【ツアー報告】固有種と渡りの鳥たち 春の奄美大島(追加設定) 2017年4月10日~12日
(写真:ルリカケス)
魅力的な野鳥たちが生息する奄美大島を巡る春恒例のツアー。今年は追加設定も催行決定となる人気ぶりで、ツアーとしてはこの春2度目となりました。今回も地元、奄美野鳥の会の高美喜男さんの案内付きでの運行のため事前に打ち合わせをしましたが、今年はアカヒゲ、オオトラツグミの声がやや少な目かな?とのことでした。奄美大島といえば国の天然記念物に指定される日本固有種のルリカケス、同じく天然記念物指定されている亜種アカヒゲ、固有亜種のオーストンオオアカゲラなどが知られています。今回も主にこれらの種との出会いに期待して巡りますが時期的にはちょうど春の渡りの時期でもあります。そのため毎回、何かしらの渡り途中の珍鳥たちが見られていることも楽しみです。ただ春の奄美大島は天候が良くないことが多く、今回も10日~11日の午前中にかけて天候が悪いとの予報でした。
10日、東京は春のような穏やかな天気でしたが、現地、奄美大島はかなりの荒れ模様で激しい雨が降っているとのことでした。一応、飛行機の出発は予定通りとのことでしたが条件付きでした。奄美大島が近づくと機体はやや揺れ出し、機内では何度となく視界不良による待機である旨のアナウンスが流れました。予定では14:45着でしたが結局着陸態勢に入ったのは約1時間後の15:45で到着は15:55でした。ただ一時は羽田に引き返すかもしれない状況だったため到着できたことにほっとしました。到着した奄美大島は激しい雨に強風も手伝って大変な状況でしたが、ひとまず雨具を用意して空港近くで探鳥しました。風雨が強まる中での探鳥でしたが、浅瀬に点在するカルガモ、ハシビロガモ、大きく曲がった嘴が特徴のホウロクシギなどを観察し、バス車内からイソヒヨドリが見られたほか、数羽のムネアカタヒバリが見られましたが雨が強く、またホテルに向かわなくてはならない時間になったことから探鳥を終えてホテルに向かいました。ただ途中では電線に止まるコムクドリの群れが見られました。
11日、この日は05:00に出発しました。この時間は天気予報通り雨は止んでいました。やや早めの出発だったことから到着時はまだまだ真っ暗でしたが、狙い通り途中の道路で夜行性のアマミヤマシギの姿を見る幸運がありました。アマミヤマシギはほぼ夜行性のため深夜に探しに行かなくてはならず、ツアーでは対応できないのですが、真っ暗いうちに行動を始めることで僅かな幸運に期待していたのですが見事に当たりました。また「コホッ、コホッ」とリュウキュウコノハズクの声も聞くことができました。周囲が明るくなりはじめると地面で採食するシロハラの姿が目立ちはじめ、よく見るとアカハラの姿もありました。またルリカケスも一緒に地面採食していました。また期待のアカヒゲが複数個体さえずりはじめ、よく見られているという場所で待っていると美しいオス個体が数回だけですが地面をピョコピョコ歩いてくれました。その後は一旦朝食のためにホテルに戻り、その後はルリカケスを探しに出かけました。この頃には雨が降ったり止んだりの奄美大島らしい天候になっていました。現地では到着するとすぐに2羽のルリカケスが現れて鳴き交わしてくれ、ひとまず望遠鏡を使って観察することができました。その後は複数のルリカケスが登場し、建造物に止まったり、周囲の木々に止まったりと活発に動いてくれたため、さまざまなシーンを観察することができました。結局、1時間ほどの観察でしたが良いシーンを見ることができ次第に激しくなる雨に追われるように昼食会場に向かいました。昼食をとった後はようやく雨が止み雲に切れ間ができてきていました。そのためかツバメのほか、アマツバメ、ヒメアマツバメがスイスイと飛んでいました。出発後は奄美大島らしい風景を見ようといおうことでマングローブ林が一望できる場所からその眺望を楽しみました。