【ツアー報告】フォトツアー 冬の道東巡り 2017年2月26日~3月1日
(写真:シマエナガ 撮影:須崎明男様)
毎回大好評の冬の道東巡りですが、今期からはこのツアーの撮影バージョンを企画することにしました。実は過去にも何回か企画しましたがなかなか催行に至らず苦戦が続きでした。ただ今期はなんとか催行決定し、しかも追加設定を含む2本が満席となりました。この冬の道東巡りでは、オオワシ、オジロワシを流氷観光船から観察し、夜はシマフクロウ、そしてサンクチュアリーに群れるタンチョウを観察するという4本柱がありますが、このツアーではさらにシマエナガをはじめとした小鳥類の撮影、さらには落石クルーズでウミスズメ類、海ガモ類の撮影を加え、探鳥地を撮影可能な場所だけに絞って長時間滞在することにしています。そのため観察種は限りなく少なくなりますが、ツアーの差別化を明確にしてみました。もちろん天候が結果を大きく左右することは言うまでもないですが、この4日間は穏やかな日和になるとの予報でした。
26日、天候が良かったことから予定通り羽田空港を出発することができ、無事空港に到着しました。この日はとにかくシマフクロウ撮影でしたが、やや時間があることから途中にある漁港に立ち寄りました。ここではホオジロガモ、シノリガモ、カワアイサ、ワシカモメなどを撮影することができました。この後は宿泊先に向かい到着後は夕食をとりその後は早速撮影の準備に取り掛かりました。ここ数日はシマフクロウの出現時間は極端に変化する傾向にあり早い時間が早朝かといった感じだとのことでした。ひとまず皆さんにはお好きな時間まで観察していただき、就寝の時間もお任せとしました。早朝の出会いに賭けて早めにお休みするお客様が多かったですが、ひとまず私はしばらく見ていることにしました。宿泊以外のお客様が次々に帰られる中でしたが、ようやく23:05にシマフクロウが現れたため皆さんにお伝えしました。一旦去ってしまいましたが30分後に再び現れたため皆さん撮影することができました。私はその後は寝てしまいましたが早朝04:00頃にも2度シマフクロウは出現したようでした。
27日、この日は05:00に宿を出発して流氷観光船に乗船しました。一見すると海上には氷のかけらすら見られませんでしたが流氷サイトで確認すると沖合には帯状に流氷があるようでした。そのためこの日は出港後20分ほど走って沖合にある流氷を目指しました。しばらくすると白い帯が見えはじめそれがやがて広大な流氷に変わっていました。すでに到達している観光船もあり、その後は無数に飛び交うオオワシとオジロワシの飛翔シーンや流氷とのコラボレーションをひたすら撮影しました。鳥たちも去ることながら遠くに見える羅臼岳、そして振り返ると国後島もはっきりと見ることができ、その景観には驚くばかりでした。またこの日は珍しく美しい日の出も見ることができ幸運でした。2時間半ほどのクルーズの後は一旦宿に戻って朝食をとり、その後は根室方面に向けて出発しました。出発前にはカワガラス、そして上空を舞うオオワシが青空に映えていました。途中にあるポイントでは残念ながら撮影できそうな対象がないことからあまりじっくり時間をかけず、エゾシカやキタキツネを撮影してこの日の宿泊先に向かいました。ここでは今回初となるシマエナガの撮影をすることになっています。昨年夏に下見に伺った際、ご主人といろいろと話し、初めて団体を受けていただけることになりました。この日は陽が傾いた16:45まで撮影しましたが、シマエナガは4度撮影のチャンスがありました。ほかにもハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、アカゲラ、コゲラ、シジュウカラ、ヒガラ、ヒヨドリがひっきりなしにやってきては楽しませてくれました。夕方からは内陸部特有の厳しい冷え込みがありました。
