【ツアー報告】大洗航路の海鳥と北海道の小鳥たち 2017年3月9日~12日
(写真:ベニヒワ 撮影:鶴田学様)
ミズナギドリ類観察にはまだ早いものの、ウミスズメ類観察には最適のこの時期に、大洗~苫小牧航路を往復して海鳥を観察し、さらに苫小牧周辺での探鳥を加えたお馴染みのツアー。今回は3月としては海況は穏やかな予報が出ており、道内探鳥をする土曜日も好天との予報の中での出発となりました。
9日、今回は集合時間の22:30前に全員が大洗フェリーターミナルに集合しました。ご集合後は資料の配布や翌日の予定、そして期待されるウミスズメ類の識別ポイントなどを解説して乗船しました。
10日、この日は過去データから出現率が上がる金華山沖の08:00から探鳥を開始しました。天候は良く風も穏やかでダウンジャケットがいらないくらいの陽気でした。光はまだ逆光ぎみでしたが次第に良い角度になりつつありました。早くもアビ、シロエリオオハムが飛び、08:30にはウトウの姿があり、その後は次第にカモメの姿が増えてきました。09:15にはクロアシアホウドリが飛び、10:00以降はやや風が出てくる中、カモメ、ウミネコ、オオセグロカモメが乱舞していました。11:00には列をなすように6羽のウトウが飛び、11:55には網を引きながら航行する漁船がいたことからアホウドリ3羽、クロアシアホウドリ3羽が同時に出現しました。アホウドリは美しい成鳥個体が2羽見られ、亜成鳥は高く舞い上がるようにしながら見事なダイナミックソアリングを見せてくれました。12:30を過ぎると次第に風が冷たくなる中、ようやくハシブトウミガラスが飛び、15羽ほどの群れで飛ぶウミスズメの群れがいくつか見られました。13:00を過ぎると真冬並みの寒さとなる中、時より吹雪がやってきてはまた晴れるといった状況が繰り返されました。ただ14:00にはようやく数十羽という小さな群れながらエトロフウミスズメが数回見られ、ハシブトウミガラス、コウミスズメが波間に見られました。15:30にも再度ウミスズメ類が多い時間帯がやってきてエトロフウミスズメ、コウミスズメ、ハシブトウミガラスの姿がありました。ただ、群れの規模はかなり小さく、個体数もかなり少なく残念でした。ただ薄暗くなりかかった16:50にはコアホウドリが連続して10個体ほど見られ、アホウドリ類3種を見ることができました。
11日、この日は08:00にホテルを出て5か所の探鳥地を巡る予定です。天気予報は晴れで空は明るかったのですが朝食時から雪が舞っていました。最初に訪れた公園では小雪が舞う中での探鳥となり、そのせいか小鳥たちの動きは少なくツグミとハイタカの姿があるのみでした。ただ、雪が止み晴れ間が出始めるとヒガラ、シジュウカラ、ヤマガラの姿が見られ、どこからともなく飛んできた数羽のアトリが現れました。望遠鏡で見ると黒みが増した夏羽になりかけの個体も見られました。また5羽のウソが現れ、盛んに新芽をついばんでいました。次はおなじみとなった郊外の雑木林に向かいました。この頃には天気は回復し暖かいくらいの陽気になっていました。まずは途中にある池でマガモ、ホオジロガモを観察し、付近の林では狙い通りシマエナガの姿を見ることができました。またハシブトガラ、シロハラゴジュウカラが間近に見られました。駐車場では上空をオジロワシが飛び、林に入ると可愛らしいキクイタダキがしばらくの間、楽しませてくれました。またエゾリスが姿を現し、遊歩道沿いにはハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シマエナガ、ヤマガラ、シジュウカラがひっきりなしに見られ、思いのほか低い場所で採食しているキバシリも見られました。そしてここでも低木でさかんに採食しているキクイタダキの姿をしばらくの間、楽しむことができ、付近ではミソサザイの姿もありました。やや時間オーバーしましたがお昼過ぎに道の駅に到着しました。ここでは昼食後に湖畔で探鳥をしました。