【ツアー報告】ウミスズメ類のピーク!大洗~苫小牧航路 2017年3月17日~19日
(写真:ハシブトウミガラス 撮影:井ノ口博司様)
いよいよ北航路も本格的な海鳥シーズンに入りますが、ミズナギドリ類観察にはまだ早いこの時期は北上前のウミスズメ類がまとめて観察できる貴重な時期です。観察頻度が高い、ウミスズメ、ウトウ、ハシブトウミガラスの基本3種を覚えるにも良い時期で、ほかにも塊状の群れになるエトロフウミスズメ、国内での観察が困難なコウミスズメ、そしてアホウドリの成鳥個体との遭遇率も高く楽しみです。今回は往復共に天候は良く波も穏やかであるとのことで一安心でしたが、前週の結果からもどうやら今期はこれらウミスズメ類が大変少ない状況であるようで、やや心配しながらの出発となりました。
17日、今回は集合時間の22:30前に全員が大洗フェリーターミナルに集合しました。ご集合後は資料の配布や翌日の予定、そして期待されるウミスズメ類の識別ポイントなどを解説して乗船しました。
18日、この日は過去データからウミスズメ類の出現率が上がってくる金華山沖の08:00から探鳥を開始しました。天候は良かったですが、やや風があり時より海水が霧雨のように降ってきていました。いきなりシロエリオオハムが間近を飛び、金華山が近づいてくるとウミネコが風に乗って乱舞し、ウトウの姿も目立ってきました。ウトウは白い飾り羽が出て、嘴もより橙色になりすっかり夏羽になっていました。08:30にはハシブトウミガラスが近くを飛び、08:40にはオオミズナギドリの姿も見られました。09:00を過ぎると海況はさらに穏やかになり暖かさすら感じる状況になりました。この頃からはカモメの姿が増えてきました。ハシブトウミガラスは少ないながらも時よりその姿が見られ、ウミスズメの小群も見られるようになってきました。10:00以降は船が陸地に近づいたことからより海況は良くなりベタ凪ぎ状態になりましたが、さすがに風は冷たくなってきました。10:15には2羽のウミスズメが飛び、より高いところをシロエリオオハムが飛んで行きました。10:30にはカモメ類を引きずるように漁船が航行していましたが、期待されたアホウドリ類の姿はありませんでした。11:20にはウミアイサが飛び、間近から飛び立った2羽のハシブトウミガラスがしばらくの間楽しませてくれ、時を同じくして4羽のウミスズメ、2羽のウトウが現れました。14:00頃には小雨が降る時間帯がありましたが天候に大きな変化はなくその後は重要な海域に達しましたがこれといった動きはなく、17:00にはウミアイサのオス、17:15には珍しくシノリガモのオスとメスが飛び、17:20には15羽ほどのウミアイサの群れを観察して終了しました。ただこの時間にコウミスズメを観察されたお客様がいらっしゃいました。
19日、この日は05:45の日の出よりも前の05:30から観察を開始しました。はじめは薄暗かったですが次第に空が明るくなり見事な日の出が見られました。この時間帯はさまざまな種に期待しましたが残念ながら出現はなく、カモメ、ウミネコ、オオセグロカモメが飛びかっていました。06:15にはこの海域では珍しいオオミズナギドリが複数飛び、07:30にハシブトウミガラスが連続して出現し、ようやく2羽のエトロフウミスズメが見られました。08:00にはオオハクチョウの群れが飛び、08:45にはシロエリオオハム、ウミアイサ、そしてウミウが飛び、09:40以降は所々海面が鏡のようになる中、浮いているハシブトウミガラスとウトウ、ウミスズメの姿を見ることができました。10:20には外洋では珍しく10羽ほどのヒドリガモが飛び、その後、11:30頃からはやや風が出てきたことから波が立ってきました。観察は金華山沖までとしていますが、この日はまだまだ観察を続けるお客様がいらっしゃったことから逆光を避けて反対側のデッキで観察を続けました。13:00頃には浮いているウトウが多数見られ、13:35にはクロガモが飛んで行きました。その後は海鳥よりもキタオットセイが目立つようになり、独特のポーズで浮いている様子やイルカのように跳ねる様子、頭だけを海面に出してこちらをうかがうような動作を楽しみました。またオオミズナギドリも頻繁に見られるようになり、そんな中、16:00には立て続けに3個体のトウゾクカモメが現れ、その中の1個体はしばらくに間、船体に沿うように飛翔してくれました。また16:18には遠くにシャチの背ビレが突き出しました。観察してみると背ビレの大きいオスとそれ以外にも数頭がいたことから家族群のようでした。その後はオオミズナギドリやウトウの姿を見ながら進み、最後は3羽のシロエリオオハムが船を追い越すように飛翔し、ふと下を見るとバタバタと羽ばたきながら水面を駆けるようにして逃げていく複数のシロエリオオハムの姿がありました。結局この日は17:00まで観察して終了しました。
今回は主に目的としていたエトロフウミスズメの大群、またコウミスズメがほぼ見られず、またこの時期比較的観察記録が多いアホウドリも観察することができませんでした。このウミスズメ類の少ない状況がたまたまなのか今年の傾向なのかはわかりませんが、いずれにしても残念な結果でした。ただ、少ないながらも基本種のハシブトウミガラス、ウトウは良い状況で観察することができ、シロエリオオハム、トウゾクカモメといった種も良い条件で観察することができました。また海鳥とは別にシャチの出現があったり、愛嬌あるキタオットセイ、イシイルカも見られました。今期は残念な結果となってしまいましたが、来期以降も継続して企画して参ります。またの機会、ぜひご乗船ください。この度は大変お疲れ様でした。
石田光史