28日、日の出に合わせて06:15に外に出て見ましたが温度計は-23℃でした。周辺の木々には見事な霧氷が見られ朝日に照らされてキラキラと輝いていました。早朝は鳥の動きはかなり良く、シマエナガは3度やってきてくれました。またこの時間は常連組のほか、シメ、ウソ、アトリも加わって賑やかでした。また出発直前にもシマエナガがやってきてくれ可愛らしい姿を最後の最後まで撮影させてくれました。その後はサンクチュアリーでタンチョウを撮影しました。到着時はタンチョウは少なかったですが、この冬は塒から帰ってくるのが遅いようで、この日も10:00頃からようやくタンチョウがサンクチュアリーに帰って着始めたことから飛翔シーンを含めて、さまざまなシーンを撮影することができました。この日はその後の予定を若干変更して進めることにしたため1時間半ほどの撮影後、根室方面に向かってバスを走らせました。予定では霧多布周辺を訪れることにしていましたが、撮影対象となりうる鳥の情報がなかったことから一気に根室市に向かい漁港でコオリガモの撮影を行いました。ただ漁港内にコオリガモの姿はあったものの距離が遠く、結果的にはクロガモの撮影のみで、最後は今期よく見られているチシマウガラスを狙いました。夕方になると岩場を塒にしているヒメウが続々と帰ってくるため、とにかくその中からチシマウガラスを探すのですが、この日は日没まで探したものの残念ながらその姿はなく撮影することはできませんでした。
3月1日、06:30から朝食をとり07:30に出発して落石港に向かいました。この日は落石ネイチャークルーズに乗船して海ガモ類とウミスズメ類の撮影です。このクルーズは小さな漁船を使ってのクルーズのため、とにかく風の強さが気になるのですが早朝から快晴無風。過去に経験したことがないほどのベタ凪が予想されるほどでした。08:00に到着後はライフジャケット装着などをしてから予定よりもやや早い08:20に出港しました。この日は誰の目にもわかるほどのベタ凪で本当に驚くほどでした。まずは昨日撮影することができなかったコオリガモを狙って漁港内を航行していただきました。漁港内には多数のコオリガモとクロガモがいたため思いのほかあっさりと撮影することができ、何とか目的をクリアすることができました。その後はいよいよ外洋に出ましたが、とにかく驚くほどの穏やかな海で体感気温もとても高い状況でした。2時間半ほどのクルーズではまず間近にウミガラスを撮影し、その後はすぐに飛んで逃げてしまうコウミスズメに苦戦するものの、ようやくウミバトのアリューシャンタイプをじっくり撮影することができました。またここ数日観察されていたエトロフウミスズメを間近に撮影する最大の盛り上がりがありました。そしてこの海域の主役であるケイマフリは冬羽、換羽中個体、そしてなぜか完全な夏羽個体まで見ることができ、ウミバトはチシマ型と呼ばれるケイマフリによく似た個体も撮影することができました。またラッコも見られましたが距離が遠く残念でした。ただし、これほど穏やかな落石クルーズは稀で本当に驚きの連続でした。
「鳥の観察会」として初催行となったフォトツアーでしたが、冬の道東とは思えないほどの穏やかな4日間でした。それが幸いして目的としていた鳥たちをほぼ全て撮影することができました。冬の道東の定番種である流氷とオオワシ、オジロワシ、鶴居村のタンチョウ、出現状況が安定せずやや手強かったですがシマフクロウも撮影することができました。またこのツアーでは新たに人気の高いシマエナガの撮影、さらには漁船を使った落石クルーズも組み込み、コオリガモ、クロガモ、さらにはウミガラス、ケイマフリ、ウミバト、そして今回は海況が良かったことからエトロフウミスズメも撮影することができ幸運でした。フォトツアーは通常のツアーに比べて観察種は極めて少ないですが、撮影できる可能性の高い種に絞って巡るという点では全く違ったツアーであったと思います。今後もさらにツアーの細分化を進めて行こうと思います。今後もぜひご期待ください。この度はお疲れ様でした。
石田光史