半分凍結した湖面にはマガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、コガモなどの姿があり、凍結した湖面にはオオワシが佇んでいました。ただいつも見られるカササギの姿はありませんでした。この後は付近の海岸に向かいました。この日は漁船の往来があり賑やかでしたが、港内にはスズガモの群れが見られ、周囲にはクロガモ、ホオジロガモのオス、カンムリカイツブリの姿がありました。また建物の上にはオオセグロカモメに混じってワシカモメの姿があり、シロカモメの成鳥が飛んでいました。海が眺められる場所まで移動して海面を眺めると、クロガモ、ホオジロガモ、ウミアイサ、ハジロカイツブリ、アカエリカイツブリとさまざまなカモ類、カイツブリ類が見られ、驚いたことに数十羽のコオリガモが飛びかっていました。コオリガモは道東や道北では普通に見られるカモ類ですが、当地で観察した経験はなく大変驚かされました。そして最後は河口に向いました。途中、バスの前をハイイロチュウヒのオスが横切り、さらに進むと数羽のカササギが地上採食していました。当地ではこの時期、渡り途中のマガンの姿が見られていることからやや横道に逸れて走っていただき畑地でマガンを探しながら進みました。この日はマガンの個体数が多く、車道沿いの畑地ではかなりの数のマガンたちを見ることができました。トイレ休憩の後はいよいよ鵡川河口に向いました。まずは漁港でカモ類を探しましたがこの日は数が少なく、スズガモ、コガモ、クロガモ、堤防上で休んでいるオオセグロカモメ、ワシカモメを見るに留まりました。草地では過去にツメナガホオジロを見たあたりを中心に探しましたが、残念ながらその姿はなく、代わってハイイロチュウヒのメスが飛び、さらに歩くとどこからともなく飛んできた6羽のベニヒワが低木に止まりました。この群れは移動しながら採食を繰り返していたためその後も何回か観察することができました。そして最後は夕景の中、飛翔するオジロワシ、オオハクチョウ、ヒシクイなどを見ながら観察を終了しました。
12日、この日は早朝が重要海域のため日の出前の05:30から観察を開始しました。日の出に合わせるように06:00に3羽のオオハクチョウが飛び、06:10には真っ黒い大きな三角形が海面に突き出してきました。驚いたことにオスのシャチで、何度か潜水浮上を繰り返しながら去っていきました。その後は大きな水しぶきを上げるイシイルカ、間近に浮上したミンククジラの姿もありました。その後、06:40にハシブトウミガラス、さらには10羽ほどで飛ぶウミスズメの姿があり、海面が穏やかになった07:00には浮いているハシブトウミガラス、ウミスズメを観察することができました。その後は鳥の出は止まってしまいウミネコ、カモメ、オオセグロカモメ、ミツユビカモメなどを見ながら進み、12:15には珍しくワシカモメの姿がありました。12:30にはカモメ類を引きずるように航行する漁船がありましたがアホウドリ類の姿はなく、午後からは時より現れるウトウ、そして時間を追うごとに数を増すユーモラスなキタオットセイの姿を見ながら16:00に探鳥を終了しました。結果的には期待したエトロフウミスズメの大群が見られず残念でした。
ウミスズメ類のピークに合わせて時期設定しているツアーですが、今回は残念ながら期待されたエトロフウミスズメの塊状の群れを見る機会がありませんでした。これが一時的なものなのか、今期の傾向なのかはわかりませんがいずれにしても視覚的な成果がなかったことは大変残念でした。道内探鳥は好天に恵まれたことも幸いし、北海道だからこその、ハシブトガラ、シマエナガ、シロハラゴジュウカラが見られ、少ないながらもアトリ、ウソ、そしてベニヒワに出会えたことは成果でした。またキクイタダキがじっくり観察できたことも印象的でした。また海ではクロガモ、ホオジロガモ、ウミアイサ、ワシカモメ、シロカモメなどが見られ、またコオリガモの出現には驚かされました。当たりはずれがある冬の北海道ですが、またの機会にぜひお越しください。この度は大変お疲れ様でした。
石田光史