【ツアー報告】珍鳥が渡る!春の与那国島 2017年3月29日~4月1日
(写真:ヤツガシラ 撮影:柳澤隆様)
一般的に春の渡りというとゴールデンウィーク頃を連想しますが、南西諸島ではすでに春の渡りが始まっています。そのスタートとして毎回ご好評をいただいているのがこの与那国島です。日本最西端に位置するという地理的なことからさまざまな珍鳥たちに出会え、離島でありがちな大ハズレがないのが特長です。また初日には僅かな時間ながら石垣島でも探鳥し、カンムリワシ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイの八重山3点セットも探します。今回も直前に催行されていた石垣島と西表島ツアーを担当されている宮島さんと共にガイド2名体制でご案内することとなりました。
29日、今回も東京から出発するお客様をはじめ、関西、名古屋、福岡、さらには秋田、そして直前に催行されていた石垣島と西表島ツアーから引き続いてご参加のお客様の合計20名が石垣空港に集合し、到着後は観察機材の準備をしてからまずは石垣島内での探鳥に出発しました。観察できる時間は僅かですが、直前まで石垣島のツアーを担当されていた宮島さんが案内してくださることから、かなり効率的な探鳥ができ、まずはムラサキサギを狙って水田に向かいました。ただここ数年は思いのほか出会う確率が低く、この日もようやく2カ所目に訪れた区画でその姿を見ることができました。ただ道のすぐ脇にいたことから飛び去られてしまいました。その後は北上しながらムラサキサギとカンムリワシを探しましたがその姿はなく、ひとまず別のサトウキビ畑に向かいました。ここでは幸い電柱に止まるカンムリワシの姿があり、全員で観察していると、どこからともなくもう1羽が現れ求愛するかのように鳴き交わしました。その後は両翼を持ち上げて独特の飛翔形をとるカンムリワシの姿を観察する機会もありました。トイレ休憩した後は道端でヤツガシラの姿を観察し、その後は今年、国内で初めてヒナを巣立たせて話題になっているカタグロトビを探すため移動しました。到着すると周辺は静かでその姿を見ることはできませんでしたが、しばらくすると成鳥と思われる個体が現れて森に消えました。そして直後には今年巣立った幼鳥個体がスイスイと飛翔しながら現れ、遠くの枯れ木に止まりました。すぐさま望遠鏡で捉えて観察しましたが、やはり褐色みのある幼鳥個体でした。しばらく観察していると再び飛び立ち、我々の上空をかすめるように飛び去って行き、短時間ながら良いシーンを見ることができました。そして最後は夕方から活動を始めるズグロミゾゴイを探しに向かいました。ここでは数日に渡ってその姿があったようですがこの日はおなじみの場所にその姿はありませんでした。ただグランド側の薄暗い場所で採食している個体がいたことからその奇妙な姿とスローモーションのような動作をじっくり観察することができました。また最後には木の実を食べている2羽のズアカアオバトも見ることができました。
30日、ようやく夜が明けてきた06:45からホテル周辺で探鳥を行いました。この日はむっとするような暑さはなく心地よい風が吹いていました。近くにある公園では亜種ホオジロハクセキレイのほか、草地では数羽のムネアカタヒバリの姿があり、ほかにもキセキレイ、コチドリ、シロチドリが見られました。そこから河口に向うまでの間にも亜種シマアカモズ、シロガシラといったお馴染みの顔ぶれが楽しませてくれ、河口では南西諸島ではお馴染みの白いクロサギをはじめ、リュウキュウツバメ、アオアシシギなどが見られました。朝食後は石垣空港に移動して与那国島に向かいました。フライトは順調で予定通り到着後は一旦ホテルに向かい、ロビーで観察機材準備の後、昼食を食べてからの出発としました。ただ早くもホテル周辺でクロウタドリの姿がありました。出発後はまず貯水池に行き、コガモに混じる美しいオスのシマアジ2羽を観察しました。その後は今年非常に多いと聞いていたヤツガシラを集落内で観察することができました。また付近にある漁港ではクロウタドリがいたとのことで行ってみましたが、残念ながらその姿はなく、ジョウビタキのオス、ゴイサギが見られました。その後は日本最西端の記念碑がある西崎に立ち寄り記念撮影などしてからシギ類情報が多くあった水田に向かいました。ここではまず2羽のアオアシシギの姿があり、アマサギ、チュウサギ、コサギが群れている水田には2羽のツバメチドリがいました。隣の水田には2羽のオジロトウネン、4羽のムナグロの姿もありました。その後は海岸付近を巡り、オオメダイチドリの夏羽、メダイチドリ、シロチドリを観察し、途中にある芝生広場では赤みがそれほど強くない個体でしたが、亜種ハチジョウツグミの姿をじっくり観察することができました。その後は芝生のあるグランドに向かいました。すると車内からクロウタドリの姿が見えたことから観察を始めると、クロウタドリは2羽いたようで飛び立った個体がグランド内の木に止まりました。