その後は珍鳥情報のあった場所に向かいました。ここでは朝鮮半島などで繁殖し東南アジアで越冬する珍鳥、イワミセキレイが見られているとのことで探しながら探鳥することにしました。ひとまずトイレに行った後に歩き出しましたがすぐのところにその姿がありました。観察していると体を左右に振る独特の動作をしながらノコノコ歩きまわっては昆虫を捕らえていました。国内では離島などで稀に観察されますが、まさか奄美大島で観察できるとは驚きで、春の渡り期らしい出会いでした。その後は今回よく見られているズアカアオバトの姿を何度も何度も観察することができたほか、サシバ、タシギなどの姿がありました。
12日、この日も05:00に出発しました。この日は天気予報通りに天候は良く、星が輝いていました。ただやや風があったせいか驚くような肌寒さでした。到着時は薄暗い中、ズアカアオバトの間の抜けたような声が響き、やや明るくなると目的のオオトラツグミの声が響き渡りました。林道を歩くと騒がしく鳴くルリカケスが飛び、リュウキュウキビタキのさえずりも聞こえてきました。そして間近にアカヒゲのさえずりが聞えたかと思うと、道の横の木に止まってしばらくの間さえずってくれたため、その姿を見ることができました。また帰り道ではふいに現れたオーストンオオアカゲラが倒木をつつきながら餌を探しはじめたため、バス車内からではありましたがしばらくの間、その黒ずんだ独特の姿を観察する機会に恵まれました。朝食のため一旦ホテルに戻った後は付近の森に出かけました。この日はお天気もよかったため、なかなかしっかり観察できないアカヒゲを再度見られないかと期待しましたが、残念ながら声は僅かでした。ただ、リュウキュウサンショウクイが枯れ木に止まったり、アマミヤマガラが賑やかにさえずったり、また野鳥以外の分野にもご興味のある方に現地案内人の高さんが対応してくださり楽しむことができました。この日は初日にほとんど探鳥ができなかった場所を巡るため、やや時間を早めていたことから12:30から郷土料理の鶏飯(けいはん)を召し上がっていただき、その後は初日に行く予定だった場所に向かいました。ただ、ちょうど奄美大島空港の直前あたりで海岸方向から白っぽいタカがヒラヒラ舞いながらバスの前を横切りました。全く予想していなかったことから双眼鏡も間に合いませんでしたが、なんとマダラチュウヒのオスでした。慌てて飛び去った方向に向かい、広大なサトウキビ畑内を走りながらその姿を探しましたが残念ながら再度出会うことはできませんでした。時間も押してきたことからポイントに向かうと、この日はさまざまなシギ類の姿がありました。中でも完全な夏羽のオオソリハシシギは美しく、ほかにもセイタカシギ、アオアシシギ、ホウロクシギ、小型のムナグロはかなりの数が見られ、ハマシギ、タカブシギ、ウズラシギ、キアシシギ、さらには亜麻色が美しいアマサギの姿も見られました。そして最後は僅かな時間ながら初日にしっかり観察できなかったムネアカタヒバリの姿をじっくり観察して奄美空港に向かいました。
今年の奄美大島ツアーはおかげさまで追加設定を含む2本の催行となりありがとうございました。ただ、今回は初日は悪天候に見舞われてしまい、最悪の場合も考えなくてはならない状況でした。ただ遅れはしたものの無事に到着することができ幸運でした。翌日もグズグズした春の奄美大島らしい天候でしたが、早朝にアマミヤマシギ、アカヒゲ、その後、ルリカケスを見ることができ、翌日にはオーストンオオアカゲラにも出会えました。また春の渡り期にあたるため毎回何かしらの珍鳥が見られていますが、今回はイワミセキレイ、ムネアカタヒバリをじっくり見ることができたほか、マダラチュウヒの姿も僅かながら見ることができました。そして今年はズアカアオバトがよく見られたのも印象的でした。天候に悩まされる時間も多くご苦労が多かったツアーでした。この度はお疲れ様でした。
石田光史