかにも地味ながらオジロトウネンの夏羽個体、また真っ赤な夏羽が美しいメダイチドリ、ウズラシギ、トウネン、そしてさまざまな羽色のムナグロにも出会うことができました。シギチドリたちはこれから繁殖地に向かうため早々に見られなくなりますが、また秋に見るタイミングが訪れますので今度は秋のシギチドリ類観察にお出かけください。この度はお疲れ様でした。
石田光史