それらを望遠鏡で観察した後は、再び芝生で採食するヤツガシラも観察することができました。バスに戻ろうとすると付近の水田にシギ類の姿が見えたことから移動して観察すると、タカブシギ、ウズラシギ、セイタカシギ、そして飛び回るムナグロが見られ、水田に降りて採食している2羽のクロウタドリも見られました。またいつの間にか電線にギンムクドリの姿が見え、観察しているとその数はどんどん増え、その中に混じるコムクドリ、ホシムクドリ、ムクドリの姿も見られました。結局最後はギンムクドリは50羽ほどの群れで見られ、これぞ春の与那国島といったシーンでこの日を締めくくることができました。
31日、この日は06:45から探鳥を開始しました。幸いにも天気予報が良いほうにハズれ、やや風はあるものの穏やかな朝でした。朝は水田に向かいサギ類やシギ類をチェックしました。早朝ということもあり塒から出てきて水田に向かうサギ類が飛び交い、藪から出てきて採食するシロハラクイナの姿もありました。遠くにはセイタカシギの群れが見られそれを見ていると大型のサギ類が飛び、道路に降りました。望遠鏡で見てみるとミゾゴイでした。また複数のツメナガセキレイが飛び交い、島内の鳥の状況がやや変わったかのように感じられました。朝食後は昨日行けなかった東崎に向かいました。吹き曝しの芝生の上では亜種ホオジロハクセキレイのほか、複数のマミジロタヒバリ、夏羽のタヒバリの姿があり突然現れたハヤブサが小鳥たちを狙っていました。その後は島の南側に向かいました。ここも水田があることから定番の探鳥ポイントでこの日は畦上で休む2羽のケリのほか、アカアシシギ、タカブシギ、そして20羽ほどのセイタカシギの群れがここでも見られました。その後は西に向かい湿地帯に立ち寄りました。ここでも間近にセイタカシギの群れが見られたほか、渡り中と思われるハシビロガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロが羽を休めていました。一旦、昼食をとり、午後からは南牧場経由で立神岩に向かいました。観光地としても知られる場所で独特の景観を見せる巨大な立神岩を展望台から楽しみました。その後はこれといった情報がなかったことからヤツガシラ情報がある場所に再び向かいました。この場所ではこの日、3~4個体のヤツガシラが見られ、芝生で採食している個体はしばらくの間楽しませてくれました。周辺を歩くと水路で亜種タイワンハクセキレイ、亜種シマアカモズ、シロガシラが見られ、海岸では南西諸島では珍しい黒いクロサギやウミウの姿もありました。またせっかくなのでドラマ「Dr.コトー診療所」のロケに使われた建物も見てきました。ただこの場所を出発する頃には怪しげな雲がかかり雨が降り出してきました。そのためその後はバス車内から観察可能な場所を巡り、バス車内からオオメダイチドリ、シロチドリ、セイタカシギ、サギ類などを観察して終了しました。
4月1日、この日も同様に06:45から探鳥に出かけましたが、昨日の雨が残り小雨模様でした。まずはアカガシラサギを探しに水田を見てみましたが、アマサギ、チュウサギ、ダイサギ、コサギ、アオサギといったサギ類のみのため、昨年オオチドリが見られたサトウキビ畑、また墓地周辺を巡ってみましたがこれといった変化はありませんでした。そのため最後に強風吹き荒れる東崎に向かいました。吹き曝しの牧草地ではマミジロタヒバリ、タヒバリ、ヒバリが風に耐えるように採食し、どこからともなくギンムクドリがやってきました。またジョウビタキの姿がありましたが、新たな珍鳥の発見には至らずホテルに戻りました。一旦部屋に戻って荷物整理をした後、09:30与那国空港発で出発し、やや遅れなどがありましたが石垣空港、那覇空港と経由しそれぞれの帰路につきました。
今回は直前まで催行されていた石垣島と西表島ツアーから引き続いて宮島さんに同行していただいたことから、石垣島では効率の良い探鳥ができ、カンムリワシ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイの八重山3点セットを観察することができ、さらには話題になっている国内で初めて巣立ったカタグロトビの幼鳥を観察する機会にも恵まれました。また与那国島ではこの春、非常に多く見られているヤツガシラ、クロウタドリを複数観察することができたほか、ミゾゴイ、オオメダイチドリ、ツバメチドリ、シマアジ、ギンムクドリ、ホシムクドリ、マミジロタヒバリ、亜種ハチジョウツグミ、亜種ホオジロハクセキレイ、亜種タイワンハクセキレイなどが楽しませてくれました。渡り期の離島は毎回毎回違った結果になるため、何度訪れても違った感動があるものです。また時期を変えて、あるいは場所を変えて宝探しのような離島での珍鳥探しにお出かけください。この度はお疲れ様でした。
石田光史