【ツアー報告】知床沖・根室沖クルーズと羅臼のシマフクロウ 2016年12月18日~20日
(写真:ウミバト 撮影:高木信様)
海鳥というやや厄介な分野の中でもウミスズメ類は特に奥が深く、一般的なバードウォッチングに比べて縁遠い感じがします。その理由は、概ね小型種が多いことから発見が困難であること、飛翔形で観察ができるミズナギドリ類とは違い、海上に浮いている状況で観察しなくてはならないため海況による影響が大きいことなどが原因と考えられます。ただ、これらのリスクがあっても見てみたいと思うのがバードウォッチャーというものです。今回はウミスズメ類が特に多く見られる知床沖と根室沖でクルーズを行い、観察が困難なウミスズメ類を間近に観察することを目指しました。まず何より海況が心配されましたが、出発前の天気予報では穏やかで暖かい3日間になるだろうとの予報でした。
18日、この日は羽田空港から中標津空港に移動した後、途中にある漁港で探鳥をしてから羅臼町でシマフクロウを観察する予定でした。ただ、ここ数日はシマフクロウの出現時間が早いとのことから、まずはこの日の宿に直行して観察機材の準備をし、すぐに羅臼町でシマフクロウ観察を開始しました。この時期の羅臼町は15:45に日没を迎えるため、このスケジュールでも到着時にはすっかり薄暗くなっていました。思いのほか寒さが厳しくない中でおおよそ16:15から観察を開始しましたが、この日はどうにも風が強くその強風は収まる気配はなく、時にはガラスがガタガタ揺れたり、積った雪を舞い上げるほどになり心配な状況が続きました。結局予定を2時間以上延長してその出現を待ちましたがシマフクロウは現れませんでした。
19日、昨夜の強風がどうなっているのか心配だったので、まだ薄暗いうちに起きて窓を開けてみましたが強風はすっかり収まり、空は次第に明るくなってきました。どうやら今日のクルーズには影響はなさそうです。この日は朝食後の08:00に出発して羅臼港に向かい08:30に出港しました。この時期の知床沖は観光船はすでに休業期間のためこのクルーズはプレミアムなクルーズなのです。出港後は漁港内にいるスズガモ、シノリガモ、ウミアイサなどを見ながら穏やかな海に出ました。今回の知床沖クルーズは一番の目的であったエトピリカに出会うことができず残念でしたが、ハシブトウミガラスとウミガラスは安定的に見られました。そして意外だったのがコウミスズメとエトロフウミスズメが多かったことです。特にエトロフウミスズメは小群で観察する機会が複数あり、間近に観察できた個体もいました。ほかのウミスズメ類に比べてずんぐりした体形で最大の特徴である冠羽も観察することができました。非常に警戒心が強い種なだけに間近に観察できたことは奇跡的なことでした。そして最後には冬には珍しくイシイルカが数頭現れてしばらくの間、船について独特の泳ぎを見せてくれました。11:15に下船後は一旦道の駅で時間をとり、その後は野付半島を経由して根室に向かう予定でしたが、直前に根室周辺でユキホオジロとハマヒバリが見られているとのことで根室に直行しました。到着後は木道に沿って進み、砂地でその姿を探そうとしていたところいきなり我々の頭上を30羽ほどのユキホオジロの群れが通過していきました。ただ、まずはハマヒバリをと探してみるとようやく砂地で地上採食する2羽のハマヒバリの姿がありました。2羽のうちの1羽はかなり黄色みの強い個体で美しく見えました。その後、一度見失ったハマヒバリを探しているとさきほど頭上を通過していったユキホオジロの群れがやってきて周囲を飛び回り、雪景色の中を飛翔する美しい姿を観察することができました。また駐車場まで戻る間にはオジロワシ、タンチョウ、ミユビシギ、海上にはクロガモ、オオハム、コオリガモなどが見られました。そして最後の最後で再び2羽のハマヒバリに出会うことができ、少しずつ距離を詰めて観察することができました。ただ、その後はもう一か所行きたいと考えていたため15:15に根室を出発しました。ただ、もうこの時間にはかなり薄暗くなっている上、ここから次のポイントまでは30分ほどかかるため道を急ぎました。到着した時は早くも薄暗くなりかかっていましたが、目的のチシマウガラスを探しました。すると幸運なことに目の前の岩の上にいるその姿を見つけることができ、暗くなるまで観察して終了しました。バスに乗って時計を見るとまだまだ16:10でしたが、周囲はもうほとんど真っ暗でした。ただし、いつもは強風で30分もいられない厳しい探鳥地であるにもかかわらず穏やかだったことは幸いでした。
20日も同じく薄暗いうちに起きて窓を開けましたが風もなく、この日のクルーズも問題ないと確信しました。06:30から朝食をとり07:30に出発。落石港に到着後はライフジャケットを装着するなどして準備をしました。とにかく穏やかな中をオジロワシが盛んに飛翔しているのが印象的でした。乗船後はまずは漁港内にいるコオリガモやシノリガモ、クロガモ、カモメなどを見ながら進み、いよいよ漁港から外洋へと出ていきました。この日はとにかく穏やかで外洋に出ても、どこにもつかまらないで立っていられるほどでした。このクルーズでは代表種のケイマフリが複数見られたほか、少ないながらもハシブトウミガラス、ウトウ、そして一番の目的だったウミバトはさまざまなタイプが観察できました。またモユルリ島付近ではクロガモ、コオリガモ、シノリガモがかなりの数観察でき、アカエリカイツブリ、ハジロカイツブリや愛嬌あるゴマフアザラシの姿もありました。そして最後は漁港内でビロードキンクロの姿も観察することができ、過去最高の快適クルーズを終えました。
ウミスズメ類観察に特化し、知床沖と根室沖でのWクルーズを中心とした恒例のツアー。過去、クルーズが欠航になってしまったこともありましたが、今回は両クルーズ共に快適に楽しむことができました。ウミスズメ類は小型種が多く警戒心も強いため、近い距離で観察するためにはなるべく小型船で観察することが重要ですから今回の両クルーズは非常に貴重であると改めて思いました。シマフクロウに出会えなかったことは残念でしたが、代わってユキホオジロ、ハマヒバリ、チシマウガラスに出会う幸運もありました。小型船乗船のためお疲れだったと思います。またぜひ季節を変えてお出かけください。この度はお疲れ様でした。
石田光史