【ツアー報告】渡良瀬遊水地と城沼・多々良沼 2016年12月22日
(写真:コチョウゲンボウ 撮影:宅間保隆様)
12月恒例となった群馬県内を巡る日帰りバスツアー。数ある日帰りバスツアーの中でも比較的観察種が多いため初心者の方にもお楽しみいただけます。メインとなる渡良瀬遊水地は猛禽類が数多く観察できることで知られていますが、周辺にある湖沼や畑地も良い探鳥地であることから、それらの探鳥地も巡れるようマイクロバス利用の16名様限定の少人数ツアーとしました。今回は事前の天気予報が芳しくなかったですが、結局雨に降られたのは夕方の1時間ほどだけで済みました。しかも渡良瀬遊水地とは思えないほどの完全無風の1日でした。
22日、早朝の東京駅前は意外にも青空が広がり雨の心配はなさそうでした。出発も予定通り08:00ちょうどで途中休憩を挟んでも2時間弱で最初の探鳥地に到着しました。到着後は観察機材の準備をしていただきましたが、駐車場内の柿の木にはムクドリの群れ、ヒヨドリ、スズメがやってきていました。準備を終えて歩き出そうとするとアオゲラの声がしたため探してみると2羽のアオゲラが幹を登りながら採食していました。湖畔まで来るとマガモ、ヒドリガモ、カルガモ、オオバンなどのほか、30羽ほどのカンムリカイツブリ、ミコアイサ、セグロカモメなどの姿がありました。場所を変えるとオオハクチョウ、コハクチョウが見られ、オナガガモを狙ってかオオタカの若鳥が飛び、木に止まるノスリの姿もありました。また周辺のアシ原では複数のオオジュリンが採食していたほか、ジョウビタキの姿もありました。次の探鳥地ではカモ類を探すつもりでいましたがバスを降りるとある鳥の声が聞えました。聞き間違いかと思いましたがどう聞いてもオジロビタキの声がします。これといった林もなくいそうな雰囲気はない場所でしたが探してみるとひょっこりとオジロビタキが姿を現し大変驚きました。観察していると尾羽を上げる独特の動作を繰り返して愛らしい姿を楽しませてくれました。やや時間が押してしまいましたが、ここではオカヨシガモ、ホシハジロ、コガモ、カワセミなども見られました。その後はいよいよ渡良瀬遊水地に向かうことにしましたが、途中にある畑地をぐるぐるとバスで走りながらミヤマガラスを探しました。今回はあっさりとミヤマガラスの群れを複数見つけることができ特徴的な頭のシルエットや嘴の色を見ることができましたが、コクマルガラスの姿は見られませんでした。またその途中では電柱に止まるチョウゲンボウ、そして電線に止まっているコチョウゲンボウの美しいオス個体を見る機会がありました。渡良瀬遊水地に到着後は一旦各自昼食とし、その後は1時間ほど歩いて探鳥しました。今年の冬を象徴するかのように芝生の上をツグミが歩きまわり、アキニレの木の下には落ちている種子を食べるシメの姿がありました。また今年の冬、あちらこちらで見られているアトリの群れがここでも登場してくれ、30羽ほどの群れが飛びかっていました。道端ではジョウビタキ、ベニマシコが見られ、湖面には種類こそ少なかったですが複数のカンムリカイツブリの姿がありました。その後は猛禽類の塒入り観察の予定ですが、少々時間があったためバスにて遊水地内を巡ってみました。遊水地内は不法投棄を防止する目的で各所に車幅制限ポールが立てられていますが、マイクロバスならばなんとか通過することができます。ただ、この日は無風だったことから猛禽類が飛翔する姿は見られず、わずかにノスリの姿を見るにとどまりました。そして16:00に合わせて塒に帰ってくる猛禽類を待つポイントに移動しました。この日は無風だったことからすでに4羽のチュウヒが塒近くの低木に止まっていました。この日は曇りで少々小雨が降っている状況だったので予想よりも暗くなるのが早かったですが、チュウヒは続々とやってきてゆらゆらと飛んだ後、アシ原内に消えていきました。天候が悪くなってしまいましたがなんとか渡良瀬を夕方まで楽しみツアーを締めくくりました。
今回はハイイロチュウヒ、コクマルガラスといった代表種やヨシガモ、トモエガモといった鮮やかなカモ類に出会うことができませんでしたが、オジロビタキとの意外な出会いがあり、コチョウゲンボウの美しいオス個体にも出会うことができ合計57種を観察することができました。この時期の渡良瀬遊水地としては驚くような無風の1日でした。みなさまこの度はお疲れ様でした。
石田光史